世界中で人気の高いドイツの陶磁器ブランド、マイセンが制作した動物作品の数々を紹介する
「マイセン動物展」が東京・新橋のパナソニック汐留美術館で開催されています
展覧会概要
ヨーロッパ初の硬質磁器製造に成功し1710年に王立磁器製作所設立を布告したドイツのマイセン磁器製作所。
19世紀後半から20世紀初頭にかけてヨーロッパの美術工芸界で流行したアール・ヌーヴォー様式は
マイセンにも影響を与え、カップ&ソーサーから彫像にいたるまで幅広く取り入れられました。
また同時期のマイセンでは、釉薬の下に絵付けする釉下彩や釉薬の上から描いた絵の具を沈みこませる釉中彩
といった技法が多用されるようになり、淡く繊細な色調の作品が作られていきました。
一方、動物をモチーフとした美術作品は時代や地域を問わず制作されてきましたが、
それらは何かを象徴するために描かれたり成形されたりするものもあれば、
そのもの自身の愛らしさを伝えるために制作されるものなど様々で、マイセンでも同様でした。
とりわけアール・ヌーヴォー期の動物作品は、模様から表情まで、
動物のしなやかさを表現することに成功し、リアルさと愛らしさを見事に両立させたのでした。
本展では、そのようなアール・ヌーヴォー期の作品を中心に構成しています。
磁器や炻器に加え、カタログなどの資料類も展示し、新しいアプローチでマイセンの造形と装飾をたどります。
会期 2019年7月6日(土)〜9月23日(月・祝)
場所 パナソニック汐留美術館 アクセス
第 1 章 神話と寓話の中の動物
西洋美術には神話や寓話を主題とした作品が多くあります。
それは絵画や彫刻などファインアートだけでなく陶磁器など工芸分野でも連綿と引き継がれてきました。
第1章ではマイセン磁器で表現された神話と寓話をモチーフとした作品をご紹介します。
人間を風刺した《猿の楽団》やアメリカ大陸発見により各地域への異国への憧憬をうながす
《四大陸》などにおける動物が磁器で表現された様をご覧いただけます。
(鑑賞順に投稿しています、字数の関係で説明は省略しています)
女性立像「五感の寓意(視覚)」
神話人物群像 「ヒッポカンボスの引く凱旋車に乗るネプトゥヌス」
神話人物群像「アンフィトリテの勝利」
4人の女性の姿で表現される四大陸の寓話は
17世紀以降の美術の分野で広く用いられたテーマである。
女性像「四大陸の寓意(アジア)」
「アジア」は香料が東方由来のため香炉を持ちラクダを従えて
女性像「四大陸の寓意(アメリカ)」
「アメリカ」は、先住民にちなみ、羽根飾りを被り ワニの一種であるカイマンを従えている
女性像「四大陸の寓意(アフリカ)」
「アフリカ」は象の首を被りライオンを従えている
女性像「四大陸の寓意(ヨーロッパ)」
「ヨーロッパ」は世界の女王として冠を被り馬を従える
山羊に乗る仕立て屋
山羊に乗る仕立て屋(女性はハサミをかざしています)
「猿の楽団」連作の初作は1747年頃ケンドラーたちによって完成したが、
1765-66年にケンドラーとライニッケが改訂版の原型を作制、本作はその改訂版に基づき作成された。
ケンドラーは、1740年頃フランスの画家ゲラールが制作した連作版画「人間の生活を営む猿たち」から
着想を得たと推察され、マイセンでは今なお人気のシリーズである。
猿の楽団 ヨハン・ヨアヒム・ケンドラー、ペーター・ライニッケ 1820~1920年頃 個人蔵
自然界を形成する基本要素である四大元素を擬人化した水差し
「地」は女神ケレス 「空気」は女神ヘラ 「火」は火山による山火事 「水」は海神ネプトゥヌス
人物像水注「四大元素の寓意(地)」
人物像水注「四大元素の寓意(空気)」
人物像水注「四大元素の寓意(火)」
人物像水注「四大元素の寓意(水)」
神話人物像「牡鹿の引く凱旋車に乗るディアナ」
ライオンヘッド両手付飾壺
プット立像「昼と夜の寓意」
藍地ポプリポット「騎馬人物図」
花鳥飾プット像シャンデリア
↓
床の鏡に映って
ドイツのマイセン磁器製作所
第 2 章 器に表された動物
マイセンなどヨーロッパの陶磁器工房ではいわゆる器にも動物装飾は用いられています。
それらは描かれたり彫刻として付加されたり様々な形で表され愛らしさを添えています。
またたくさんの小花彫刻を貼り付けて磁胎を装飾するいわゆる「スノーボール」は
マイセンを代表するシリーズのひとつであり愛好家も多く存在します。
スノーボールは徐々に鳥類の彫刻が付加され自然主義的要素が濃くなっていきました。
第2章ではスノーボール作品を中心に、器の形態のマイセン作品に表された動物たちをご紹介します。
昆虫鳥図柄(1763-1773年頃)
「スノーボール 」はマイセンを代表する貼花装飾のひとつ
18世紀前半にケンドラーがコーヒーとティーのセルヴィスに用いたのが最初とされる
白く丸い花が集合した球体に鳥などが加えられた装飾には多くの愛好家が存在する
「スノーボール貼花装飾カナリア付きカップアンドソーサー」(1820-1920年頃)
スノーボール貼花装飾蓋付昆虫鳥付透かし壺
ヨハン・ヨアヒム・ケンドラー 1820~1920年頃 個人蔵
ヴァトー風恋人図ポプリポット
第 3 章 アール・ヌーヴォーの動物
19世紀末から20世紀初頭にかけ、ヨーロッパの美術工芸界では
アール・ヌーヴォー(ドイツ語圏ではユーゲント・シュティール)と呼ばれる様式が流行しました。
これは曲線の多用に代表される有機的なフォルムを特徴とした様式で、マイセンでも取り入れられました。
そしてこの曲線を生かすためにマイセンでは色彩部分でイングレイズという技法を導入しました。
これは釉薬の中に絵具を染み込ませ閉じ込める技法で、
柔らかな見た目と磁胎と釉薬に挟まれたことによる定着性が特徴と言えるでしょう。
第3章ではその柔らかい色合いを生かし表現された犬や猫、ペンギンといった動物たちの表情をご覧いただけます。
19世紀後半のマイセンでは、犬同様猫の小型彫像も製作された。
猫のしなやかさや柔らかい毛の質感を表現するのに釉薬に絵の具を染み込ませる技法イングレイズが生きていて、
本作でも猫の愛らしさがよりよく伝わってくる。
子猫
「二匹の猫」 オットー・ピルツ 1934~1940年頃 個人蔵
食する子猫
野生大型ネコ科動物のスケッチ
シルバーフォックス?
「カワウソ」 マックス・エッサー1927年
アール・デコ様式の名手、マックス・エッサーの手によるこの作品は、1937年のパリ万博でグランプリを受賞したモデルである。
立ち上がり後ろを振り返るカワウソの動きを捉えた描写とつややかな体表が目を惹く逸品。
↓
製作中のカワウソ
第 4 章 マックス・エッサーの動物
マックス・エッサーは1920~30年代のマイセンでモデラーとして活躍した彫刻家です。
マイセンにおけるアール・デコ様式を確立した一人ですが、
とりわけベッドガー炻器で制作した動物彫刻が彼の名を知らしめた作品群と言えるでしょう。
第4章ではエッサーによるベッドガー炻器や磁器による動物に加え、エッサーに影響を受けた成型師による動物彫刻を展示します。
ゲーテの叙情詩「ライネケ狐」を磁器彫刻で表現した作品。
物語はは動物王国で暮らすキツネ、「ライネケ」を主人公とした風物詩。
過激な装飾を廃し絶妙な直線による合理的な形態は、マイセンのアール・デコ様式を代表する作品。
「ライネケのキツネ」 マックス・エッサー 1924~1934年頃 個人蔵
騎乗用ヒトコブラクダ
オラウータンのマスク
東京2020オリンピック・パラリンピックはあと何日(パナソニック汐留美術館内より)
参考資料:パナソニック汐留美術館 出品リスト
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