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音曲日誌「一日一曲」#226 マイティ・ジョー・ヤング「Bring It On」(Mighty Man/Blind Pig)

2023-11-13 05:46:00 | Weblog
2012年7月22日(日)

#226 マイティ・ジョー・ヤング「Bring It On」(Mighty Man/Blind Pig)





ベテラン黒人ブルースマン、マイティ・ジョー・ヤングのラスト・アルバム('97)より。ヤングの作品。

マイティ・ジョー・ヤングは27年ルイジアナ州シュリーブポート生まれ。その後ウィスコンシン州ミルウォーキーからブルースの本場シカゴに移り、ハウリン・ウルフ、オーティス・ラッシュ、マジック・サムらのバック・ミュージシャンとして活動する一方、60年代は地道にソロ・シングルをリリースしていた。

71年にようやくデルマークからアルバム・デビュー。派手な人気こそ出なかったが、実力派シンガー/ギタリストとして注目されるようになる。

70年代にいくつかのレーベルから、6枚のアルバムを出したが、80年代にはなかなか後続作品が出せず、86年、神経の病気の手術後、ギターが弾けなくなってしまう。

90年に過去のライブ音源からのアルバム、そして97年にラスト・アルバムを出し、99年にこの世を去ってしまうのだが、ギターが弾けない体になってもなお、10年以上かけてこのアルバムを完成させたというのだから、ヤングの音楽にかける情熱はハンパではない。まさに命をかけた遺作。

アルバムには10曲が収録されているが、うち3曲は手術前の録音であり、ヤング自身のギター・プレイも聴ける。残りのトラックは、ウィル・コスビーというギタリストが演奏している。

きょうの一曲「Bring It On」は、手術前のライブ音源から。彼の歌とギターの魅力を余すことなく伝えているナンバーだ。

曲はステロタイプなスロー・バラード。どこかで聴いたことがあるメロディ・ライン、あるいは歌詞なのだが、とにかく彼の歌が圧巻なのだ。

録音された時期は、おそらく彼の50代後半だろうが、30年以上のプロとしてのキャリアが、その力強く、それでいて円みのある歌声に詰まっている。

男の孤独、哀感、憂愁。そういったものを、すべて感じさせてくれる、見事な歌唱なのだ。

ギターソロのほうは、ほんのワンコーラスなのだが、これまた琴線に触れる泣きの連続で、いうことなし。

特に目先の変わったこと、難しいことをやっているわけでない。でも、オーソドックスなスタイルの中にこそ、至高のものがあるのだと、彼の歌や演奏を聴いて感じる。

この良さ、子供にゃあわかるめぇと、ついつい思ってしまうのだが、いやいやむしろ、若い衆にこそ、味わってほしいのだよ。時間をかけて熟成させた本物の美酒が、そこにはあるのだ。

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