2003年5月31日(土)
#165 スリー・ドッグ・ナイト「CAPTURED LIVE AT THE FORUM」(MCA MCAD-31342)
スリー・ドッグ・ナイトのサード・アルバム。ロサンゼルスの「ザ・フォーラム」におけるライヴを収録。69年リリース。
スリー・ドッグ・ナイトというグループ、いまやご存じでないかたも多いかも知れないが、30年ほど前の彼らの人気たるや、すさまじいものがあった。
68年、LAで結成されるや、たて続けにヒットを飛ばし、日本でも70年の「ママ・トールド・ミー」のヒットあたりから火がつき始め、一時はCCRとならぶヒットチャートの常連だった。
76年ごろまでは毎年ヒット・アルバムを出しており、77年の活動停止のニュースが、本当に残念だったものである。
彼らのユニークさは、チャック、コリー、ダニーの三人の個性的なシンガーが、それぞれリードも取る一方で、見事なハーモニーを聴かせてくれるというところにあった。
<筆者の私的ベスト3>
3位「ONE」
これはファースト・アルバム「THREE DOG NIGHT」のトップを飾っていたナンバー。彼らの初のシングルでもある。
ハリー・ニルスンの作品。彼らは後に自分たちのオリジナルも書くようにはなるが、最初はもっぱら他のアーティストのカヴァーをしていた。
緊張感あふれるイントロに続き、チャックのソロ・ヴォーカルが始まる。おヒゲのマスクとはちょっとイメージが違って、わりと高めの美声だ。
サビで三人のコーラスが炸裂。ハイ・トーンがバッチリ決まる。これぞスリー・ドッグ・ナイト・サウンド。
ニルスンの素朴な雰囲気のオリジナルにも、それなりの良さはあるが、彼らの見事な歌唱力の前にはやはりかすんでしまうね。
とにかくひたすらパワフル、ソウルフルな歌は、どう聴いてもポッと出の新人って感じじゃない。
あまり言及されることはないが、バックのタイトな演奏も実にごキゲンであります。
2位「FEELING ALRIGHT」
セカンド・アルバム「SUITABLE FOR FLAMING」(69年)のファースト・チューン。
英国の実力派バンド、「トラフィック」のナンバー。メンバー、デイヴ・メイスンの作品。
ここでのヴォーカル、コーラスも最高にソウルフル。オリジナルのスティーヴ・ウィンウッドの巧みな歌にも、もちろんヒケをとっていない。
キーボードのジミー・グリーンスプーンも、ウィンウッドとタメを張る、ファンキーでイカしたオルガンを聴かせてくれる。
白人だが黒っぽさでは黒人以上とさえ呼ばれた英米二大バンドの競作、見事であります。
当時同じく超人気をほこっていた、グランド・ファンク・レイルロードもカヴァーしている曲なので、三者三様ぶりを聴きくらべてみるのもいいかも。
本盤ではもう一曲、トラフィック・ナンバー「HEAVEN IS IN YOUR MIND」もトップでやっていて、これもコーラスがなんともカッコいいので要チェキです。
1位「TRY A LITTLE TENDERNESS」
コンサートのハイライト。コリー・ウェルズの持ち歌だったと記憶している。
日本でいえばB'Zの稲葉浩志みたいな端正な顔立ちながら、彼は意外と黒っぽい「ソウル」な声をしている。この激しいギャップがいいのかも知れない。
曲はもちろん、オーティス・レディングの持ち歌。彼らのファースト・アルバムのラスト・チューンでもある。
あとのふたりはほとんど出る幕でなく、ほぼコリーひとりの独擅場だ。
黄色い歓声の中、オルガンのバッキングに乗って、身をよじらせつつ、じっくりと歌いあげるコリー。ご本家オーティスもあの世で歯ぎしりをしてくやしがりそうな、「濃い」パフォーマンスだ。
「YOU GOTTA」の執拗な繰り返し、そしてキメの「SUCK IT TO ME」にもう、オーディエンスは狂喜乱舞状態なのがよくわかる。血沸き肉躍るとは、まさにこのこと。
これを聴いて興奮せんひと、「うるさいだけだな」なんて思うひとは、クラシックだけ聴いてなさい、そういう感じ(笑)。
音質的にはベストなコンディションではないが、この「熱さ」には圧倒されますな。
ファンキーなナンバー満載の、カヴァー選曲のセンスも二重マル。ホント、いい曲を見つける嗅覚があるよね。
未聴のかたはいうに及ばず、昔聴いたことがあるけど、何十年も聴いてないよというかたにも、おススメです。
<独断評価>★★★☆