ビールを飲みながら考えてみた…

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Sony「Google TV」発表、ネットテレビがもたらす日本メーカーの危機

2010年10月16日 | デジタル家電・iPodなど
ソニーが「Google TV」搭載のネットテレビを発表した。「GoogleTV」とは、ネットへの接続機能を搭載したAndroidベースのテレビ向けプラットフォーム。これまでのテレビがいかにもハードウェア製品です、という感じだったのに対して、この製品はCPUとしてネットブックなどにも利用取れているIntelのAtomプロセッサを採用し、OSにはAndroid、ブラウザとしてChromeを搭載し、Androidアプリをダウンロードして利用できたりと、言うなれば「PC」かiPadのような「WEB端末」といったところ。

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テレビとインターネットの融合は、これまでも様々なメーカーが取り組んできたが、正直、どれも惨敗だった。その1番の理由は既にテレビがハードウェア的にもサービス的にも自己完結的に完成された技術であったこと。もちろんこれまでも、ハイビジョン化やデジタル化といった技術的変遷はあるのだけれど、そのコンセプトは一貫している。

つまり放送局で製作された「番組」が「放送」され、それをいかに「きれいに」「効率よく」受信し、ディスプレイに映し出すか――だ。例えば今、各メーカーが取り組んでいる「3Dテレビ」などもこれと同じ文脈だといえる。

GoogleTV構想が発表された時に危惧していたのは、こうしたこれまでのテレビのコンセプトに引きずられたままインターネットとの融合をめざしたりしないかということだった。つまり同じディスプレイ上で「テレビ」と「WEB」を並列に表示できます、Youtubeが見やすくなります程度であれば、うまくいかないだろうということだ。

今回の発表を見る限り、実際にどこまでできるかはわからないけれど、とりあえずは期待大。

Googleが以前、発表したものによると、「画面上のツールバーの検索窓にキーワードを入力すると、放送中のテレビ番組や、今後放送予定の番組、録画した番組、WebサイトやWeb上の動画などを横断検索できる」、「お気に入りのテレビチャンネルやWebサイトを登録できる機能、よく見る番組やWebサイト履歴からおすすめのコンテンツを紹介するレコメンド機能も備える」とのこと。

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もう数年も前だが、テレビ向けポータルを検討していたことがある。その時に感じていたのが、やはりハードウェアベースの「テレビ」ではネット利用に限界があるということ。PCをもとにソフトウェアベースでテレビ映像とWEBブラウザを並存させ、1)テレビの受像、2)テレビの録画、3)ポータルサイトとの連携(Web検索)、4)VODサービス、5)ECサービスを1つのアプリケーションで対応させる必要があると考えた。当時はTwitterなどなく、リアルタイムコミュニケーションといえば、2ちゃんねるなどの掲示板ということもあり、ブラウザとの連携ができれば事足りたともいえる。

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結局この話は具体的には進まなかったのだけれど、その時に気を遣ったのが、「テレビ」画像上に他のものをかぶせないということ。これは、日本のテレビ業界では暗黙のルールのようなもので、例えばテレビで2in1表示を選択したとしても、1つ1つのテレビ画像の枠(長方形)が重なることは無い。

本来であれば、テレビの映像上に様々な情報を載せた方が便利だったりもするのだけれど、これは日本の慣習的にNGなのだ。

しかし今回のGoogleテレビの写真を見ると、画像の上に検索結果が表示されたりしている。これはある意味画期的。テレビ局とのつながりが深い日本の家電メーカーでは出来なかったことだろう。技術的にも、制度的・慣習的にもこうした「しがらみ」を突破できるとすると、例えばリアルタイムにニコ動風に「コメント共有」といった遊びも可能になる。画像上に他の情報をオーバーレイさせることができるだけで、いろいろなサービスが作り出せる。

またこうしたソフトウェアベース/PCのアーキテクチュアベースに切り替えることで、放送(ライブストリーミング)とYouTubeのようなVOD、録画やダウンロードを通じてローカルに保存された動画ファイルを透過的に扱うことができるというのも嬉しい話だ。

これまでだと、HDR/BDを通じて録画されたものはそのそのデバイスを通して見るし、PC上で流通してるWMVやVODサービスはPC上で見るというのが一般的。しかし最近ではYouTubeでも高品質のコンテンツが上がっているし、PCのローカルに動画ファイルを持っているというユーザーも多いだろう。

そうしたものを透過的に管理したり視聴したりできるのは非常にありがたい。ユーザーはコンテンツありき、その上で視聴環境を選ぶ。PCでしか見れないとか、テレビで見れるのはこのコンテンツだけ、というのは解決されるべき問題なのだ。

ただしこのことはちょっとイラっとくる問題を提示するかもしれない。

YouTubeなどでもそうだし、リッピングされた音楽ファイルなどもそうなのだけれど、コンテンツをアップロードした人のエンコードした環境によって映像品質や音質、解像度、明度、音量などばらつきが生じることになる。透過的にコンテンツの検索が可能になり、視聴できるようになるかもしれないが、見る映像によってハイビジョンだったり粗い画質だったり、音量調整が必要だったりする。

このあたりもソフトウェア上の処理でカバーできるといいのだが。

これらGoogleテレビはSONY以外にも、世界中のメーカーが参加していくことになるのだろうが、そうなると、日本の家電メーカーはますますポジションを失っていくかもしれない。

日本の家電メーカーがテレビ分野で世界を席巻できていたのは、ハードウェアを前提とした「技術力」の高さと「価格」。既に価格面では韓国や台湾、あるいは中国などにはかなわない。そして家電製品のデジタル化・ソフトウェア化が進めば、必ずしも日本に優位性があるわけではなく、また仮に優れた製品を開発したとしても、他社がそれに追いつくまでのリードタイムはどんどん短くなっていっている。

まして今回の技術基盤はGoogleが開発したもの、Googleにとっては様々な家電がインターネットとの親和性が高くなり、検索をはじめとしたGoogleのサービスが利用され、結果、収入があがればそれでいい。テレビを供給するのはどこのメーカーであろうと関係ない。Androidのように無償供与、安価に供与されれば、世界中のメーカーがいきなり新しいスタートラインから競争を始めることになる。しかも今回は、基盤が出来上がっている分、「価格競争」になりやすい。

もちろんSONY以外の日本メーカーも手をこまねいているわけではないのだろうが、「3D」「クアトロン(これはこれで凄い!)」といった「テレビ受像機」としての本道の部分にばかり技術者の意識がいっている気がする。もちろんこれらは必要な要素であり、「Google TV」登場後も差別化要素にはなるのだけれど、これからの利用者が期待するのは、Google TVのようなネットとの親和性、そしてネットを通じて手に入れられるコンテンツやサービスと「テレビ放送」とを一体となって楽しめる環境なのだろう。

競争の軸に変化が生じようとしているのだ。そのことに日本の技術者は応えることができるのだろうか。

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