2003年5月17日(土)
#158 エリック・クラプトン「ERIC CLAPTON」(ポリドール/RSO P33W 25020)
エリック・クラプトン、記念すべき初ソロ・アルバム。70年リリース。
スーパー・グループ、ブラインド・フェイスが短期間で事実上解散となり、クラプトンは新たな活動へと踏み出す。
ブラインド・フェイスとともに全米ツアーを行ったディレイニー&ボニーと意気投合、彼らを加えてソロ・アルバムのレコーディングに入ったのだ。
メンバーは他に、レオン・ラッセル、のちにデレク&ドミノスのメンバーとなるボビー・ウィットロック、カール・レイドル、ジム・ゴードン、ホーンのジム・プライス、ボブ・キーズ、CSN&Yのスティーヴン・スティルスなど、実力派が勢ぞろい。
ギターも従来のギブソンからフェンダー(ストラト)に持ち変えている。クリーム的なハード・ロックから大転換し、アメリカン・ミュージック指向を前面に出しており、現在のクラプトン・サウンドの原点ともいえる一枚だ。
<筆者の私的ベスト4>
4位「BAD BOY」
ここはやはり、いかにブルース・スピリットが感じられるかで、選んでみよう。
まずは、ディレイニー・ブラムレットとクラプトンの共作ナンバーから。
ホーン・アレンジを導入したそのサウンドは、まさにR&B。ブラムレットの嗜好が色濃く出た一曲に仕上がっている。
クラプトンも、ブラインド・フェイスではヴォーカルをウィンウッドに大半持っていかれてしまったか、そのうっぷんを晴らすかのように、思い切りシャウトしている。
3位「LONESOME AND A LONG WAY FROM HOME」
ディレイニーとラッセルの共作。こちらも重厚なホーン・アレンジが、サウンドの重要な決め手となっている。
もともとは彼らがアトコ所属のサックス奏者、キング・カーティスのために書き、彼のヴォーカルでレコーディングしたという曲。(残念ながらカーティス版はレコード化されていないようだ。)
クラプトンをこの難しい曲を見事に歌いこなし、さらにワウ・エフェクトをかけたギター・ソロもバッチリと決めてくれる。
ここにはもはや、クリームの頃の、シャイなギター青年の面影は見られない。野太く、たくましいシンガーへと、成長したのだ。
2位「DON'T KNOW WHY」
これもまた、ディレイニーとクラプトンの共作。
知名度は低いが、なかなかの名曲。なんとも濃ゆーいR&Bチューン。ホーンのいなたい響きもナイスです。
テクニックはいまいちなれど、いかにも「真情」が伝わってくるのが、クラプトンのヴォーカル。
やはり、聴き手を感動させる決め手は「ハート」なんだなと、感じます。
カッコつけじゃない、ホンマモンの歌。これぞ「ソウル・ミュージック」でありましょう。
1位「AFTER MIDNIGHT」
白人シンガー、J・J・ケイルの作品。ケイル自身の、ボソボソッとしたシブめのヴォーカル・スタイルとは好対照に、クラプトンはいかにも威勢がいい、ベランメエ調の歌いぶりだ。バックのノリも最高。
ここでの彼のギター・ソロはかなり控え目だが、ヴォーカルだけでも十分に「聴かせられる」ようになったのが、よくわかる。
曲のスタイルはいわゆるブルースとは違うのだが、その精神は十分にブルースな一曲だと思う。
もちろん、他にもすぐれた曲が多い。惜しくも選には漏れたが、アコースティック・アレンジの「EASY NOW」、クラプトンとラッセルの共作「BLUES POWER」、シングル・ヒットしたディレイニーとの共作「LET IT RAIN」など、いずれも上の4曲に劣らぬ佳曲だと思う。
つまり、非常に「粒の揃った」一枚。今聴いても、聴きごたえは十分。多分あなたのライブラリーにも眠っているだろうが、ぜひ引っぱり出して聴いてみてほしい。
<独断評価>★★★★☆