2007年1月21日(日)
#345 R・L・バーンサイド「Mr. Wizard」(EPIC/SONY ESCA 6692)
2005年に79才でなくなった超ベテランブルースマン、R・L・バーンサイドのファット・ポッサムにおける三枚目のアルバム。97年リリース。
92年にファット・ポッサムでの初アルバム「Bad Luck City」を出してからのR.L.の活躍ぶりは、まことにめざましい。
96年にはジョン・スペンサー・ブルース・エクスプロージョンと共演、若い世代のファンをもガッチリつかみ、70才にして最もラジカルなブルースマンとしての道を驀進することとなる。
本作はそのジョンスペとの共演トラック2曲(M2、M7)を含む、翌年発表のアルバム。それ以外は自身の弾き語り、そしてレギュラー・バンド(ギターのケニー・ブラウン、孫のドラマー、セドリック・バーンサイド)を従えての録音である。
とにかくCDレーベルに印刷された、R.L.の呪術師然とした写真を見てほしい。怪しい、怪しすぎる!!
およそブルースとは、洗練、スマートさといったものと対極の位置にある、ゴツゴツした音楽であり、その魅力もまさにそういうところにあると筆者は思っているのだが、彼の音楽はその極致であるように思う。
ある意味単調、ウルトラ・ワンパターン。
同じリフ、同じフレーズ、同じビートを執拗に繰り返すその演奏に、ヤク中毒のごとくハマる、そういう音楽なんだと思う。ドロドロで、ちょっとヤバい。でもそれがまた快感だったりする。
ミシシッピ・フレッド・マクダウェル仕込みのカントリー・ブルースを、ビートを強化、さらにパワー・アップしたバンド・サウンド。R.L.とケニーのハードなギター・プレイは、ロック世代にも十分通用するものだ。
先日取り上げたホームシック・ジェイムズ翁もそうだったが、老いていよいよ盛んなその存在感に、聴き手は圧倒される。チャンジー・パワー、やっぱすげーわ。
「ハイウェイ・7」の、一種祭り囃子のような音の奔流に呑み込まれるのもよし、「オーヴァー・ザ・ヒル」や「ユー・ガッタ・ムーヴ」の、スライド・ギター弾き語りの、ひなびた音に浸るのもまたよし。
R.L.という男、そのスライド・ギター・プレイもさることながら、その「塩辛い」というか、枯れた中にもエグみのある声がまた魅力的だ。けっして技術的には上手いとはいえないけど、これぞブルース!って歌なんだよなあ。
ジョンスペとの共演、「アリス・メイ」が本盤のベスト・トラックかな。その緊迫したビート感覚は、すべての時代の音楽を越えて、新鮮に感じられる。
ブルースという音楽が本質的に「ラジカル」であることを認識させる一枚。怪人R.L.爺の世界にどっぷりハマってくれい。
<独断評価>★★★☆