2006年5月28日(日)
#318 ダリル・ホール&ジョン・オーツ「ライヴ・アット・ジ・アポロ 」(RVC RPT-8312)
しばらく更新が止まっておりました。スマソ。
ひさしぶりの一枚は、一年ぶりのホール&オーツ。85年リリースのライブ盤である。
タイトルが示すように、ブラック・ミュージックの殿堂、アポロ・シアターにての収録。ホール&オーツおよびボブ・クリアマウンテンによるプロデュース。
アポロ・シアターに出演するということは、ソウル・ミュージックを志す者にとっては、格別の意味がある。何万人も収容するスタジアムで行うライブよりも、はるかに大きな価値を持つのである。
黒人たちにとってアポロ・シアターは、イスラム教徒にとってのメッカの大モスクのようなもの。まさに「聖堂」なのである。
白人ながらソウル命のホール&オーツも、この場所に立つことに、やはり特別な感慨を抱いていた。それがよくわかるのが、A面トップの「アポロ・メドレー」だ。
元テンプテーションズのエディ・ケンドリックス、デイヴィッド・ラフィンをゲストに迎え、テンプス・ナンバーを再演してみせたのである。
一曲目の「ゲット・レディ」、三曲目の「ザ・ウェイ・ユー・ドゥ」ではケンドリックス、二曲目の「エイント・トゥー・プラウド・トゥ・ベッグ」、最後の「マイ・ガール」はラフィンがリード・ボーカルをとっている。
ホール&オーツは完全にバック・コーラスに徹して二人に違和感なく溶け込み、懐かしのテンプス・サウンドを再現しているのだ。
アポロ・シアターへのリスペクトをこのメドレーで表明、オーディエンスのこころを見事つかんでいる。ふだんの彼らとは、ひと味違うライブの始まりだ。
続くナンバーもカバーだ。サム&デイヴのヒット「僕のベイビーに何か」。
先にリ-ドをとるのは、ジョン・オーツ。彼の低めのシブい歌声が実にいいし、ホールとのハーモニーも素晴らしい。
そしてようやくデュオの片割れ、ダリル・ホールがもっぱらリードをとる。「エヴリタイム・ユー・ゴー・アウェイ」だ。
この曲、英国人シンガー、ポール・ヤングのヒットとしておなじみだが、元々はホールの作品。ここでも彼は歌う前に「This is the original」と説明してから、歌い始めている。
ヤングのバージョンも悪くはないが、原作者バージョンもさすがの出来映え。涙ちょちょ切れるぐらい、ディープ、ディープ、ディープな熱唱なんである。
B面は一転、彼らの80年代前半のヒット、代表曲が続く。
まずは「アイ・キャント・ゴー・フォー・ザット」。ホール、オーツ、サラ・アレンの共作。81年リリースのアルバム「プライベート・アイズ」に収録されたヒット。
A面のクラシカルなソウル・サウンドに比べ、よりモダンでファンクな演奏が展開されていく。オリジナル・バージョンにはない、ホールのラップによる聴衆への煽りも聴きもの。
続くは「ワン・オン・ワン」。ホールの作品。82年発表のアルバム「H2O」収録曲。
ホールのファルセットを交えたソフト、でもソウルフルな歌がGOODだ。
お次は再びホール、オーツ、アレンの作品で「ポゼッション・オブセッション」。84年リリースの「BIG BAM BOOM」収録のヒット曲。オーツがリードをとっている。
オーツが歌っているわりに、けっこうハイ・トーンを強調した作りなのが、他のオーツ・フィーチャー曲とはちょっと異質かな。
かなり複雑なフレージングも見事にこなしているオーツ。ボーカリストとして、ホールに決してヒケをとっていないことが、よくわかる一曲。
ラストは「アダルト・エデュケイション」。84年の大ヒットで、オリジナル・アルバムには未収録。これもまた、ホール、オーツ、アレンの作品。
この曲に関しては、未開の部族の怪しげな習俗をモチーフにした、エロティックなPVが妙に記憶に残っているが、曲自体もなかなかいい。
ジャングル・ビートを下敷きにして、彼らなりのハードでモダンなアレンジを加えたサウンド。思わず体が動き出すとは、こういう曲のことを言うのだろう。
以上、いずれもハイレベルの演奏と歌が楽しめるのだが、LP一枚分というのは、ちょっと物足りないかも。やっぱり、二枚組ぐらいのボリュームが欲しいところだ。
78年に、彼らの最初のライブ盤「LIVETIME」が出ているのだが、このときも一枚のみ。
出来れば、この二枚を合わせて一気呵成に聴く、そのくらいがいいような気がするね。(ちなみに、曲のダブりはない。)
最後に余談だが、アルバム中の「アポロ・メドレー」でのステージ写真を見て、「うわー、テンプスのふたりのほうが、ホール&オーツより100倍カッコええやん」と思ってしまったのは、筆者だけであろうか(笑)。
<独断評価>★★★☆