2001年10月21日(日)
ジョン・メイオール&ザ・ブルースブレイカーズ「ウィズ・エリック・クラプトン」(DERAM/ポリドール POCD-1851)
1.ALL YOUR LOVE(Rush)
2.HIDEAWAY(King, Thompson)
3.LITTLE GIRL(Mayall)
4.ANAOTHER MAN(Arr. Mayall)
5.DOUBLE CROSSIN' TIME(Mayall, Clapton)
6.WHAT'D I SAY(Charles)
7.KEY TO LOVE(Mayall)
8.PARCHMAN FARM(Allison)
9.HAVE YOU HEARD(Mayall)
10.RAMBLIN' ON MY MIND(Trad., Arr. Mayall)
11.STEPPIN' OUT(Bracken)
12.IT AIN'T RIGHT(Jacobs)
先週の1枚も名盤であったが、今週も名盤中の名盤と呼ばれる1枚。
ジョン・メイオール率いるブルースブレイカーズのセカンド・アルバムである。66年リリース。
64年末、音楽的指向のくい違いからヤードバーズを脱退したエリック・クラプトンが身を寄せたのが、英国ブルース界のパイオニア、メイオールのバンドであった。
このグループでクラプトンは、自分の音楽的才能を存分に開花させ、のちの大活躍の礎を築くことになる。
さっそく(1)から聴いてみよう。もちろん、オーティス・ラッシュの最重要ナンバー。
コブラ盤のオリジナルにほぼ忠実なアレンジだが、クラプトンのギターの艶やかな音色がたとえようもなく素晴らしい。
おそらくレス・ポール・スタンダードを使っていると思われるが、本家ラッシュにせまるあざやかなヴィブラート・トーンにノック・アウトである。
このアルバムの発表時、クラプトンわずかに21才。はたちそこそこの若造がこんなギターを弾いていたんだから、もう絶句である。
しかも彼は17才の時にギターを始めたという。ほんの数年で、これだけ完璧にブルース・エッセンスをマスターしたのである。まさに、天才。まさに、神。
続く(2)は、クラプトンが最も影響を受けたギタリストのひとり、フレディ・キングのデビュー曲。
こちらもオリジナルにほぼ忠実に従いながらも、細かいところで若干アレンジを加えている。聴き比べてみると面白いだろう。
3分ちょっとという短いインストの中に、ブルース・ギターのエッセンスがギュッと凝縮されている。文句なしの名演。
(3)はメイオールのオリジナル。ミディアム・テンポのブルース。ここでのクラプトンのギターは、伸びやかでリラックスしたムードがある。
(4)はトラディショナルをアレンジしたという、伴奏はクラップのみといたってシンプルな、カントリー・ブルース。メイオールの中低音を強調したヴォーカルといい、ハープといい、どことなくサニーボーイ二世ふうである。
メイオールは、他の曲でのどちらかといえば一本調子な、甲高いヴォーカルより、こういうシブめの歌い方のほうがずっといい、と思うのは筆者だけであろうか。
(5)は日本のブルース・ロック系のバンドらもこぞってコピーした、メイオール・クラプトンの共作。泣きのギター・ソロが印象的なスロー・ブルース。
ジョン・アーモンドのバリトン・サックスが奏でる、物憂げなりフもなかなかいい。
(6)はいうまでもなく、レイ・、チャールズの大ヒット。当時のR&Bバンドにおいては、「キラー・チューン」というべき曲だ。
間奏のヒューイ・フリントのドラム・ソロの後に、ビートルズの「デイ・トリッパー」をパクったリフが続くのは、ご愛嬌といったところか。コンパクトにまとまっていて、ステージ受けがよさそう。前半の幕切れにはふさわしいナンバーだ。
(7)は、メイオール作、ブラス・アレンジも賑やかな軽快なジャンプ・ナンバー。クラプトンのギターも、思いきりアグレッシヴに泣き、喚いている。
(8)は、悪名高き監獄農場「パーチマン・ファーム」を歌ったモーズ・アリスン作のブルース。
歯切れのいいビートに乗せて、メイオールのハープ・プレイが炸裂する。
(9)はデレク・アンド・ドミノス時代の名演「ハヴ・ユー・エヴァー・ラヴド・ア・ウーマン」をほうふつとさせるスロー・ブルース。メイオールのオリジナル。
ここでのクラプトンのプレイは、いささか荒削りながら、実にエモーショナルで、ディープだ。ファンならずとも、必聴の出来ばえである。
(10)はトラディショナル、というより、ロバート・ジョンスンのナンバーとして有名。もちろん、このクラプトンのヴォーカルによるヴァージョンがきっかけで世に知られるようになったわけだが。
クラプトンはこの曲が相当お気に召されたらしく、70年代にもライヴで何度か録音している。
やはりその歌詞が、さすらいこそ自分の身上と考えるクラプトンの心情に、すんなりとフィットしたのであろうか。
続く(11)は(2)と好一対をなす、インストゥルメンタル。メンフィス・スリムでおなじみのナンバーである。
オリジナルのピアノ・リフやソロをギターにおきかえ、エッジの立った音でパワフルな演奏を聴かせてくれる。
なお同曲は、クリーム時代にも「LIVE VOL.2」で13分以上にもおよぶ超熱演がある。ぜひ、聴き比べてみて欲しい。
ラストの(12)は、リトル・ウォルターのカバー。アップ・テンポでガンガン飛ばす演奏が、耳に心地よい。
前面には出てこないが、ジョン・マクヴィー(かのフリートウッド・マックのメンバー)やヒューイ・フリントの、堅実でタイトなプレイも、ブルースブレイカーズのサウンドをしっかりと支えている。こちらもよーくチェックしてみて欲しい。
とにかく、発売35年を経た今も、いまだに売れ続けているという驚異のロング・セラ-。
その理由はやはり、弱冠はたちの天才、クラプトンの「華」のあるギター・プレイだろうが、バンド・アンサンブルとしても、彼らの音が極めて高い水準にあることを忘れてはなるまい。
クリーム、フリートウッド・マック。のちに一世を風靡するスーパー・バンドの原点は、ここにある。
歳月の流れに決してあせることのない、不滅の「響き」を聴くべし。