#278 ランディ・クロフォード「Cajun Moon」(Naked And True/Bluemoon)
黒人女性シンガー、ランディ・クロフォード、95年のアルバムより。J・J・ケイルの作品。
この7月26日、J・J・ケイルが亡くなってしまった。享年74。
J・J・ケイルといえば、エリック・クラプトンの大ヒット「Cocaine」の作曲者として注目されたのが、77年。彼が39才になる年のことだった。
タルサで地道に音楽活動を続けてはいたが、ヒットらしいヒットを出せずにいたケイルが、クラプトンによるカバーというかたちとはいえ、初めて日の目を見たのである。
筆者もその時に初めて彼の名を知り、タルサ・サウンドの存在も知った。
だが、考えてみれば、70年のEC初のソロアルバムに収録され、シングルとしても全米18位にまでヒットした「After Midnight」もまた、ケイルの作品であった。実は相当前からケイルの曲を聴いていたことになる。
その時点からケイルの存在が注目されていれば、彼の音楽人生もより華々しいものになったのだろうが、当時はヒット曲の作曲者にスポットライトがすぐに当たるようなこともなかった。情報化時代以前は、そういった情報の流通も、至ってのんびりしていたのである。
その後スターシンガーとなったECの強力なバックアップを得て、ケイルはさまざまなアーティストの曲作りを手がけるようになる。たとえばウェイロン・ジェニングスの「Clyde」「Louisiana Women」、カンサスの「Bringing It Back」、レイナード・スキナードの「Call Me The Breeze」「I Got The Same Old Blues」、トム・ペティ&ハートブレイカーズの「I'd Like To Love You, Baby」、カルロス・サンタナの「Sensitive Kind」などなど。
ケイルの生み出す曲は、彼が影響を受けてきたすべての音楽、ブルース、ロカビリー、ジャズ、カントリーなどが溶け込んだ、極めて土臭い味わいのもので、派手さには欠けるものの、プロのミュージシャンたちの絶大な支持を得たのである。
シンガーとしてのケイルは、72年に出した「Crazy Mama」で全米22位のスマッシュヒットを出したことがあるものの、おおむねヒットとは無縁で、おもにアルバムで勝負するタイプであった。呟くような渋めのボーカル・スタイルゆえ、ポピュラリティを得るのは難しかったのだろう。
さて、きょうの一曲「Cajun Moon」も、ケイルが他のアーティストに提供した楽曲のひとつ。もともとは、フルーティスト、ハービー・マンと黒人女性シンガー、シシー・ヒューストン(ホイットニーの母君ね)が76年に共演したアルバム「Surprises」に収録されており、ランディはこれをさらにカバーしたと思われる。
ランディ・クロフォードはご存知のように、クルセイダーズとの共演アルバム「Street Life」で一躍メジャーシンガーとなったひと。ジャズ系の曲、R&Bっぽい曲、あるいはポップな曲も難なくこなす、超実力派だ。
この95年のアルバム「Naked And True」でもプリンスの「Purple Rain」、アレサ・フランクリンの「All The Kings Horses」など、さまざまなジャンルのカバーを試みているが、なかでもこの「Cajun Moon」は一聴に値いするだろう。
ベースにかのファンク魔人ブーツィ・コリンズが入っているのが「おっ!」という感じだが、バックサウンドはどちらかといえばジャズ寄り。フェンダー・ローズとビブラフォン、そしてストリングスの響きが、オトナのフュージョンを演出している。
クロフォードの粘っこい声質が、この曲のもつアーシーな雰囲気にぴったりハマり、メロディの単純な繰り返しでさえ心地よく感じられる。
ケイルの遺したさまざまな曲は、こうやって優れた歌い手を触発し、今後も歌い継がれていくに違いない。
偉大なる、遅咲きの才能に敬意を表して、ここに彼の名曲を遺しておこう。
黒人女性シンガー、ランディ・クロフォード、95年のアルバムより。J・J・ケイルの作品。
この7月26日、J・J・ケイルが亡くなってしまった。享年74。
J・J・ケイルといえば、エリック・クラプトンの大ヒット「Cocaine」の作曲者として注目されたのが、77年。彼が39才になる年のことだった。
タルサで地道に音楽活動を続けてはいたが、ヒットらしいヒットを出せずにいたケイルが、クラプトンによるカバーというかたちとはいえ、初めて日の目を見たのである。
筆者もその時に初めて彼の名を知り、タルサ・サウンドの存在も知った。
だが、考えてみれば、70年のEC初のソロアルバムに収録され、シングルとしても全米18位にまでヒットした「After Midnight」もまた、ケイルの作品であった。実は相当前からケイルの曲を聴いていたことになる。
その時点からケイルの存在が注目されていれば、彼の音楽人生もより華々しいものになったのだろうが、当時はヒット曲の作曲者にスポットライトがすぐに当たるようなこともなかった。情報化時代以前は、そういった情報の流通も、至ってのんびりしていたのである。
その後スターシンガーとなったECの強力なバックアップを得て、ケイルはさまざまなアーティストの曲作りを手がけるようになる。たとえばウェイロン・ジェニングスの「Clyde」「Louisiana Women」、カンサスの「Bringing It Back」、レイナード・スキナードの「Call Me The Breeze」「I Got The Same Old Blues」、トム・ペティ&ハートブレイカーズの「I'd Like To Love You, Baby」、カルロス・サンタナの「Sensitive Kind」などなど。
ケイルの生み出す曲は、彼が影響を受けてきたすべての音楽、ブルース、ロカビリー、ジャズ、カントリーなどが溶け込んだ、極めて土臭い味わいのもので、派手さには欠けるものの、プロのミュージシャンたちの絶大な支持を得たのである。
シンガーとしてのケイルは、72年に出した「Crazy Mama」で全米22位のスマッシュヒットを出したことがあるものの、おおむねヒットとは無縁で、おもにアルバムで勝負するタイプであった。呟くような渋めのボーカル・スタイルゆえ、ポピュラリティを得るのは難しかったのだろう。
さて、きょうの一曲「Cajun Moon」も、ケイルが他のアーティストに提供した楽曲のひとつ。もともとは、フルーティスト、ハービー・マンと黒人女性シンガー、シシー・ヒューストン(ホイットニーの母君ね)が76年に共演したアルバム「Surprises」に収録されており、ランディはこれをさらにカバーしたと思われる。
ランディ・クロフォードはご存知のように、クルセイダーズとの共演アルバム「Street Life」で一躍メジャーシンガーとなったひと。ジャズ系の曲、R&Bっぽい曲、あるいはポップな曲も難なくこなす、超実力派だ。
この95年のアルバム「Naked And True」でもプリンスの「Purple Rain」、アレサ・フランクリンの「All The Kings Horses」など、さまざまなジャンルのカバーを試みているが、なかでもこの「Cajun Moon」は一聴に値いするだろう。
ベースにかのファンク魔人ブーツィ・コリンズが入っているのが「おっ!」という感じだが、バックサウンドはどちらかといえばジャズ寄り。フェンダー・ローズとビブラフォン、そしてストリングスの響きが、オトナのフュージョンを演出している。
クロフォードの粘っこい声質が、この曲のもつアーシーな雰囲気にぴったりハマり、メロディの単純な繰り返しでさえ心地よく感じられる。
ケイルの遺したさまざまな曲は、こうやって優れた歌い手を触発し、今後も歌い継がれていくに違いない。
偉大なる、遅咲きの才能に敬意を表して、ここに彼の名曲を遺しておこう。
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