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音盤日誌「一日一枚」#407 THE BAND「THE BAND」(東芝EMI/Capitol CP21-6026)

2022-12-26 05:20:00 | Weblog
2022年12月26日(月)



#407 THE BAND「THE BAND」(東芝EMI/Capitol CP21-6026)

カナダ、米国出身のロック・バンド、ザ・バンドのセカンド・アルバム。69年リリース。ジョン・サイモンによるプロデュース。

ジャケットの色から「ザ・ブラウン・アルバム」とも呼ばれる本盤は、デビュー作以上の成功(全米9位)をおさめ、ザ・バンドを一躍メジャー・バンドに押し上げている。

ザ・バンドの歴史について簡単にまとめると、もともとは米国からカナダに移住したロックンローラー、ロニー・ホーキンスのバック・バンド、ザ・ホークスとして始まり、ホーキンスの元を離れたのちはボブ・ディランのバック・バンドとなり、ディランのエレクトリック・サウンドの導入に一役かうことになる。

NY郊外のウッドストックにディランと共に移り住み、そこで日夜セッションを重ねてサウンドを磨き、68年にバンド名をザ・バンドと変えてレコードデビューしたのである。

いわば、10年近くのキャリアを持つ、叩き上げのバンド。無名でも、実力は十二分にあった。

彼らの持っている引き出しの多さは、ハンパない。ロックンロール、フォーク、カントリー、ブルース、ジャズ、R&Bなど、オール・アメリカン・ミュージックをカバーしていた。

そして演奏能力のみならず、作曲・アレンジ能力も非常に高かった。日本のバンドなどでは、絶対に真似の無理な曲を自在に生み出せるバンドだった。

それは、このアルバムの曲をひとつずつ聴き込んでいけば、よく分かるだろう。

【個人的オススメ曲・その一】

「クリプル・クリーク」

5枚目のシングルとなり、カナダでは10位、全米でも25位と、クリーン・ヒットになったナンバー。ロビー・ロバートスンの作品。

軽快なセカンド・ラインが印象的なナンバー。まだ、ニューオリンズのサウンドがさほど知られていなかった当時の日本では、とても新鮮に聴こえた(はず)。

筆者的にはこのアルバムでというより、「ラスト・ワルツ」でのライブ・パフォーマンスで一番耳に残った曲として記憶されている。

【個人的オススメ曲・そのニ】

「ラグ・ママ・ラグ」

70年に「クリプル・クリーク」に続きシングル・カットされた曲。ロバートスンの作品。

全英16位、全米で57位と、なぜか英国でヒットしている。 

ホーンを取り入れた、厚みのあるサウンド。シンプルなフレーズの繰り返しが、妙に耳に心地いい。

【個人的オススメ曲・その三】

「オールド・ディキシー・ダウン」

「クリプル・クリーク」のB面曲。ゆったりとしたバラード。これもロバートスンの作品。

ジョーン・バエズ、ジョニー・キャッシュ、ジョン・デンバー、オールマンズ、ブラック・クロウズ等々、カバーも非常に多い名曲。

郷愁感あふれるメロディとサウンド。ザ・バンドを象徴するナンバーと言えそうだ。

【個人的オススメ曲・その四】

「ジェミマ・サレンダー」

リヴォン・ヘルム、ロバートスンの共作。リード・ボーカルはヘルム。

ザ・バンド流ロックンロールと言える一曲。ツボを押さえたリチャード・マニュエルのピアノがイカしている。

【個人的オススメ曲・その五】

「ルック・アウト・クリーヴランド」

ロバートスンの作品。リード・ボーカルはリック・ダンコ。

軽快なカントリー・ロック。ロバートスンのギターが冴えわたる一曲。

最後にふれておきたいのは、アルバム・ジャケットの写真。

全員、濃いヒゲをはやしているが、どうなんだろ、この女性ウケとかまったく考えていないルックス(笑)。

もちろん、当時はビートルズをはじめとして、ロック・バンドのヒゲ率は非常に高かった。

ハンブル・パイとかレッド・ツェッペリンみたいなルックスがウリのバンドさえ、全員ヒゲ面なんて時期があったけどね。

それにしても、ジジむさすぎない?

メンバーの年齢を調べてみると、ロバートスン26歳、ダンコ26歳、マニュエル26歳、ハドスン32歳、ヘルム29歳であった。

ハドスン以外、みんな20代やん!

ザ・バンドは、なんとも「老人ぶりっ子」な青年たちであった。

まあ、彼らがやっている、ルーツミュージック的なサウンド自体、ジジイ趣味っぽいんだけどね(もちろん、いい意味で)。

「ガキには分からない、ホンモノの音楽を聴かせてやるぜ」という意気込みが伝わってきそうな、笑わない青年たちのポートレート。それがこのアルバム。

ザ・バンドの凄さを、とことん味わえる一枚だ。

<独断評価>★★★★

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