NEST OF BLUESMANIA

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#193 ラリー・カールトン&松本孝弘「Room 335」

2011-11-20 10:54:42 | Weblog
#193 ラリー・カールトン&松本孝弘「Room 335」(Live 2010 Take Your Pick at Blue Note Tokyo/335)

2010年、ラリー・カールトン来日時に企画されたコラボレーション・ライブより。カールトンの作品。

このふたりについては説明不要だろう。日米のトップ・ギタリストの共演。なんとグラミー受賞のおまけまでついた話題のライブ盤である。

オリジナルは78年の「Larry Carlton(邦題・夜の彷徨)」収録。カールトンの名刺代わりともいえる代表曲だ。

61年生まれの松本は当時17才。憧れのギタリストのフレーズを日夜コピーして、プロを目指していた時代である。その曲の中には、この「Room 335」も含まれていたはずだ。

その後、プロデビューを果たし、国内でもっともCDを売るアーティストへと昇りつめた松本だったが、30年以上、雲の上の存在であり続けたギターの大先輩からの、いきなりの共演の指名である。天にも昇る思いだったに違いない。

瓢箪からコマ、みたいなこの顔合わせ企画は、予想以上に高い評価を得て、見事グラミーまで取ってしまった。

もちろん双方のファンからは、いろいろと否定的な意見もあった。ことにカールトン・サイドからは「格が違うだろ」的な意見。また松本サイドからは「ラリー・カールトン? 知らねえな、そんなヤツ」的な意見もあった。

もちろん、ふたりの音楽性がぴったり一致しているわけではないし、師弟関係ともいいがたい。でも、松本がカールトンを聴いて、ギターの腕前をブラッシュアップしてきた事実を否定できるものでもない。

若いリスナーには「ギターを弾く初老のオジさん」くらいの認識しかないだろうが、やっぱりカールトンは特別にスゴい人なのだよ。

ギタリストのみならず器楽プレイヤーには「テクニック」と「フィーリング」という二大要素が問われるものだが、このふたつをともに持ち合わせている人は、なかなかいない。が、カールトンはデビュー当初から、このふたつを見事に兼ね備えていた。まさに、ギタリスト中のギタリストだった。

これは筆者の私見だが、松本孝弘というギタリストは、B'Zでデビューする前、スタジオ・ミュージシャンだった若いころからテクニック的には申し分なかったが、フィーリングのほうはどうかというと、まだまだ発展途上かなぁと思っていた。

人のフレーズならどんなものでも吸収消化してしまう器用さはあったが、それは彼自身のオリジナリティがどこにあるかわからないという、器用貧乏さにもつながっていた。

そんな松本も、今年50才。押しも押されもしない重鎮的な存在だ。もう、器用さだけでなく彼自身のカラーを前面に押し出していかなきゃいけない年齢だと思う。そういう意味で、大先輩はいいチャンスを彼に与えてくれた。

昨年のコラボがきっかけとなって、ホームだけでなくアウェイな環境でも活動をひろげていってほしいもんだ。それに見合った音楽の才能が、松本にはあると思う。

ところできょうご覧いただく映像は、ブルーノート東京でのステージより。おなじみのテーマを合奏→カールトンのソロ→松本のソロが応酬という流れで、終始リラックスしたムードで進んでいく。

ふたりともスクウィーズ・スタイルを得意とするギタリスト、ということもあって、サウンド上の違和感はほとんどない。カールトン・ファンにも松本のプレイは楽しめただろうし、松本ファンにもカールトンの音は十分なじめたのではなかろうか。

意外な顔ぶれが共演することで、それぞれのファンにも、ふだん聴くものとは違ったジャンルの音楽への理解が生まれる。

少し世代は違うが、彼らのギター・ミュージックへの愛は共通のものだ。ぜひ、そのコンビネーション・プレイの妙を味わってみてほしい。

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