NEST OF BLUESMANIA

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#217 クロード・フランソワ「Comme d'habitude」

2012-05-20 09:45:15 | Weblog
#217 クロード・フランソワ「Comme d'habitude」(Best of Claude Francois/WEA)

フレンチ・ポップスのスター歌手、クロード・フランソワの代表曲。フランソワ、ジャン・ルナール、ジル・ティボーの作品。

クロード・フランソワは、日本では知名度がきわめて低いが、本国フランスでは60年代、ジョニー・アリディとならぶスーパースターだった。

「フランスのエルヴィス・プレスリー」ともよばれた肉体派ロッカーのアリディとは対照的に、ブロンド、小柄で華奢、お洒落な雰囲気をもっていたのがフランソワ。ショッキングピンクのジャケットを着こなせる男性歌手など、めったにいないだろ?

その彼の、人生最大のヒット作が、この「Comme d'habitude(いつものように)」だ。

まずは一聴願おう。誰もがすぐにこの曲の「正体」がわかるはず。

そう、フランク・シナトラをはじめとする有名歌手がこぞってレパートリーとした「マイ・ウェイ」、その曲なんである。

ポピュラー史上もっとも多くカバーされた曲ともいわれるが、代表的なところでは、シナトラ以下、英語詞を書いたポール・アンカ、プレスリー、布施明といったところがすぐに思い浮かぶ。変わりダネではセックス・ピストルズのシド・ヴィシャス、デフ・テックなんてのもある。

原曲は60年代後半に書かれたが、オリジナルの歌詞は「マイ・ウェイ」の、人生の節目に自分の来し方行く末を思い感慨にふけるといったドラマティックな内容ではなかった。どちらかといえば日常を題材とした小品。ただし、その内容はフランス的なエスプリを効かせてある。

彼の歌う映像を観れば、衣装、身振り等で、そのニュアンスはわかるのでないかな。

ただ、その歌詞内容のままにしておくにはもったいないくらいの、壮大な「ドラマ」を感じさせるメロディに、ポール・アンカが大いに触発され、新たな歌詞でまったく別の世界を作り上げた。

それくらいこの曲は、ほぼ完璧といっていいくらい、緻密に構成されている。とりわけ、サビの完成度において、おそらく、全ポップス曲のベスト5に入るといって、過言ではない。のちに小坂明子の「あなた」をはじめとする亜流を数限りなく生み出した「お手本」だった。

二十世紀を代表する二大歌手、シナトラとプレスリーがともにレパートリーとしていたのは、故なきことではないのだ。

すぐれたシンガーは、どの曲が多くの人の心を動かすことのできる「名曲」であるかを、本能的によく知っている。まさにそういうケースだと思う。

そしてそのフォローの対象となったフランソワもまた、すばらしい作曲家でありシンガーであった。

男性にしては少し高めで中性的な声が魅力のフランソワ。他のカバー・アーティストの誰とも異なる、繊細でしかも心をゆさぶる歌声を、とくと味わってほしい。

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