NEST OF BLUESMANIA

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#244 ザ・フー「Squeeze Box」

2012-12-02 09:44:38 | Weblog
#244 ザ・フー「Squeeze Box」(The Who by Numbers/Polydor)

ザ・フー、75年のアルバムより。ピート・タウンゼントの作品。

シングルカットされて英国で10位、米国で16位を記録したスマッシュ・ヒットでもあるこの曲、いかにもカントリー調な明るいメロディラインが印象的だ。一方、歌詞的にはけっこう意味深で、スクイーズ・ボックス(アコーディオンのスラング)は性行為の隠喩だったりする。

こういうあけっぴろげで能天気ともいえる曲をさらっと書いてしまうのが、フーらしいところ。同時代のライバル、ストーンズやツェッぺリンだとこんなネアカな曲は作らんよね。

以前、当サイトの「パクりの殿堂」でも指摘したのだが、メロディラインの随所に、リーバー=ストーラーの「カンザス・シティ」っぽい節回しがあって、彼らのオマージュともいえるのだろうな。

ところで、ストーンズと並んで今も現役バリバリで活躍している彼ら、オリジナル・メンバーはふたりだけとなってしまったが、そのパワフルな音は健在だ。今年のロンドン・オリンピックのフィナーレでの演奏を覚えているかたも多いだろう。

タウンゼント自身の息子やリンゴ・スターの息子など、次世代のパワーを補給することにより、伝説のウッドストックでのライブに象徴される、往時のテンションを維持できているのだと思う。

それにしても、70年代の日本ではZEPに大きく水をあけられていて、なかなか話題に上ることもなかったフーだが、セールスや人気での差はいたしかたないにしても、本当に大切な「音楽面の充実度」ということでは、けっしてひけをとっていないどころか、むしろ上回っていたんじゃないだろうか。

この3分足らずの「Squeeze Box」一曲をとってみても、イントロのアコギの響きにはじまり、切れのいいリズムギター、ソリッドなギター・ソロ、のどかなバンジョー・ソロ、そして曲のテーマであるアコーディオンの音色と、粒立ちのいい音がつまっており、さながらサウンドの万華鏡のようである。

ロックもポップ・ミュージックの1カテゴリであることをきちんと意識して、とてもわかりやすくキャッチーな歌を作ることにおいて、彼らはストーンズやZEP以上に「王道」な存在といえる。エルヴィスやビートルズの真の後継者、というと語弊があるが、ポップ・ミュージック本来の「明るさ」を持ち続けたという点において、ザ・フーはもっと評価されるべきだろう。

ブルースっぽい曲をやっても、決してベタなブルースにならないのが、ザ・フーらしいところ。クラシックを違和感なくロックに導入、融合させた功績も大きい。音楽的な懐の広さを、彼らのかつてのヒット・ナンバーに感じてほしい。

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