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音曲日誌「一日一曲」#422 ジミー・ドーキンス・バンド「Blues With A Feeling」(Delmark)

2024-06-01 07:33:00 | Weblog
2024年6月1日(土)

#422 ジミー・ドーキンス・バンド「Blues With A Feeling」(Delmark)




ジミー・ドーキンス、1976年リリースのアルバム「Blisterstring」からの一曲。ラボン・タラントの作品。スティーヴ・トマシェフスキー、ドーキンス・バンドによるプロデュース。

米国のブルースマン、ジミー・ドーキンスことジェイムズ・ヘンリー・ドーキンスは1936年ミシシッピ州チュラ生まれ。ギターを習得、ミュージシャンを志して55年にシカゴに移住、工場勤めのかたわらブルースクラブで演奏を始め、セッションマンとして名を上げていく。

音楽仲間のマジック・サムの助力を得て、69年にファースト・アルバム「First Fingers」をデルマークレーベルよりリリースする。残念なことにサムはその年の12月に急逝してしまう。

デルマークで3枚のアルバムをリリースするが、本日取り上げた一曲が収められた「Blisterstring」はその3作目にあたる。

レコーディング・メンバーはボーカル、ギターのドーキンスのほか、ギターのジミー・ジョンスン、ベースのシルベスター・ボインズ、ドラムスのタイロン・センチュアリー、ゲスト・ピアノのサニー・トンプスン。

この「Blues With A Feeling」という曲は、リトル・ウォルターのバージョンでもっぱら知られており、現在でもハーピスト/シンガーを中心に演奏されることが多いブルース・スタンダードとなっているので、ウォルターの作曲かと思われがちだが、オリジナルは別にある。

ジャンプ・ブルースとジャズのシンガー/ドラマー、ラボン・タラント、そしてジャック・マグヴィ&ヒズ・ドア・オープナーズによる1947年のシングル・ヒット曲がそれである。マグヴィはサックス、クラリネットなどの管楽器奏者だ。曲はタラントが書いている。

ウォルターでお馴染みのあの曲は、もともとはスウィング・バンド・スタイルで演奏されていたのである。テンポもウォルターよりはだいぶん速く、非常に軽快な感じの曲調だ。

これをウォルターは大胆にアレンジ、ヘビーなスロー・ブルースとして1953年7月にレコーディングした。メンバーはギターのデイヴ・マイヤーズ、ルイス・マイヤーズ(ジミー・ロジャーズとも)、ベースのウィリー・ディクスン、ドラムスのフレッド・ビロウ。チェスの代表選手揃いである。同年にチェッカーレーベルよりシングルリリースされ、R&Bチャート6位のヒットとなった。

以降は、ハープ演奏を前面に押し出したウォルターのアレンジが、この曲の主流となっていく。

ジミー・ドーキンス・バンドのバージョンは、基本的にウォルターのバージョンを踏まえて、そのハープのパートをギターに置き換えるスタイルで演奏している。

リズムギターのジミー・ジョンスンがギターに軽くワウをかけて弾いているあたり、70年代半ばという時代性を感じさせる。

主役のドーキンスのギターは、聴けばすぐ彼のプレイと分かるくらい、はっきりとした特徴がある。エッジの立った、ハード・ドライヴィングな音なのである。この粘っこさ、エグみが、ドーキンス最大の魅力といってよい。彼の、ヒゲを蓄えた濃い容貌にピッタリのサウンドである。

筆者は常日頃より、ブルースマンたるもの、その容姿も生み出す音楽に合ったイメージを持っているべきだと考えているのだが、ドーキンスの場合、まさにその典型例じゃないかという気がする。

眼光鋭く、男臭さに満ちたドーキンスの横顔は、彼の歌い弾く、ディープなブルースそのままという印象である。ジャケット写真も、実に雰囲気がある。

ドーキンスはいわゆるヒット曲には恵まれていない、地味なアーティストではあるが、その存在感には確固たるものがある。

決して上手いといえるタイプの歌い手ではないが、その訥々とした歌声には、彼ならではの個性、魅力がある。

器用にいろいろなスタイルを弾き分けるのでなく、モダン・シカゴ・ブルースの王道をひたすら突っ走るようなスクウィーズ・スタイルのギターには、少ないながらも熱烈なファンがついている。

ドーキンスは2013年に、76歳でこの世を去っている。

特に華やかなスポットライトが当たることもなく、地道にライブ活動とアルバムリリースを続けて、一生を終えたブルースマン。それがいかにもジミー・ドーキンスらしい。

質実剛健なブルースマン、ジミー・ドーキンスの一球入魂ならぬ一曲入魂的な熱演に、時には耳を傾けてみよう。必ずや、ブルースの真髄をそこに感じられるはずだ。





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