2023年1月17日(火)
#426 DAVID BOWIE「PINUPS」(RCA PD84653)
英国のロッカー、デヴィッド・ボウイの7枚目のアルバム。73年リリース。ケン・スコットとボウイ自身によるプロデュース。
ボウイは72年のアルバム「ジギー・スターダスト」、シングル「スターマン」で世界的に大ブレイクしたが、その勢いで73年に2枚ものアルバムをリリースしている。それが「アラジン・セイン」と、この「ピンナップス」だ。
前者は「ジギー〜」のロール・プレイング路線のままで作られていたが、後者は一転して、全曲カバーというユニークな作りになっている。
ボウイと共にジャケット写真にうつっている女性は、モデルのツィッギー。
そう、60年代、超ミニのスカートで社会現象まで巻き起こした、あのおかただ。
彼女が最も活躍していた頃の、英国のビート・グループが本盤には勢揃いする。いずれも、ボウイが愛聴して、強く影響を受けていたバンドばかりだ。
日本人にも馴染みが深い60年代の英国バンドといえば、ザ・ヤードバーズだろう。「I Wish You Would」と「Shapes Of Things」の2曲がそれ。もっとも前者はオリジナルが米国のブルースマン、ビリー・ボーイ・アーノルドだが、ボウイはヤードバーズ経由でこの曲を知ったのだ。
特に後者のアレンジがカッコいい。ヤードバーズをさらにハードに、シャープに、パワーアップしたサウンドに仕上がっている。
ヤードバーズと並んでメジャー級なのは、ザ・キンクスとザ・フーだろう。
フーは2曲。「I Can’t Explain」と「Anyway,Anyhow,Anywhere」である。フーのファーストならびにセカンド・シングルであり、ボウイがいかに彼らに心酔していたかが、手に取るように分かる。ダルトリーばりのシャウトは、ボウイの新たな魅力だな。
キンクスは「Where Have All the Good Times Gone」の1曲。日本では特にヒットしていないマイナーな曲の、しかもB面だが、「You Really Got Me」や「All Day And All Of The Night」にも引けを取らない、イカした曲なのです。必聴。
そして、のちにそれらと同じくらいメジャーになったのがシド・バレット時代のピンク・フロイドだ。
曲は「She Emily Play」。Playをプライと発音する、コックニー訛り丸出しなところまで、しっかりカバーしていてクスリとしてしまう。最後のストリングスに至るまで、アレンジも凝っている。
これら4バンドよりだいぶんマイナーだが、ヴァン・モリスンを輩出したゼムも、ボウイのオキニだ。曲は「Here Comes The Night」。モリスンの白人らしからぬソウルフルな歌には、ボウイもかなり触発されたみたいだ。
日本ではほとんど話題にならないものの、本国では結構人気があり、ヒット曲も多いのがザ・プリティ・シングスだ。
オープニングの「Rosalyn」と「Don’t Bring Me Down」の2曲がそれ。単純なリフだが強力なビートに、若き日のデヴィッド・ジョーンズ少年はノック・アウトされたのだ。
それ以外は、いわゆるB級バンドのくくりになるかな。モージョズ、マージーズなんて、筆者もまるで知りませんでした。
でも、曲を聴くと、どこかで聴いたような感覚もある。「Everything’s Alright」、「Sorrow」がそれぞれのカバー曲だ。70年代のリ・アレンジにより、オリジナル以上にヒップな音になっている。
さらにはオーストラリアのバンド、イージービーツの「Friday On My Mind」なんてのもある。ビージーズがオーストラリアから出て来たことを考えると、米国よりむしろ豪州の方が共通の文化圏といえるのかも知れない。
全曲でバックを務めるのは、「ジギー〜」以来のレギュラー・バンド、スパイダーズ・フロム・マース。そのメインスター、金髪ギタリストのミック・ロンソンはアルバムの完成後脱退してしまい、しばらくボウイとは疎遠になる。
ロンソンのファンにとっても、そのサイケデリックなプレイを堪能できる一枚として、必聴盤といえるだろう。
ボウイのグラム・ロック・サウンドも、一朝一夕にして出来たものではない。これら60年代後半からの、膨大なポップ・ソングの蓄積の上に咲いた華なのである。
これを聴いてさらにオリジナルに遡ることで、70年代のロックをより深く理解出来るようになるはずだ。
企画ものとはいえ、知的刺激に満ちた一枚。一度だけで聴き捨てなんて、もったいないぜ。
<独断評価>★★★☆
英国のロッカー、デヴィッド・ボウイの7枚目のアルバム。73年リリース。ケン・スコットとボウイ自身によるプロデュース。
ボウイは72年のアルバム「ジギー・スターダスト」、シングル「スターマン」で世界的に大ブレイクしたが、その勢いで73年に2枚ものアルバムをリリースしている。それが「アラジン・セイン」と、この「ピンナップス」だ。
前者は「ジギー〜」のロール・プレイング路線のままで作られていたが、後者は一転して、全曲カバーというユニークな作りになっている。
ボウイと共にジャケット写真にうつっている女性は、モデルのツィッギー。
そう、60年代、超ミニのスカートで社会現象まで巻き起こした、あのおかただ。
彼女が最も活躍していた頃の、英国のビート・グループが本盤には勢揃いする。いずれも、ボウイが愛聴して、強く影響を受けていたバンドばかりだ。
日本人にも馴染みが深い60年代の英国バンドといえば、ザ・ヤードバーズだろう。「I Wish You Would」と「Shapes Of Things」の2曲がそれ。もっとも前者はオリジナルが米国のブルースマン、ビリー・ボーイ・アーノルドだが、ボウイはヤードバーズ経由でこの曲を知ったのだ。
特に後者のアレンジがカッコいい。ヤードバーズをさらにハードに、シャープに、パワーアップしたサウンドに仕上がっている。
ヤードバーズと並んでメジャー級なのは、ザ・キンクスとザ・フーだろう。
フーは2曲。「I Can’t Explain」と「Anyway,Anyhow,Anywhere」である。フーのファーストならびにセカンド・シングルであり、ボウイがいかに彼らに心酔していたかが、手に取るように分かる。ダルトリーばりのシャウトは、ボウイの新たな魅力だな。
キンクスは「Where Have All the Good Times Gone」の1曲。日本では特にヒットしていないマイナーな曲の、しかもB面だが、「You Really Got Me」や「All Day And All Of The Night」にも引けを取らない、イカした曲なのです。必聴。
そして、のちにそれらと同じくらいメジャーになったのがシド・バレット時代のピンク・フロイドだ。
曲は「She Emily Play」。Playをプライと発音する、コックニー訛り丸出しなところまで、しっかりカバーしていてクスリとしてしまう。最後のストリングスに至るまで、アレンジも凝っている。
これら4バンドよりだいぶんマイナーだが、ヴァン・モリスンを輩出したゼムも、ボウイのオキニだ。曲は「Here Comes The Night」。モリスンの白人らしからぬソウルフルな歌には、ボウイもかなり触発されたみたいだ。
日本ではほとんど話題にならないものの、本国では結構人気があり、ヒット曲も多いのがザ・プリティ・シングスだ。
オープニングの「Rosalyn」と「Don’t Bring Me Down」の2曲がそれ。単純なリフだが強力なビートに、若き日のデヴィッド・ジョーンズ少年はノック・アウトされたのだ。
それ以外は、いわゆるB級バンドのくくりになるかな。モージョズ、マージーズなんて、筆者もまるで知りませんでした。
でも、曲を聴くと、どこかで聴いたような感覚もある。「Everything’s Alright」、「Sorrow」がそれぞれのカバー曲だ。70年代のリ・アレンジにより、オリジナル以上にヒップな音になっている。
さらにはオーストラリアのバンド、イージービーツの「Friday On My Mind」なんてのもある。ビージーズがオーストラリアから出て来たことを考えると、米国よりむしろ豪州の方が共通の文化圏といえるのかも知れない。
全曲でバックを務めるのは、「ジギー〜」以来のレギュラー・バンド、スパイダーズ・フロム・マース。そのメインスター、金髪ギタリストのミック・ロンソンはアルバムの完成後脱退してしまい、しばらくボウイとは疎遠になる。
ロンソンのファンにとっても、そのサイケデリックなプレイを堪能できる一枚として、必聴盤といえるだろう。
ボウイのグラム・ロック・サウンドも、一朝一夕にして出来たものではない。これら60年代後半からの、膨大なポップ・ソングの蓄積の上に咲いた華なのである。
これを聴いてさらにオリジナルに遡ることで、70年代のロックをより深く理解出来るようになるはずだ。
企画ものとはいえ、知的刺激に満ちた一枚。一度だけで聴き捨てなんて、もったいないぜ。
<独断評価>★★★☆