NEST OF BLUESMANIA

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#197 ココ・モントーヤ「Am I Losing You」

2011-12-25 11:46:54 | Weblog
#197 ココ・モントーヤ「Am I Losing You」(Gotta Mind to Travel/Blind Pig)

今年もあとわずか。おそらくこれが今年最後の更新になると思うが、クリスマス・デーに聴くのは、あえてブルース(笑)。

きょうの一曲は、アメリカの実力派シンガー/ギタリスト、ココ・モントーヤのデビュー・アルバムより。モントーヤの作品。

モントーヤは1951年、カリフォルニア州サンタモニカ生まれの、当年60才。

多くのブルース系アーティスト同様、一人のローカル・ミュージシャンに過ぎなかったモントーヤの運気が一気に上がったのは、彼のナイトクラブでの演奏を、たまたまアルバート・コリンズが聴いたことに始まる。コリンズに気に入られて彼のツアーバンドに加入。モントーヤはなんと当時、ギタリストではなくドラマーだったという。

バンドメンバーとしてのおつとめが終わった後もコリンズとの付き合いは続き、ギターの手ほどきも受けたというから、実にラッキー・ガイであるな。

80年代にはギタリストとして、地元のバンドで活動するようになる。そして彼にとって、人生二度目の幸運が舞い込む。

クラブで演奏していたところ、ジョン・メイオールが来店。憧れのアーティストへの敬意を捧げて「All Your Love」を演奏したところ、メイオールはこれをいたく気に入り、かつてクラプトン、グリーン、テイラーらを見染めたときのように、「おれのバンドに入らないか」との誘いをモントーヤにかけたのである。もちろん、そのバンド名はブルースブレイカーズ。

85年以来モントーヤはメイオールのもとにて活動、10年後に独立して、このファースト・ソロ・アルバムを世に出したのだ。時にモントーヤ、44才。

ホント、絵に描いたようなシンデレラ・ボーイなサクセス・ストーリーなのだが、それに十分値いするだけの実力が、歌と演奏から感じられる。本当に安定したボーカルとギターなのだ。

強烈な個性みたいなものはあまりないのだが、常に平均点以上を獲得できるスキルの持ち主。それがモントーヤ。

これはごく個人的な意見だが、英国でいえばゲイリー・ムーアに通じるところがあるように思う。世代もほぼ同じだし(ムーアがひとつ年下)、歌の雰囲気、ギターのスタイル、曲作りのセンスなど、同じような音楽を聴いてきただけに、出身国の違いはあっても、共通したものが感じられるのだ。

ふたりとも、ものすごく器用なだけに、自分ならではの独自なカラーがないという点も、似通っているような気がする。

きょうの一曲も、ムーアがお得意としているマイナー系R&B。芸風かぶりまくりではあるが、いいものはいい。

ワイルドだがコクのある歌声、王道な泣きのギター。新味はないけど、これがプロの仕事だと思う。

コリンズにメイオール。師匠に比べるとまだ全然知名度はないが、60代を迎え、これからがミュージシャンとしての正念場だろう。

ブルースをもちろん基本としているがそれにこだわり過ぎず、幅の広いスタイルでロックしている姿勢が彼には感じられる。ブルースマンという枠組みにおさまらない、スケールの大きな活躍を期待したい。

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