2009年1月18日(日)
#63 ボー・カーター「Banana In Your Fruit Basket」(The Essential/Classic Blues)
新年早々「今年も地道に更新してまいります」と書いたわりには、相変わらずのマイペース更新になってしまった。スマソ。
で、今年の二曲目はこれ。ちょっと意表をついて、戦前のカントリー・ブルースでは代表的なグループ、ミシシッピ・シークス出身のギタリスト/シンガー、ボー・カーターの作品だ。
ボー・カーター、本名アーメンター・チャットマンは1893年ミシシッピ州ボルトン生まれ。ミシシッピ・シークスではメイン・ボーカルをウォルター・ヴィンスンに譲っていたが、ソロ・シンガーとしては20年代後半から40年頃まで、多数の曲をレコーディングしている。
ところで、日本のブルース・リスナーは、言語の問題があるためか、ついつい忘れがちなことがひとつある。
それは、ブルースは原初的な形態において、猥雑な内容のものがかな~り多かった。すなわち、ブルース曲のかなりの部分は、春歌・猥歌のたぐいであったということだ。
ロバート・ジョンスンのいくつかの曲しかり、もっと時代が下ってもウィリー・ディクスンの「スプーンフル」しかりである。そのものずばりでなく、巧妙にダブル・ミーニングにしてあっても、要はBawdy Songなのである。
まあ、カネのない社会の最下層の人々にとって、数少ない娯楽のひとつが●ックスだったわけだから(あとはギャンブルね)、ブルースのモチーフとしてよく出てくるのは、いたしかたないことなんである。
さて、このカーター氏も、ご多分にもれず、そういうちょっとエロティックな比喩の歌をよく歌ってらっしゃる。今日の曲も、タイトルからして、いかにもそれっぽい、意味深な感じでしょ?
聴いてみると、歌は素朴な味わいのものなので、特別エロい印象はないのですが、歌詞はモロにあのことを歌っております。
ギター伴奏も実にシンプルといいますか、かなりシロウトっぽいのですが、むしろそれがいい雰囲気を醸し出してて、◎。
同じアルバムでいうと、「Cigarette Blues」「Let Me Roll Your Lemon」あたりもその系列の作品といえそう。
どこか突き抜けてしまったところさえある素朴なエロティシズム。これも戦前ブルースならではの特徴であり、魅力ともいえましょう。ぜひご一聴を。