2023年3月5日(日)
#473 AEROSMITH「TOYS IN THE ATTIC」(Sony SRCS 9047)
米国のロック・バンド、エアロスミスのサード・アルバム。75年リリース。ジャック・ダグラスによるプロデュース。
日本盤のタイトルは「闇夜のへヴィ・ロック」。日本での人気爆発のきっかけとなった一枚だ。
エアロスミス(以下エアロ)を取り上げるのも、これで4枚目になる。
エアロは自分にとって最重要なバンドというわけではないのだが、たまにではあるがふと聴きたくなる、そういうポジションのバンドではある。
本盤も、そういう「たまに会って話をしたくなる古い友人」みたいな感じだ。
オープニングの「Toys in the Attic(邦題は闇夜のへヴィ・ロック、以下同様)」はアルバムタイトル・チューン。
邦題通りへヴィなサウンドのロック・ナンバー。スティーヴン・タイラー、ジョー・ペリーの作品。
それにしても、このアルバム・タイトルは凄いよな。原題通りに訳すと「屋根裏部屋の玩具達」だが、「そんなんじゃレコードが売れねえぜ!」とばかりの大胆な改変。
まさにレコード会社の宣伝担当者の知恵とセンスが、最大限に発揮された一例といえるだろう。
実際、このアルバム・タイトルが「屋根裏部屋の玩具達」だったら、日本であれほどブレイクしていたか、なんとも疑わしいね。ラジオで紹介する時、テンションダダ下がりだろ(笑)。
意訳、超訳も全然オッケーだった当時の洋楽プロモーション事情、面白すぎる。
「Uncle Salty(ソルティおじさん)」はタイラー、トム・ハミルトンの作品。邦題は直訳です(笑)。
どことなくエアロがアイドルとするバンド、ヤードバーズに通じる雰囲気のある、ブルース・ロック・ナンバーだ。
「Adam’s Apple(アダムのリンゴ)」はタイラーの作品。こちらも直訳邦題。
ちなみにAdam’s Appleとは喉ぼとけを意味する英語だが、曲は別に喉ぼとけのことを歌っているわけではなく、旧約聖書創世記のアダムとイブのエピソードをモチーフにした、男と女のお話である。当然か。
曲はハードなサウンドのロックンロール。ペリーとブラッド・ウィットフォードのツイン・リードが聴きものだ。
「Walk This Way(ウォーク・ディス・ウェイ)」はあまりにも有名なナンバー。タイラー、ペリーの作品。全米10位のシングル・ヒット。
75年当時、白人ロック・バンドはほとんどやっていなかった「ラップ」を大胆にフィーチャーした一曲。
のち86年にヒップホップ・グループのRun-D.M.C.がこの曲をカバーしたことで再び注目を浴び、オリジナルもリバイバル・ヒットした。
アルバムリリース当初の邦題がなんと「お説教」だったのは、知る人ぞ知る笑い話。
意訳にもほどがあるが、英語をそのままカタカナ化するよりはよっぽど分かりやすいって気もする。
一生記憶に残る、名タイトルであります。
LPのA面ラスト「Big Ten Inch Record(ビッグ10インチ・レコード)」はシャッフル・ビートが特徴的な、フレッド・ワイズマンテル作のジャズィなナンバー。
52年にR&Bシンガー、ブル・ムース・ジャクスンの歌でヒットした古ーい曲を何故取り上げたかはよくわからないが、こういう曲を好んで取り上げるあたり、ブリティッシュ・ロック好きなエアロも、なんだかんだいってアメリカ人なんだなぁと思う。
タイラーのハープ演奏が、実にハマっていてカッコいい。
「Sweet Emotion(スウィート・エモーション)」アルバムから最初にシングル・カットされて全米36位となり、エアロの米国でのブレイクのきっかけとなったナンバー。タイラー、ハミルトンの作品。
こちらにもアルバムリリース当初の邦題がある。「やりたい気持ち」だ。
こいつぁ、ちょっとヤバいよな。コンプラ的に、今は絶対無理でしょ(笑)。
でも、これ以上内容が分かりやすいタイトルなのも事実。へヴィなギター・リフの繰り返しが、クセになる一曲。
のちに、織田哲郎がこの曲を本歌取りして相川七瀬のために「スウィート・エモーション」という曲を書いている。日本のロックにも、この曲が与えた影響はハンパないのだ。
「No More No More(戻れない)」はタイラーのピアノをフィーチャーしたロックンロール・ナンバー。タイラー、ペリーの作品。
邦題がうまく曲のニュアンスを伝えている。
オーソドックスでストレートなロック・サウンドをやらせても、エアロは超一級なのがよく分かる一曲。
「Round And Round(虚空に切り離されて)」はスロー・テンポで、ひたすらへヴィなロック・ナンバー。タイラー、ウィットフォードの作品。
ブリティッシュ・ハード・ロックの影響が濃厚な、鬱っぽい一曲。邦題がスゴすぎる。
ラストの「You See Me Crying(僕を泣かせないで)」はタイラーとベーシスト、ダレン・ソロモンの作品。
再びタイラーのピアノ、そしてオーケストラをフィーチャーしたバラード・ナンバー。
「ドリーム・オン」に始まり、のちの「エンジェル」、映画「アーマゲドン」の主題歌「ミス・ア・シング」につながっていく、エアロ・バラードの典型といえる一曲。
ドラマティックな歌、そしてアレンジを楽しんでほしい。これもまた、エアロスミスなのだ。
ハード&へヴィなロック、ブルース、ラップ、ジャズ、バラードといった引き出しの多さは、エアロが単なるロック・バンドではなく、オール・アメリカン・ミュージックをカバーする、国民的ミュージシャンであることを示している。
70年の結成以来、今日に至るまでコンスタントな活動が続いているのも当然だな。
伝統と革新、このふたつをバランスをとって表現できるという意味で、彼らは最強かもしれない。
<独断評価>★★★★
米国のロック・バンド、エアロスミスのサード・アルバム。75年リリース。ジャック・ダグラスによるプロデュース。
日本盤のタイトルは「闇夜のへヴィ・ロック」。日本での人気爆発のきっかけとなった一枚だ。
エアロスミス(以下エアロ)を取り上げるのも、これで4枚目になる。
エアロは自分にとって最重要なバンドというわけではないのだが、たまにではあるがふと聴きたくなる、そういうポジションのバンドではある。
本盤も、そういう「たまに会って話をしたくなる古い友人」みたいな感じだ。
オープニングの「Toys in the Attic(邦題は闇夜のへヴィ・ロック、以下同様)」はアルバムタイトル・チューン。
邦題通りへヴィなサウンドのロック・ナンバー。スティーヴン・タイラー、ジョー・ペリーの作品。
それにしても、このアルバム・タイトルは凄いよな。原題通りに訳すと「屋根裏部屋の玩具達」だが、「そんなんじゃレコードが売れねえぜ!」とばかりの大胆な改変。
まさにレコード会社の宣伝担当者の知恵とセンスが、最大限に発揮された一例といえるだろう。
実際、このアルバム・タイトルが「屋根裏部屋の玩具達」だったら、日本であれほどブレイクしていたか、なんとも疑わしいね。ラジオで紹介する時、テンションダダ下がりだろ(笑)。
意訳、超訳も全然オッケーだった当時の洋楽プロモーション事情、面白すぎる。
「Uncle Salty(ソルティおじさん)」はタイラー、トム・ハミルトンの作品。邦題は直訳です(笑)。
どことなくエアロがアイドルとするバンド、ヤードバーズに通じる雰囲気のある、ブルース・ロック・ナンバーだ。
「Adam’s Apple(アダムのリンゴ)」はタイラーの作品。こちらも直訳邦題。
ちなみにAdam’s Appleとは喉ぼとけを意味する英語だが、曲は別に喉ぼとけのことを歌っているわけではなく、旧約聖書創世記のアダムとイブのエピソードをモチーフにした、男と女のお話である。当然か。
曲はハードなサウンドのロックンロール。ペリーとブラッド・ウィットフォードのツイン・リードが聴きものだ。
「Walk This Way(ウォーク・ディス・ウェイ)」はあまりにも有名なナンバー。タイラー、ペリーの作品。全米10位のシングル・ヒット。
75年当時、白人ロック・バンドはほとんどやっていなかった「ラップ」を大胆にフィーチャーした一曲。
のち86年にヒップホップ・グループのRun-D.M.C.がこの曲をカバーしたことで再び注目を浴び、オリジナルもリバイバル・ヒットした。
アルバムリリース当初の邦題がなんと「お説教」だったのは、知る人ぞ知る笑い話。
意訳にもほどがあるが、英語をそのままカタカナ化するよりはよっぽど分かりやすいって気もする。
一生記憶に残る、名タイトルであります。
LPのA面ラスト「Big Ten Inch Record(ビッグ10インチ・レコード)」はシャッフル・ビートが特徴的な、フレッド・ワイズマンテル作のジャズィなナンバー。
52年にR&Bシンガー、ブル・ムース・ジャクスンの歌でヒットした古ーい曲を何故取り上げたかはよくわからないが、こういう曲を好んで取り上げるあたり、ブリティッシュ・ロック好きなエアロも、なんだかんだいってアメリカ人なんだなぁと思う。
タイラーのハープ演奏が、実にハマっていてカッコいい。
「Sweet Emotion(スウィート・エモーション)」アルバムから最初にシングル・カットされて全米36位となり、エアロの米国でのブレイクのきっかけとなったナンバー。タイラー、ハミルトンの作品。
こちらにもアルバムリリース当初の邦題がある。「やりたい気持ち」だ。
こいつぁ、ちょっとヤバいよな。コンプラ的に、今は絶対無理でしょ(笑)。
でも、これ以上内容が分かりやすいタイトルなのも事実。へヴィなギター・リフの繰り返しが、クセになる一曲。
のちに、織田哲郎がこの曲を本歌取りして相川七瀬のために「スウィート・エモーション」という曲を書いている。日本のロックにも、この曲が与えた影響はハンパないのだ。
「No More No More(戻れない)」はタイラーのピアノをフィーチャーしたロックンロール・ナンバー。タイラー、ペリーの作品。
邦題がうまく曲のニュアンスを伝えている。
オーソドックスでストレートなロック・サウンドをやらせても、エアロは超一級なのがよく分かる一曲。
「Round And Round(虚空に切り離されて)」はスロー・テンポで、ひたすらへヴィなロック・ナンバー。タイラー、ウィットフォードの作品。
ブリティッシュ・ハード・ロックの影響が濃厚な、鬱っぽい一曲。邦題がスゴすぎる。
ラストの「You See Me Crying(僕を泣かせないで)」はタイラーとベーシスト、ダレン・ソロモンの作品。
再びタイラーのピアノ、そしてオーケストラをフィーチャーしたバラード・ナンバー。
「ドリーム・オン」に始まり、のちの「エンジェル」、映画「アーマゲドン」の主題歌「ミス・ア・シング」につながっていく、エアロ・バラードの典型といえる一曲。
ドラマティックな歌、そしてアレンジを楽しんでほしい。これもまた、エアロスミスなのだ。
ハード&へヴィなロック、ブルース、ラップ、ジャズ、バラードといった引き出しの多さは、エアロが単なるロック・バンドではなく、オール・アメリカン・ミュージックをカバーする、国民的ミュージシャンであることを示している。
70年の結成以来、今日に至るまでコンスタントな活動が続いているのも当然だな。
伝統と革新、このふたつをバランスをとって表現できるという意味で、彼らは最強かもしれない。
<独断評価>★★★★