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音曲日誌「一日一曲」#283 クロード・ウィリアムスン「Stella By Starlight」('Round Midnight/Bethlehem)

2024-01-13 06:23:00 | Weblog
2013年9月1日(日)

#283 クロード・ウィリアムスン「Stella By Starlight」('Round Midnight/Bethlehem)





白人ジャズ・ピアニスト、クロード・ウィリアムスン、57年リリースのアルバムより。ヴィクター・ヤング=ネッド・ワシントンの作品。

クロード・ウィリアムスンは1926年、ヴァーモント州ブラットルボローの生まれ。テディ・ウィルスン、アル・ヘイグ、バド・パウエルなどの影響を受けて、ジャズ・ピアノを弾き始める。

20代の初め、西海岸に移住、レッド・ノーヴォ、ジューン・クリスティ、マックス・ローチ、アート・ペッパー、チェット・ベイカー、バド・シャンクらと共演して名を上げていく。

54年にはキャピトルにて初リーダー・アルバムを録音。56年にはベツレへムへ移籍、ここでは2枚のアルバムを残しており、きょうの一曲はその2枚目からだ。

聴くとすぐにわかるかと思うが、そのプレイは明らかにバド・パウエルの影響が濃厚だ。というか、ほとんどデッド・コピーに近い。

50年代当時、バド・パウエルに影響を受けなかったジャズ・ピアニストなどまったくいないと言っていいぐらい、彼の影響力はすさまじかった(かのビル・エヴァンスでさえ、パウエル・ライクな演奏をしたこともあったくらいだ)。

でも、それにしてもである。ウィリアムスンほど、パウエルへの崇拝にも近い思いを、あからさまに表現したピアニストもいるまい。「それって、プロのアーティストとしてどうなの?」というツッコミを入れたくもなる。

まあ、そのくらい、ウィリアムスンのパウエルへの思い入れはハンパでなく、随所にパウエル的なフレージングが散見されるのだ。

きょうの一曲は、多くのジャズマンによってカバーされてきた、スタンダード中のスタンダード。それを、ベースのレッド・ミッチェル、ドラムのメル・ルイスという手練のセッション・マンをバックに、ウィリアムスンは軽快にプレイしている。

前半は、ゆるやかなテンポでのソロ。そして、テンポを上げてトリオでのスピーディなプレイ。実によくスウィングしており、まったく澱みがない。

強い影響を受けているとはいえ、パウエルの鬼気迫るような雰囲気、スピード感とは裏腹の重いグルーヴはそこにはなく、ジャズ本来の軽みが、良いかたちで表現されているのだ。

結局、パウエルとの一番大きな差異は、そういうタッチの違い、ニュアンスの違いにあるといえよう。

パウエルのあの「紙一重」の重~い音楽についていけなかったリスナーも、ウィリアムスンの軽快なサウンドなら受け入れられるのではないかな。

たしかに、オリジナリティという意味では、到底パウエルを乗り越えようがない。しかし、ジャズとは基本的にポピュラー音楽であり、軽音楽だ。ウィリアムスンのような、アーティストというよりは、アーティザンなミュージシャンにも、十分存在価値はある。

ビル・エヴァンスのようなメジャーな人気はないにせよ、手堅い実力を持ったピアニスト、クロード・ウィリアムスン。再評価に値いするひとだと思うよ。


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