NEST OF BLUESMANIA

ミュージシャンMACが書く音楽ブログ「NEST OF BLUESMANIA」です。

#88 フレッド・マクダウェル「All the Way from East St. Louis」

2009-08-23 06:54:53 | Weblog
#88 ミシシッピ・フレッド・マクダウェル「All the Way from East St. Louis」(Mississippi Fred McDowell/Rounder)

ミシシッピ・フレッド・マクダウェル、62年録音、71年リリースのアルバムより、彼のオリジナルを。

ミシシッピ・フレッド・マクダウェルは1904年テネシー州ロスヴィル生まれ。72年に同州メンフィスにて68才で亡くなっている。

この人もまた、遅咲きブルースマンの典型だ。長年農夫としての生活を続けたのち、アラン・ロマックスにより見出され、50代半ばにしてようやくレコーディングのチャンスを得て、亡くなるまで10年あまりメジャー・シーンにて活躍したという、文字通りの老春派ミュージシャン。

基本は生ギター、スライドによる単身の弾き語りで、バックがついてもせいぜい一人。ごくごくシンプルな編成なのだが、そこから生み出されるグルーヴが、ハンパなくすごい。

まずは一曲聴いていただきたい。この「All the Way from East St. Louis」、最初から最後まで、延々とワンコード、ワンリフ、ワングルーヴで展開されるのである。

この曲によらず、ストーンズによるカバーで一躍知られるようになった「You Gotta Move」にせよ、「Highway 61」にせよ、彼のレパートリーの大半はワンコード、あるいはそのバリエーションといえる。

このスタイルは戦前のブッカ・ホワイトあたりの、カントリ-・ブルースの流れを引き継いだものだが、こんなブルースマン、60年代にもまだ生息していたんだから、ブルースの奥は深いねぇ。

このスタイルをさらに継承し電気化をほどこして世に広めたのが、以前取り上げたことのあるR・L・バーンサイドやジュニア・キンブロウらの、ファット・ポッサム系アーティストということになる。いわばヒル・カントリーの教祖的存在なのである、マクダウェル翁は。

見た目はいかにも田舎のおじいさんなのだが、その音楽は強力無比きわまりない。

その特徴的な塩辛声と、パーカッシヴなギター・プレイは、まさにリスナーの聴覚を幻惑させてやまないマジックに満ちている。

音の魔術師=ミシシッピ・フレッド・マクダウェルの生み出す、蟲惑的なビートに酔い痴れてくれ。