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音盤日誌「一日一枚」#288 大沢誉志幸「CONFUSION」(EPIC/SONY 28・6H-112)

2022-08-29 05:09:00 | Weblog

2005年10月16日(日)



#288 大沢誉志幸「CONFUSION」(EPIC/SONY 28・6H-112)

大沢誉志幸のサード・アルバム。84年リリース。木崎賢司ほかによるプロデュース。

大沢誉志幸はバンド「クラウディ・スカイ」を経て83年ソロ・デビュー、翌年「その気×××」「そして僕は、途方に暮れる」の連続ヒットで一躍メジャーとなる。本盤はいわば彼の出世作にあたる。

99年にいったん音楽活動を停止したものの、2003年に復活、アルバム「Y」を発表。現在は再び開店休業状態にある大沢だが、改めて聴いてみると、そのスケールの大きい才能には感服を禁じ得ない。

個性的な歌声だけでなく、器楽演奏にもたけており(見たことのあるひとには納得いただけると思うが、彼のステージでのギター・プレイはなかなかのもの)、もちろん作曲能力もハンパでなく、さらには容姿にも恵まれ、歌う姿が実に格好よろしい。天は彼に二物、三物を与えているのだ。

これに匹敵するくらいカードを持っているのは、後に出てくる桜井和寿くらいのものか。

当アルバムはデビュー以来の付き合いである敏腕アレンジャー、故大村雅朗の全面サポートにより、さまざまなサウンドが展開されている。アバンギャルドなロックもあれば、ファンク路線もあり、さらにはエレクロニカなポップもある。松田聖子のアレンジャーとして有名だった大村にも、こういう多面体的な表現力があったのだと、つくづく思い知らされる。

このアルバム以後、彼の15年にわたる活躍が続くのだが、いま思えば、世間的には彼のユニークな音楽世界を十分に理解したとは思えないふしがある。

「その気×××」も、また「そして僕は、途方に暮れる」もタイアップがらみでなんとかヒットしたという感じだったし、彼のヴィジュアル的な魅力が人気を後押ししていたのも事実だ。

R&Bをはじめとするブラック・ミュージックをベースにした、彼の独自な音楽性が、CCBやらイモ金トリオやら一世風靡セピアやらが流行っていた当時の日本に、真に理解されていたとは思えない。

一般大衆は結局、マスメディアで「露出」の多いものしか、選ばない。地道に草の根的活動を続けていても、なかなかスポットライトは当たらない。

一時期でもメジャーになっただけ、まだ大沢はラッキーなクチなのかもしれないが、いまや「あのひとはいま」的な切り口でしか語られることがないのは、いかにも悔しい。今年で48才、でも彼ならまだまだやれるはず。

その卓越したソングライティング力を、もう一度世間に見せつけてほしい。彼の同年代の人間のひとりとして、大いに期待している。

<独断評価>★★★★


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