2002年12月14日(土)
バッド・カンパニー「BAD COMPANY」(SWAN SONG 92441-2)
(1)CAN' T GET ENOUGH (2)ROCK STEADY (3)READY FOR LOVE (4)DON'T LET ME DOWN (5)BAD COMPANY (6)THE WAY I CHOOSE (7)MOVIN' ON (8)SEAGULL
バッド・カンパニーのデビュー・アルバム、74年リリース。プロデューサーはテリー・トーマス。
いまさらこのグループについて、くだくだしい説明は不要だろう。とにかく聴いてみよう。
(1)はデビュー・シングルでもあり、その大ヒットでバンド名を世界にとどろかしたナンバー。ギタリスト、ミック・ラルフスの作品。
実にシンプルで、なんのケレンもないギター・バンド・サウンドなのだが、これがなんともいえずイイ! 何度聴いても、あきるということがない。
この曲が発表された当時、筆者は高校2年。その頃のアマチュアロックバンドといえば、ZEPとパープルの二大バンドのコピーが大半を占めていたが、このバドカンも、デビューするやいなや、その二大勢力に迫る勢いで、コピーバンドが登場・増殖していったという記憶がある。
そう、今は昔の物語になってしまったが、バドカンはZEP、パープルあたりと並んで、70年代もっとも成功したバンドのひとつであったのだよ。
(2)もひたすら懐かしいのう。こちらはヴォーカルのポール・ロジャーズの作品。
タイトル通り、ステディかつタイトにロックするサウンド。これまたイイ!! ロジャーズらしい、少し「湿り気」を感じさせるメロディ・ラインがまたいい。
バドカンの成功の理由といえば、そのシンプルでわかりやすいバンド・サウンドもさることながら、やはりロジャーズの歌のうまさに負うところ大であろう。確かなテクニックと、独特のブルーズィなフィーリング、これは凡百のシンガーのかなうところではない。
(3)はラルフスの作品。ややスローで重ためなリズムに乗せて、ロジャーズの骨太のヴォーカルが炸裂する、マイナー・バラード調ロック。
当時のバンドの多くに見られた、インスト・ソロの垂れ流しに陥らず、あくまでもヴォーカル中心にコンパクトにまとめている。いや、お見事。
そう、彼らのロックは、ポップス・チューンとして聴いても、一級品の出来ばえなのである。
(4)も発表当時よく聴かれた曲だ。ラルフスとロジャーズの共作。ビートルズの同名曲を見事に「本歌取り」し、カントリー風のアレンジで、彼ら独自の味付けをしている。
この、極めてはっきりとしたアメリカン・ミュージック指向が、彼らに全米での成功をもたらしたのは、間違いないであろう。
しかも、陰影に富んだブリティッシュ・ロック本来の香りを失わずに、それを成し遂げたところに、彼らのハンパではない才能を感じるね。
(5)はバンド名をそのままタイトルにした、いわば彼らのテーマ曲。ロジャーズと、フリー以来の盟友、サイモン・カークとの共作。まさに、「腐れ縁」の「悪友」同士の歌!?
翳りのあるマイナー調メロディが実に美しい。ロジャーズの弾くピアノが全編で効果的に使われている。
いかにもテンションの高いハード・ロックと、こういったしんみりとしたバラードが、実に絶妙にブレンドされているのだよ、この一枚は。
(6)は、ソウル・フレーバー漂うワルツ風スロー・バラード。ロジャーズの作品。
失恋の苦悩、孤独を切々と歌いあげる彼は、どこかアメリカ南部のソウル・シンガーにも似た佇まいだ。
バックのホーン・アレンジがなんとも「雰囲気」があって、ええんですわ。
(7)では一転して、めいっぱいロック。バドカン版「トラヴェリン・バンド」ともいえる一曲。ラルフスの作品。
彼のワウ・ギターが全開の、ハイパーアクティヴ・サウンド。もちろん、ロジャーズもシャウトでこれに応酬。
ストーンズにも通ずるところのあるシンプルさ。まことに潔い、ロックン・ロールなり。
ラストの(8)はアコギ・サウンドが印象的なバラード。ラルフスとロジャーズの共作。
カントリーというよりは、フォーク、さらにいえばブリティッシュ・トラッドの風味。これまた、ロジャーズの深みある歌声が心にしみいります。
全体に、人目をひくような派手なテクニックをひけらかさず、楽曲自体のよさを前面に押し出すようシンプルなアレンジがなされているが、よくよく聴きこめばそれらも、確かな技術に裏打ちされているのがわかる。
いわば、「職人芸」の一枚。
ロックとかポップスとかいった、表面的なジャンル分けなど関係なく、ともかく「グッド・ミュージック」な一枚だと思う。
ホント、いい仕事、してまっせ。
<独断評価>★★★★★