NEST OF BLUESMANIA

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#292 ジョン・スコフィールド&ドクター・ジョン「Please Send Me Someone To Love」

2013-11-03 09:13:02 | Weblog
#292 ジョン・スコフィールド&ドクター・ジョン「Please Send Me Someone To Love」(Live 3 ways(DVD)/Blue Note)

ジャズ&フュージョン・ギタリスト、ジョン・スコフィールドと、ピアニスト、ドクター・ジョン。90年5月ニューヨークでの共演ステージから。パーシー・メイフィールドの作品。

スコフィールドは51年、オハイオ州デイトン生まれ。バークリー音楽院を出て、プロのミュージシャンとなる。

ビリー・コブハム、ジョージ・デューク、パット・メセニー、ゲイリー・バートン、日野皓正・元彦兄弟、チャールズ・ミンガス、デイヴ・リーブマン、マイルス・デイヴィスなどのトップ・アーティストと共演、一方で自身のグループを率いて活動を行う。プロ歴既に39 年、いまや押しも押されもしない、ジャズ&フュージョン・ギターの大御所のひとりといっていいだろう。

独特のエフェクター音を効かせた、セミアコースティック・ギターでのハードなプレイは、多くのフォロワーを生み出してきた。貴方も、そのひとりかもしれない。

さてきょうの一曲は、バンド形式でなく、ピアノとのデュオ。おなじみ、ニューオーリンズの守護神的存在のピアニスト/シンガー、ドクター・ジョンとの共演である。

実はスコフィールドは、地方色豊かなN.O.サウンドとも、縁浅からぬ関係にある。

84年に移籍したレーベル、グラマヴィジョンでは従来のジャズ系とは異なったサウンドも自由に取り入れ、そこでの最終作「Flat Out」では、N.O.のドラマー、ジョニー・ヴィダコヴィチと共演、ミーターズの「Cissy Strut」などを演奏している。その後、2009年にはN.O.でアルバム「Piety Street」をジョン・クリアリー、ジョージ・ポーター・ジュニア、ジョン・ブッテらと共にレコーディング、ゴスペル色の強いサウンドを披露している。

近年のスコフィールドには、単に受け身で聴くだけでなく、グルーヴがあって踊れる音楽を創り出そうとする姿勢が、強く感じられるのだ。

そういう風に見ていくと、この一曲も非常に興味深い。

もともとこの「Please Send Me Someone To Love」は、黒人シンガー/ソングライター、パーシー・メイフィールドが、50年にスペシャルティからリリースし、大ヒットさせたナンバー。 R&Bチャートで1位を獲得しただけでなく(27週チャートイン)、総合でも26位にまで昇りつめたという、堂々たるヒット曲なのである。

メイフィールドについては本HPでも、以前フレディ・キングやベター・デイズを「一日一枚」で取り上げたときに軽くふれたという記憶があるが、なかなかいい曲を書くライターである。特にこの「Please Send Me Someone To Love」のようなブルース・バラードを書かせると、天下一品の出来映えだと思う。

歌詞内容について簡略に述べておくと、「天よ、願い過ぎでないとすれば、どうかわたしにも愛する人を与えておくれ」という神への祈りなのだ。ある意味、ゴスペルだよね。

作者メイフィールド以外では、フレディ・キング、ポール・バターフィールド率いるベター・デイズ(ボーカルはジェフ・マルダー)のカバー・バージョンが、筆者の印象に強く残っている。また、永井ホトケさんも彼らの影響を受けて、日頃愛唱している。

今回、スコフィールドとドクターは、歌わずにインストのみでこの曲をプレイしているのだが、シンプルながら非常に密度の濃い内容で、聴く者を唸らせてくれる。

いわゆるジャズ的なフレーズはほとんど使わず、オリジナルのブルージィなメロディを尊重したスタイルで直球一本勝負!なスコフィールド。ふだんの彼の演奏スタイルからは、かなり離れている。が、これもまた沢山ある、彼の引き出しのひとつなのだ。

フレディ・キングが、ジェフ・マルダーが高らかに声を上げて歌ったように、スコフィールドは愛器を駆使して、まさに「歌いあげている」。これだけ、人間の歌声(ボーカル)に肉迫した表現は、なかなかないというぐらい、いい味を出している。

その後を受けて、ソロを弾くドクター・ジョン。こちらも特にけれんはないが、その淡々としたプレイを聴けば、せつなく、しみじみとした思いにひたることは間違いない。

職人のような二人の、原曲へのリスペクトにあふれた演奏を聴いたら、もう一度、メイフィールドの渋みのある歌声を聴きたくなってしまった。

かのレイ・チャールズも大のひいきで、「旅立てジャック」などの提供曲を好んで歌っていたソングライター、パーシー・メイフィールド。その最高傑作は、60年以上の歳月などものともせず、今も輝いているのである。

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