NEST OF BLUESMANIA

ミュージシャンMACが書く音楽ブログ「NEST OF BLUESMANIA」です。

音盤日誌「一日一枚」#70 ジョン・メイオール&ザ・ブルースブレイカーズ「ウィズ・エリック・クラプトン」(DERAM/ポリドール POCD-1851)

2022-01-23 05:37:00 | Weblog

2001年10月21日(日)



ジョン・メイオール&ザ・ブルースブレイカーズ「ウィズ・エリック・クラプトン」(DERAM/ポリドール POCD-1851)

1.ALL YOUR LOVE(Rush)

2.HIDEAWAY(King, Thompson)

3.LITTLE GIRL(Mayall)

4.ANAOTHER MAN(Arr. Mayall)

5.DOUBLE CROSSIN' TIME(Mayall, Clapton)

6.WHAT'D I SAY(Charles)

7.KEY TO LOVE(Mayall)

8.PARCHMAN FARM(Allison)

9.HAVE YOU HEARD(Mayall)

10.RAMBLIN' ON MY MIND(Trad., Arr. Mayall)

11.STEPPIN' OUT(Bracken)

12.IT AIN'T RIGHT(Jacobs)

先週の1枚も名盤であったが、今週も名盤中の名盤と呼ばれる1枚。

ジョン・メイオール率いるブルースブレイカーズのセカンド・アルバムである。66年リリース。

64年末、音楽的指向のくい違いからヤードバーズを脱退したエリック・クラプトンが身を寄せたのが、英国ブルース界のパイオニア、メイオールのバンドであった。

このグループでクラプトンは、自分の音楽的才能を存分に開花させ、のちの大活躍の礎を築くことになる。

さっそく(1)から聴いてみよう。もちろん、オーティス・ラッシュの最重要ナンバー。

コブラ盤のオリジナルにほぼ忠実なアレンジだが、クラプトンのギターの艶やかな音色がたとえようもなく素晴らしい。

おそらくレス・ポール・スタンダードを使っていると思われるが、本家ラッシュにせまるあざやかなヴィブラート・トーンにノック・アウトである。

このアルバムの発表時、クラプトンわずかに21才。はたちそこそこの若造がこんなギターを弾いていたんだから、もう絶句である。

しかも彼は17才の時にギターを始めたという。ほんの数年で、これだけ完璧にブルース・エッセンスをマスターしたのである。まさに、天才。まさに、神。

続く(2)は、クラプトンが最も影響を受けたギタリストのひとり、フレディ・キングのデビュー曲。

こちらもオリジナルにほぼ忠実に従いながらも、細かいところで若干アレンジを加えている。聴き比べてみると面白いだろう。

3分ちょっとという短いインストの中に、ブルース・ギターのエッセンスがギュッと凝縮されている。文句なしの名演。

(3)はメイオールのオリジナル。ミディアム・テンポのブルース。ここでのクラプトンのギターは、伸びやかでリラックスしたムードがある。

(4)はトラディショナルをアレンジしたという、伴奏はクラップのみといたってシンプルな、カントリー・ブルース。メイオールの中低音を強調したヴォーカルといい、ハープといい、どことなくサニーボーイ二世ふうである。

メイオールは、他の曲でのどちらかといえば一本調子な、甲高いヴォーカルより、こういうシブめの歌い方のほうがずっといい、と思うのは筆者だけであろうか。

(5)は日本のブルース・ロック系のバンドらもこぞってコピーした、メイオール・クラプトンの共作。泣きのギター・ソロが印象的なスロー・ブルース。

ジョン・アーモンドのバリトン・サックスが奏でる、物憂げなりフもなかなかいい。

(6)はいうまでもなく、レイ・、チャールズの大ヒット。当時のR&Bバンドにおいては、「キラー・チューン」というべき曲だ。

間奏のヒューイ・フリントのドラム・ソロの後に、ビートルズの「デイ・トリッパー」をパクったリフが続くのは、ご愛嬌といったところか。コンパクトにまとまっていて、ステージ受けがよさそう。前半の幕切れにはふさわしいナンバーだ。

(7)は、メイオール作、ブラス・アレンジも賑やかな軽快なジャンプ・ナンバー。クラプトンのギターも、思いきりアグレッシヴに泣き、喚いている。

(8)は、悪名高き監獄農場「パーチマン・ファーム」を歌ったモーズ・アリスン作のブルース。

歯切れのいいビートに乗せて、メイオールのハープ・プレイが炸裂する。

(9)はデレク・アンド・ドミノス時代の名演「ハヴ・ユー・エヴァー・ラヴド・ア・ウーマン」をほうふつとさせるスロー・ブルース。メイオールのオリジナル。

ここでのクラプトンのプレイは、いささか荒削りながら、実にエモーショナルで、ディープだ。ファンならずとも、必聴の出来ばえである。

(10)はトラディショナル、というより、ロバート・ジョンスンのナンバーとして有名。もちろん、このクラプトンのヴォーカルによるヴァージョンがきっかけで世に知られるようになったわけだが。

クラプトンはこの曲が相当お気に召されたらしく、70年代にもライヴで何度か録音している。

やはりその歌詞が、さすらいこそ自分の身上と考えるクラプトンの心情に、すんなりとフィットしたのであろうか。

続く(11)は(2)と好一対をなす、インストゥルメンタル。メンフィス・スリムでおなじみのナンバーである。

オリジナルのピアノ・リフやソロをギターにおきかえ、エッジの立った音でパワフルな演奏を聴かせてくれる。

なお同曲は、クリーム時代にも「LIVE VOL.2」で13分以上にもおよぶ超熱演がある。ぜひ、聴き比べてみて欲しい。

ラストの(12)は、リトル・ウォルターのカバー。アップ・テンポでガンガン飛ばす演奏が、耳に心地よい。

前面には出てこないが、ジョン・マクヴィー(かのフリートウッド・マックのメンバー)やヒューイ・フリントの、堅実でタイトなプレイも、ブルースブレイカーズのサウンドをしっかりと支えている。こちらもよーくチェックしてみて欲しい。

とにかく、発売35年を経た今も、いまだに売れ続けているという驚異のロング・セラ-。

その理由はやはり、弱冠はたちの天才、クラプトンの「華」のあるギター・プレイだろうが、バンド・アンサンブルとしても、彼らの音が極めて高い水準にあることを忘れてはなるまい。

クリーム、フリートウッド・マック。のちに一世を風靡するスーパー・バンドの原点は、ここにある。

歳月の流れに決してあせることのない、不滅の「響き」を聴くべし。


この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 音盤日誌「一日一枚」#69 ア... | トップ | 音盤日誌「一日一枚」#71 ジ... »
最新の画像もっと見る