NEST OF BLUESMANIA

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音盤日誌「一日一枚」#121 マディ・ウォーターズ「HARD AGAIN」(BLUE SKY ZK 34449)

2022-03-15 05:01:00 | Weblog

2002年10月6日(日)



マディ・ウォーターズ「HARD AGAIN」(BLUE SKY ZK 34449)

(1)MANNISH BOY (2)BUS DRIVER (3)I WANT TO BE LOVED (4)JEALOUS HEARTED MAN (5)I CAN'T BE SATISFIED (6)THE BLUES HAD A BABY AND THEY NAMED IT ROCK AND ROLL(#2) (7)DEEP DOWN IN FLORIDA (8)CROSSEYED CAT (9)LITTLE GIRL

マディ・ウォーターズ、77年の作品。ブルースカイ・レーベル移籍後、初めてのアルバムだ。

以前取り上げたことのあるアルバム「アイム・レディ」同様、マディを師と慕うジョニー・ウィンターの全面バックアップにより制作されている。

そのタイトルの由来については、過去に何人ものひとがコメントしているので、繰り返す野暮は避けることにするが、とにかく老いてなお「お盛ん」なマディ(当時62才で40才近く年下の女性と結婚していた)ならではのタイトルだと思う。

まずは(1)。マディ・ファンなら先刻ご承知だろうが、チェス在籍時の68年に発表された怪作(?)「ELECTRIC MUD」に収められていたナンバーの再演。マディ自身の作品。

当時流行のサイケデリック・ロック・サウンドを大胆に取り入れたことで、従来からのブルース・ファン連中には賛否両論の評価だったアルバムだ。その中でもこの「マニッシュ・ボーイ」は代表的な曲といえる。

「フーチー・クーチー・マン」のヴァリエーションともいうべき、このナンバー、再録でも前回同様、バンドのメンバーのかけ声、歓声を入れたりして、スタジオライヴ風の臨場感あふれる録音になっている。

ジョニー・ウィンターと同じく、マディに大きく影響を受けたローリング・ストーンズも、「LOVE YOU LIVE」でカヴァーしているので、興味のある方は再度聴いてみては。

続く(2)も、マディのオリジナル。ウィンターのギターをフィーチャーした、ミディアム・テンポのブルース・ナンバー。

マディ自身の(ワンパタ)スライドも途中で登場、これもなかなか味わいがあるが、ウィンターも変にテクに走らず、目立ち過ぎず、マディの歌を最大限生かすような、オツなスライド、そして指弾きプレイを聴かせてくれる。

8分近くの長尺のセッション、後半ではマディの旧友、ジェイムズ・コットンのハープ、同じくパイントップ・パーキンスのピアノ・ソロも少し聴かれて、いずれもさりげない「名人芸」を感じさせてくれる。

バックを支える、チャールズ・キャルミーズのベース、ウィリー・ビッグアイ・スミスのドラムスが弾き出す、ドシドシ、ドカドカといったふうの、重く粘っこいビートも○。

あくまでも泥臭く、いなたく、でもブルースのもっともコアな魅力を伝えるリズム隊だ。

コットンのハープ・ソロから始まる(3)は、ウィリー・ディクスンの作品。チェス時代に録音したが、アルバム未収録で、94年リリースの「ONE MORE MILE」で初めて収録されたというナンバーの再録。

歯切れのいいミディアム・ファスト・テンポで、「I JUST WANT TO MAKE LOVE TO YOU」にも通ずるところのある、威勢のいいナンバー。

これまたストーンズがシングル盤でカヴァーしている。アルバムでは「SINGLE COLLECTION : THE LONDON YEARS」に収められているので、お持ちのかたはチェックをどうぞ。

(4)は、このアルバムで初披露のオリジナル。コットンの激しいブロウを前面に押し出したブルース。

ミディアム・テンポで力強いビートをきざむリズム・セクションもまたカッコいい。

(5)はもちろん、チェスでの初アルバム「ザ・ベスト・オブ・マディ・ウォーターズ」にも入っていることで、知らぬ者はないマディの十八番。

ここでは意表をついて、ダウンホームなアレンジで再録。ウィンターがスライドでリゾネイターを弾き、バックのボブ・マーゴリンもまたアコギを弾く、実にいなたい仕上がり。筆者的にはけっこう「好み」だ。

(6)はマディとブラウニー・マギーとの共作とクレジットされている作品。

内容は、「ロックンロールの生みの親はブルース(つまりこのワシ)じゃい!」と高らかに宣言するもの。「アイム・レディ」ふうの曲調で、なかなか勇ましい。

カヴァーとしては、ドクター・フィールグッドが同じく77年のアルバム「BE SEEING YOU」にてやっている。

再び自身のオリジナル、(7)は、粘っこいスロー・ビートで迫るナンバー。今回が初収録。

コットンのオーヴァードライヴのかかったパッショネイトなプレイは、こういう曲ではまさに本領を発揮する。

(8)も、初披露のオリジナル。ひたすらパワフル、ともすればうるさいくらいのミディアム・テンポのリズムに乗せて繰り広げられる、ホットなセッション光景をそのまま収録した、そんな感じだ。

ここで一番がんばっているのは、前曲同様、コットンのハープ。マディのくどいまでの精力的なヴォーカルに、しっかりと張り合っている。

その息遣いまで伝わってきそうな熱いブロウには、圧倒されそう。負けじと、パイントップら他のミュージシャンもプレイに熱が入る。

ラストの(9)は、ボ・ディドリーのそれとは同名異曲の、マディ自身のオリジナル。

ミディアム・テンポのブルース。初収録のようだ。

ここではコットンのハープに加えて、ウィンターもなかなかソリッドでイカしたギター・ソロを聴かせてくれる。

以上、全部を通して聴くと、いささか「一本調子」の印象はいなめないものの、バンドが一体となってひとつのサウンドを目指しているという鮮明なイメージがそこにはある。

泥臭くも熱い、まさに「ブルース」そのもののサウンド。

洗練とはおよそ無縁の世界だが、心をたかぶらせる何かを感じ取れる一枚。

この道一筋、四十年。オヤジどものブルース魂に触れてみてくれ!

<独断評価>★★★



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