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音盤日誌「一日一枚」#247 松岡直也「PLAY 4 YOU」(ワーナー・パイオニア WPCL-186)

2022-07-19 05:00:00 | Weblog

2004年10月24日(日)



#247 松岡直也「PLAY 4 YOU」(ワーナー・パイオニア WPCL-186)

37年生まれのベテラン・ピアニスト、松岡直也が率いるカルテットによるライヴ盤。89年12月録音、90年リリース。

その顔ぶれがスゴい。べース・高橋ゲタ夫、パーカッション・ペッカー、ドラムス・村上秀一。これぞ本邦最強のカルテット。

一般にジャズ系のノン・ヴォーカル音楽って、長時間聴くのはしんどいもんだが、彼らぐらいテクと、ノリと、センスがあるメンツなら、全くあきさせるというがない。

演奏ナンバーは、当時大ヒットした夏ものアルバムの曲を中心に、全15曲。松岡お得意のラテン・テイスト全開である。

1曲目の「A SEASON OF LOVE」、続く「ISLAND A GO-GO」はまさにその典型。

「ISLAND~」では、ゲタ夫のパティトゥッチばりの超絶6弦べース・ソロが聴きもの。

3曲目の「GRAVY WALTZ」では一転、めちゃファンキーなジャズ・ワルツを。レイ・ブラウンの作品。

メリハリの利いた松岡のタッチは、やはり絶品。

「SUNSPOT DANCE」はピアノ・ソロでしっとりとしたバラードを。哀愁に満ちたメロディがいい。

続く「NONO」も、ピアノ・ソロによる小品。会場内は静まりかえって、彼の世界にひたる。

そして、ソロの最後はエリントン・ナンバー「DO NOTHIN' TILL YOU HEAR FROM ME」を。

松岡の原点は、やっぱりこういう折り目正しくスウィンギーでパーカッシヴな音なんだなと実感。

再びコンボ演奏に戻り、オリジナルの「MYSTERY OF GALLEON」を。松岡のピアノは実によく歌う。

負けじと張り切った演奏を繰りひろげるリズム隊もいい。打楽器が2人というのは、圧倒的な迫力だな。

コンボ演奏は静謐な雰囲気の「AIRY」、ラテン色満開な「CUBAN FANTASY」と続く。

再度のピアノ・ソロ「LONG FOR THE EAST」(これって結構ヒットしていたな)を振り出しに、ステージは終盤へ。

ラテンビートからフォービートへのスイッチが印象的な「NIGHT SONG」、ここでのポンタの暴れぶりは聴きもの。

「TANGO RENGUE~TANGO ROSES~」はタイトルが示すように、サンバにタンゴのビートを融合させた超ラテンなナンバー。ここでのリズム隊のノリも、常軌を逸している(笑)。チック・コリア・バンドも真っ青。

しかしなんといっても、圧巻なのは7分半近いガレスピー・ナンバー「MANTECA」。ビ・バップであり、ラテンであり、ファンクであり、要するにワールドワイドなビート・ミュージック。生身の人間が演奏する、最もホットな音。

こんなスゴい演奏を聴かされると、大抵のポピュラー・ミュージックが甘ったるい、生ぬるい音に聴こえてしまう。罪作りだな(笑)。

アンコールに応えて、松岡のソロでまず一曲。おなじみのヒット・ナンバー「THE SEPTEMBER WIND」を。

いやー、ピアノの調べが心にしみますな。

ラスト・ナンバーは「ANDALUSIA」は、松岡の十八番的フレーズがテンコ盛りのナンバー。もちろん、チック・コリアの「SPAIN」をモロに意識してますが。中間部のソロなんてまさにそう。

ただ、ふたりを並べて論ずるのはちょっと的外れかも知れません。松岡のコリアとの大きな違いは、アーティストである前にアーティザンであることって気がします。

昔のハコバン時代の経験ゆえのものか、サービス精神がやたら旺盛で、お客に喜んでもらえるなら何だってやってしまう。彼については、そういう感じがします。

けど、筆者的には、そういうところも含めて、彼はいいミュージシャンだと思います。ゴタクを並べるより、まず現場でいい音を出す、これ以上に強力なものはないのですから。

「なんだ、流行歌の作曲家じゃんかよ~」なんていわずに、彼のプレイに虚心に耳を傾けてみて欲しいもんです。

<独断評価>★★★★



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