NEST OF BLUESMANIA

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音曲日誌「一日一曲」#335 ジョン・プライマー「Hard Times」(Blues House Productions)

2024-03-06 07:31:00 | Weblog
2024年3月6日(水)

#335 ジョン・プライマー「Hard Times」(Blues House Productions)






ジョン・プライマーの2022年リリースのアルバム「Hard Times」よりタイトル・チューン。プライマー自身の作品。

黒人ブルースマン、ジョン・プライマーは、1945年ミシシッピ州カムデン生まれの79歳。小作農の家庭に育ち、幼い頃に父親を亡くしたため、母親がシカゴに出稼ぎに行き、自分は地元に残る。農作業の傍ら、粗末な手作り楽器でブルースを歌う日々を送る。

18歳になりシカゴに移住、ミュージシャンとしてのキャリアが始まる。メンテナーズというバンドでバーやクラブでの演奏を続けたのち、68年にソウル系のブラザーフッド・バンドに参加してフロントで歌うようになる。

79年に名プロデューサー、ウィリー・ディクスンに認められてシカゴ・ブルース・オールスターズに参加、マディ・ウォーターズとも共演を果たす。

マディ・バンドのメンバーを引き継いだレジェンダリー・ブルース・バンドを結成、80年から83年まで活動する。

これによりプライマーは、名実ともにシカゴ・ブルース界のトップに立ったのである。

80年代はそういったオールスター・バンド、あるいはマジック・スリムやジェイムズ・コットンとの共演、客演でのレコード・リリースが多かったが、90年代よりソロ名義でのリリースを行うようになる。

日本にも2001年にパークタワー・ブルース・フェスティバル出演のため来日を果たしている。

本日取り上げるのは、彼の一番最近のスタジオ録音盤から。プロモーションのためのミュージック・ビデオを観ていただこう。

リアル・ディール・ブルース・バンドを率いての演奏。メンバーにはハーモニカのスティーヴ・ベル(キャリー・ベルの息子)、ピアノのジョニー・イグアナらの実力派がいる。

ここでプライマーはマディ・バンドにいたギタリスト、サミー・ローホーンから学んだというスライド・ギターを、レスポールで奏でている。

プライマーがかつて師事したマディ・ウォーターズの「Rollin’ And Tumblin’」を彷彿とさせる曲調の、いなたいデルタ・ブルース・スタイル。

曲中、プライマーは1972年開業、2003年まで営業していた、シカゴのサウスサイドにあったブルース・クラブ、チェッカー・ボード・ラウンジの跡地を訪問する。

シカゴはブルースのメッカとはいえ、ブルース専門の店の経営は決して楽とはいえない。若手のミュージシャンたちも、なかなか育たない現状、ブルースの先行きは明るくない。一時は繁盛したチェッカー・ボード・ラウンジも、歳月と共に寂れて、閉じられることになってしまった。

そんな意味も込めて「ハード・タイムズ(不況期)」というタイトルがつけられたのだと思う。

とはいえ、流行からは取り残されても、ブルースという音楽はなかなかに「しぶとい」。老いたブルースマンは、死ぬまでブルースを歌い続けるのだ。

バディ・ガイに次ぐ現役ブルースマンの最古参、生きる伝説(レジェンド)ジョン・プライマーの、バリバリのプレイ、歌声を味わってくれ。

80年近い歳月が、彼の声に例えようのない凄みを与えている。

今もなお最もタフな大御所ブルースマン、それがジョン・プライマーなのだ。


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