NEST OF BLUESMANIA

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#257 リック・デリンジャー「Beyond The Universe」

2013-03-03 11:22:50 | Weblog
#257 リック・デリンジャー「Beyond The Universe」(Rock And Roll Hoochie Koo: The Best Of Rick Derringer/Sony Records)

リック・デリンジャー、96年リリースのベスト盤より。彼自身の作品。

リック・デリンジャーは、47年オハイオ州フォートリカバリー生まれ。マッコイズを結成、65年の「ハング・オン・スルーピー」がスマッシュヒット、一躍注目を集めるようになる。

その達者なギターの腕前を見込まれ、ジョニー&エドガー・ウィンター兄弟とも共演。一方ではソロで「ロックンロール・フーチー・クー」のヒットを放つなど、70年代は目覚ましい活躍を見せる。76年には自身のバンド、デリンジャーも結成し、ライブでの圧倒的なパフォーマンスが話題となってブレイク。本格的なギタープレイだけでなく、中性的な美形という彼のルックスも大人気の理由だった。

筆者も大学時代にデリンジャーのタイトな音を聴いて、「これぞハードロックバンドの鑑!」と気に入ったものだ。

そんな彼もおん年65歳。一時のミーハーな人気こそ終息したものの、いまだに現役ロッカーとして、おもにブルースを演奏し続けているようだ。

きょうは彼の全盛期、70年代の音源を厳選したベスト盤のラスト、デリンジャーのデビュー・アルバムにも収録されていた「Beyond The Universe(宇宙へ飛び出せ)」を聴いていただこう。

前のめりに疾走する激しいビート、頻繁なテンポ・チェンジ、複雑なリフとボーカルのユニゾンなど、エッジの立ったサウンドが全面的に展開するチューンだ。

そしてなにより、デリンジャー自身のワイルドなシャウトが、このホットな曲にマッチしている。

後半はデリンジャーともうひとりのギタリスト、ダニー・ジョンスンとの互角のギターバトルが、強烈な印象を与えてくれる。ライブではこれがさらに長尺で展開されるのだ。

ハードロックにも、個々のバンドによって微妙な違いがあるが、デリンジャーというバンドはブルースというルーツを色濃く残しつつ、ビートにおいては常に最新のものを追求していくという姿勢がはっきりと見られる。

つまり、原点を常に忘れず、しかしその一方で進化し続ける、それがデリンジャー・サウンドなのだ。

バンド・デリンジャーとしては結局数年の活動で終わってしまったが、彼らの後続バンドへの影響は意外と大きい。

たとえば、ヴァン・ヘイレン。彼らはデリンジャーに少し遅れて78年に「You Really Got Me」でデビューしたが、その曲はデリンジャーのライブでの定番曲だった。「You Really~」をハードロック化したのは、デリンジャーがご本家だったのだ。このように、デリンジャーは次世代ハードロックバンドたちに、さまざまな遺伝子を残して消えていった。

きょうの一曲では、ツインギターもさることながら、スピーディで的確なドラムプレイが本当にスゴい。神プレイといってもいい。作曲者リック・デリンジャーの制作意図は、このドラマー、ヴィニー・アピス(カーマインの実弟)にして初めて実現できたといえそうだ。

短期間ではあったが実に見事な作品群を残したこのバンドの、記念碑的な一曲。シンガー、ギタリスト、プロデューサーとしてのリック・デリンジャーの、たぐいまれなる才能が凝縮されてます。ぜひ味わってみて。

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