2004年3月22日(月)
#210 ディープ・パープル「ディーペスト・パープル」(WARNER BROS. WPCP-4545)
現在来日中の老舗ハードロック・バンド、ディープ・パープルのベスト・アルバム。80年リリース。
もう、それ以上の説明など不要だろう。とにかく、黄金期(第2~3期)のパープルのエッセンスがこの一枚に凝縮されている。
日本では最初の本格的ヒットとなった「ブラック・ナイト」に始まり、極めつけの「スモーク・オン・ザ・ウォーター」に至るまで、彼らの代名詞的ナンバーが12曲。感涙モノである。
最近ではヤンキー・ロックの旗手、氣志團より敬意をこめてサウンドをパクられているパープル。歴史的評価はおいといて、彼ら以上に日本人に愛されたロック・バンドが他にあったろうか?
多分、ないような気がするね。
さて、パープルのベスト・アルバムはこれ以前にも「24 CARAT PURPLE」というのが75年に出ているが、それとの大きな違いは、「ハイウェイ・スター」「スペース・トラッキン」「紫の炎」「嵐の使者」「デイモンズ・アイ」が加わり、「ネヴァー・ビフォア」が外されていること。当アルバムの方が、より多くの人気曲が収録されているといえますな。
また、「スピード・キング」は「イン・ロック」とも「24~」とも違う、第三のテイクを収録している。
<聴きどころその1>
ディープ・パープルの魅力は、たとえばリッチーのトリッキーなプレイとか、ジョンの緻密なキーボード・ワークとか、はたまたリズム・セクションのパワーとか、色々挙げられるだろうが、やはりその「歌声」にとどめを刺すのではないだろうか。
もし、パープルのリード・ヴォーカルがロッド・エヴァンスのままであったら、と想像してみるといい。多分、今日の彼らの栄光はなかったはずだ。
イアン・ギラン、彼こそはパープルを人気バンドたらしめた最大の功労者だと思う。
彼の、耳に突き刺さるような超高音シャウト、これはエヴァンスはもとより、デイヴィッド・カヴァーデイル、グレン・ヒューズ、ジョー・リン・ターナーら、後継ヴォーカリストの誰も真似が出来なかった。
ここはやはり名曲「チャイルド・イン・タイム」を聴くといい。最後までフル・テンションの歌声。彼の凄まじさがよくわかることだろう。
<聴きどころその2>
もちろん、歌だけではない。ハードでパワフルな演奏も彼らの大きな魅力だ。
ただ、当時我々が「スーパー・テクニック」だと思って聴き惚れていた演奏も、いま聴いてみると「なんかフツー」という感じがしないでもない。
これは別に彼らがヘタだったということではなく、それだけロックというものが、短期間に驚異的な進化を遂げたという証拠なんだと思う。
多くのロック少年たちは彼らをお手本にしてロック演奏のABCを学び、そしてある者たちは彼らよりさらに高い境地へと飛躍していった、そういうことだと思う。
当時は過激だと思っていたリッチーのプレイも、今聴くとおそろしく「オーソドックス」なものに聴こえる。たとえば「ブラック・ナイト」しかり、「ストレンジ・ウーマン」しかり。
当時のもうひとつの人気バンド、ZEPは非常にコピーが難しかったが、パープルはそれに比較すれば、基本テクニックさえあれば真似るのもさほど困難ではなかった。これも、大人気の要因だったのだろう。
実際、筆者の周辺でも、中3くらいで「ハイウェイ・スター」とかをほぼ完コピしているバンドがあったくらいだ。
子供にもわかりやすいサウンドなので、玄人ウケは余りしないが、支持層はものすごく広い。これが彼らの強みだったのだと思う。
その代表例が「スモーク・オン・ザ・ウォーター」だと言えよう。コピー嫌いなこの筆者でさえ、一時はリッチーのソロをそらんじていたほど。これぞロック・ギタリストの必修課題曲、ナンバーワン!
日本のバンド・シーンにおいて、かつて自分が最大の影響力を持っていたなんて、もはやエレキを廃業したリッチーにはピンと来ないでしょうけどね。
この一枚を聴き終わる頃には、あなたの手は自然とエレキ・ギターに伸びて、「あの」フレーズを弾き始めているはず。間違いない(笑)。
<独断評価>★★★★☆