2012年1月14日(土)
#199 アール・フッカー「The Foxtrot」(Smooth Slidin'/CLP)
#199 アール・フッカー「The Foxtrot」(Smooth Slidin'/CLP)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0f/95/51d5ed07fb06a5b68f8e040307f819d7.jpg?1696879315)
ブルース・ギタリスト、アール・フッカーによるインスト・ナンバー。フッカー自身の作品。
アール・フッカーは29年、ミシシッピ州クラークスデール生まれ。デルタ・ブルースの故郷の地から、家族と共にシカゴに移住したのが、10代はじめの41年。以降、デルタ・ブルースとシカゴ・ブルースの両方を聴いて育ち、特にスライド・ギターの名手、ロバート・ナイトホークに強い影響を受ける。
自らもスライド・ギターを弾くようになり、50年代後半からプロとしての活動を開始。おもに他のアーティスト、たとえばジュニア・ウェルズ、マディ・ウォーターズといったブルースマンのバッキングで名を上げ、自らのリーダー・アルバムもリリースするようになる。
きょう聴いていただく「The Foxtrot」は、その題名通り、ダンススタイルの一種、フォックストロットをモチーフにした軽快なシャッフル・ナンバー。初出は彼の67年のデビュー・アルバム、「The Genius Of Earl Hooker」。
ここでフッカーは、いつものスライドではなく、指弾きによるスピーディな演奏を聴かせてくれる。リズム感といい、アタックといい、スライド・プレイにまさるとも劣らぬ見事な出来映えだ。
指弾きよし、スライドよし、さらにはダブル・ネック・ギターを弾きこなしたパイオニアでもあり、とにかく彼に死角、弱点はなかったといえよう。
テクニックとフィーリング、その両方を兼ね備えた最上級の奏者のことをヴァーチュオーゾと人は呼ぶが、アール・フッカーこそはまさにその呼称にふさわしいプレイヤーだった。B・B・キングでさえ、フッカーのスライド・プレイには憧れたという。
70年に41才の若さで亡くなってしまったのが、本当に惜しまれる。彼ならば、生きていればさらにスゴい演奏を残してくれたはずだ。
ほんの2分たらずのナンバーに込められた、並々ならぬ気迫を、とくと聴いとくれ。