NEST OF BLUESMANIA

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音盤日誌「一日一枚」#76 憂歌団「ベスト・オブ・憂歌団ライブ」(フォーライフ 28K-116)

2022-01-29 05:37:00 | Weblog

2001年12月2日(日)



憂歌団「ベスト・オブ・憂歌団ライブ」(フォーライフ 28K-116)

1.渚のボード・ウォーク

2.All Of Me

3.Midnight Drinker

4.嘘は罪

5.ザ・エン歌

6.ドロボー

7.パチンコ組曲

8.Stealin'

9.シカゴ・バウンド

憂歌団、86年5月24日、新宿シアターアプルにてのライヴ。

「ベスト・オブ」と銘打たれただけあって、彼らのいくつかあるライヴ・レコーディングの中でも出色の出来ばえである。

「赤い灯、青い灯、道頓堀の、川面に映る恋の灯よ…」

今は亡き作家、景山民夫さんの名調子のMCとともに、憂歌団登場。

まずは、ストーンズのカバーでも知られるドリフターズ64年の大ヒット、(1)でスタート。アーサー・レズニックとケニー・ヤングの作品。

おなじみのアコギ・サウンドにのった木村秀勝(現・充揮)のしゃがれ声は、なんとも艶っぽい。

続いて、ジャズ・スタンダード中のスタンダード、(2)へ。シーモア・サイモンズ、ジェラルド・マークスの作品。

堤夏の訳詩も、実にせつないムードをかもし出していて、ナイス。

女心を歌わせれば「天才的」ともいえる木村の歌唱が、これまた光っている。

さて、憂歌団のステージの一番の特徴といえば、演奏する側も観客の側も、一杯ひっかけてリラックス・モードに入っているということ。

いささかウルサイ声援もあるものの、実にいい雰囲気が漂っている。

インナー・スリーヴの写真で見るに、憂歌団のメンバーは、ウィスキーの水割りをプラコップに二杯、足元に置いて、一曲終わるごとに少しずつひっかけて行く。

当然、ステージが進むにつれて、気分がどんどんハイになっていくという寸法だ。

そんな酒好きな彼らをそのまま歌にしたようなナンバーが、お次の(3)だ。沖てる夫の詞、内田勘太郎の曲。

こういう曲では、ほんと、客席も盛り上がる。手拍子、足ぶみ、なんでもあり。

あげく、「1万リッターのゲ●を吐け」の歌詞である。ちと汚ないが、これには観客も狂喜乱舞(笑)。

さて、口直しなのか、またしっとり系のスタンダード、(4)。ビリー・メイヒュー作。

ジャズ・ヴォーカリストでこの曲を歌ったことのない人は、いないという位の、超有名曲。

またまた木村は、女性になりきった、やるせない歌唱。これにオブリを付け、ソロを奏でる内田のギターといったら、もう絶品。

この人のアコギは、なんでこんなにも美しい音色を紡ぎ出せるのだろう!

A面(アナログで聴いておるのだよ)のラストは、木村のオリジナル、(5)。

大阪出身の彼らしい、文字通りド演歌なナンバーなのだが、これがまたいい。

とにかく、彼のような天才の歌を聴くと、歌とは心ぢゃ!と痛感しますね。

テクや声量、それも重要ではあるが、すべてではない。最終的にはいかに歌の中に心を込められるか、これだと思いますです。

B面のトップは、木村作のノヴェルティ・ソング、(6)。ちょっと放送は出来そうにない、ヤバイ系の歌詞。

でも、彼らが歌うとサイコーにユーモラスで、楽しい。客席も大歓喜。

さらに追いうちをかけるのが、同じく木村作の(7)。

これがもう、抱腹絶倒の出来。ぜひ、聴いてみて欲しい。

おなじみの「パチンコ、パチンコ!」の連呼をしていたかと思うと、突然、曲調は一変、マイナーに。

なにが始まるかと思いきや、「けさ来た、新聞に、近頃は、パチンコが出ない~」と来たもんだ。

そう、井上陽水の「傘がない」のロコツな引用だ。

それを歌っているうちに、いつのまにかGFRの「ハートブレイカー」に変わっていたなんてご愛嬌も。

またまた、ロックン・ロール調へ一変。チャック・ベリーの「ジョニー・B・グッド」だ。

大盛り上がりの中、ワメきまくる木村。

それでもまだ終わらず、マイナー・ブルース調「パチンコ」へ。

勘太郎のギターからは、「エリーゼのために」やら「天国への階段」やらのフレーズも飛び出したりして、大ウケ。

最後は正調「パチンコ」に戻って、大団円。いやー、ほんまに笑わせてもらいました。

「それでは皆さん、コーラスの時間です」と、木村が観客をリードして、(8)へなだれ込む。

ガス・キャノン作、内田と有山淳司が日本詞をつけた名曲だ。

場内の大合唱で、ステージはクライマックスへ。

ラストは、名古屋のブルース・バンド「尾関ブラザーズ」がオリジナル、憂歌団のデビュー・アルバムにも収録されていた、尾関真作のスロー・ブルース・ナンバー、(9)。

一音一音に魂を込めるかのような、内田のスライド・プレイが最高にカッコよい。

そして、もちろん、その心をすべてしぼり出すかのような、木村のダミ声も…。

静と動、陰と陽、躁と鬱。あらゆる憂歌団の魅力がつまった、最高の出来。

日本のバンドだってこれだけスゴいことが出来るんだって、マジで感動した一枚。ほんまもんの名盤です!



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