#238 レア・アース「Get Ready」(Get Ready/Motown)
白人ソウルバンド、レア・アース70年のヒット曲。スモーキー・ロビンスンの作品。
レア・アースはデトロイトで60年に結成された5人編成のバンド。当初はサンライナーズと名乗っており、68年にレア・アースに改名。69年にモータウンと契約、レコードデビューを果たす。
70年に同じレーベルの先輩格、テンプテーションズのカバーとして、「(I Know)I'm Losing You」そしてこの「Get Ready」の2曲を立て続けにシングルヒットさせ、注目を浴びるようになる。
モータウンと契約した白人バンドとしては、彼らより前にラスティックスというのがいたのだが、鳴かず飛ばずで終わったので、ほとんど知られていない。彼らが最初の成功ケースとなった。
既にこの手の白人バンドとしては、ダンヒル・レーベルのスリー・ドッグ・ナイトが華々しい成功を収めていたので、レア・アースはなにかにつけ彼らと比較されていたのを思い出す。
パッと聴いただけでは、とても白人とは思えない、パワフルな歌声とグルーヴあふれる演奏。公民権運動、あるいはオリンピックをはじめとするスポーツ界での活躍など、ブラック・パワーに押され気味だった当時のアメリカ白人層だったが、「白人だってソウルしたい」という願望を叶えてくれたということで、この二つのバンドの人気はうなぎ昇りとなったのである。
が、もちろん、黒人たちにとってはほとんど関心の対象とはならず、彼らのライブ映像を観ていただくとおわかりのように、観客すなわち支持層はもっぱら白人だった。
本家本元の黒人たちからすれば、「白人ソウルバンドは、しょせんオレたちの猿真似にすぎない」と思われていたんだろうなぁ。悲しい話だが、まあ、いたしかたないという気もする。
歌や演奏については、オリジナルと比べても遜色はないのが、いかんせん、見た目がイマイチだ。テンプスのあの垢抜けたパフォーマンスを観てから、都会出身なのにどこかもっさりした彼らを観ると「カッコいい!」とはいいがたい。
エディ・ケンドリックスの洗練されたファルセットに比べると、ドラマー兼ボーカルのピーター・リヴェラの歌声はちょいと暑苦しいしね。
ただ彼のリズム感については、さすがと言わせるものがある。ビートルズやストーンズを聴いてきてそれらが標準と思っていた当時の筆者の耳は、その抜けのよいドラミングに、ものすごく白人ばなれしたものを感じたのである。
いまならば、彼ぐらいの演奏はどうってことないと片付けられそうだが、当時の白人ドラマーとしては群を抜いていたのは間違いないだろう。
ただ、ルックス、パフォーマンス、作曲力など、演奏力以外の取り柄がなかったのが災いして、レア・アースはその後大きく人気が伸びることはなかった。日本での人気はないに等しかったしなぁ。
ということで、彼らのことを覚えているリスナーはいまではごく少数だと思うが、でもこうして動画サイトで約40年も昔のレアな映像が観られるってことは、少ないなりに熱心なファンがいるのだろう。
おそらく大半の皆さんにとっては、初めて聴く音だと思うが、きょうびのR&Bにはない、独特の熱いグルーヴがそこにはある。
レア・アースのうねるようなビート、一聴の価値ありです。
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