温かい昼下がりです
東京新聞の片隅にサンデー版300字小説最優秀賞の記事が載っていた
ニャンとの「不思議な関係」に目に留まった記事だった、、
300字とはなかなか良いですね、ちょっと川柳に色づけができる、、、
いかにシンプルに表現できるか、洗練された文士も必ずここを通ったはず
TOKYO Webをあけて読んだが、優秀賞もなかなか面白い
転載ですが、お時間ある方はどうぞ (+o+)
イラスト・瀬崎修 |
<最優秀賞>不思議な関係 竹内英子
暖かなある春の日、真っ白な猫がわが家の庭を横切っていった。
はじめは五日おきくらいに来て、私は不法侵入する猫を「コラ!」と一喝していた。
猫は「何だよ」と言わんばかりに私を睨(にら)みつけ平然と立ち去るのだった。
そのうち何が気に入ったのか猫は頻繁に現れるようになり、どうやら散歩道としたようである。
私も会えば「こんにちは」と声をかけるようになったが、
猫は「フン」と素知らぬ顔をするばかりで一年が過ぎた。
春一番が吹いた日、私が風邪で寝ていると、窓の外に真っ白な猫が歩いてくるのが見えた。
猫は私と目が合うとチョコンと座り、「大丈夫か?」と言うように短い尻尾を振った。
(愛知県豊橋市・主婦・71歳)
◇ ◇ ◇ ◇
<優秀賞>防災教育 植村茂己
昨今、自然災害は大規模かつ頻繁に発生するようになってきた。
各地で防災教育が盛んに行われるようになり、
自宅付近でも「災害に対する備え」をテーマとした教室があったので私も参加してみることにした。
冒頭、講師が、「『天災は○○○○やってくる』と言いますが、○○○○が分かる人?」
と私たちに聞いてきた。
すると、ある子どもが、「『毎年毎年』です」と答えた。
別の子どもは、「『次から次に』です」
さらに、もう一人の子どもが、「『想定外で』です」と答えた。
それぞれ「なるほど」と思ったが、最近物忘れが激しくなった私にとっては、
今でも「忘れた頃に」が適当な言葉だなぁと思いつつ、災害と物忘れの備えに着手すると決意した。
(東京都足立区・公務員・55歳)
◇ ◇ ◇ ◇
<優秀賞>若返りの湯 尾崎真人
ある山奥に、「若返りの湯」と呼ばれる秘湯があった。
男はその効能を確かめようと、近くにテントを張った。
試みに猿を湯に入れてみた。一時間後、猿は子猿になっていた。
驚いた男は、次々と試してみた。
カエルを入れたらオタマジャクシになった。
トンボを入れたらヤゴになった。
枯れ葉さえ、若葉になった。
男は近くの村から一羽のニワトリを買ってきた。早速、若返りの湯に入れてみる。
一時間後、ニワトリはヒヨコになった。
男はヒヨコをさらに湯に入れてみた。一時間後、ヒヨコはタマゴになった。
男の好奇心は止まらない。
タマゴを一時間、湯に入れてみた。
タマゴは…温泉タマゴになった。
(東京都板橋区・会社員・48歳)
◇ ◇ ◇ ◇
<優秀賞>見惚れる 池田東正
天高く風爽やか、絶好の稲刈り日和だ。
祖母(ばあ)ちゃんを筆頭に、子、孫、曾孫(ひまご)が勢揃(せいぞろ)いして、
稲刈りが始まった。
ガチャン! 機械が壊れた。
人海戦術だ。
八十八の祖母ちゃんが、「私もやる」。皆が止めるのも聞かずに歩み出す。
すかさず長女が手をとり、稲の前へ誘う。
鎌が光った。サクッと小気味よく刈り取る。
パキッと縛る藁(わら)に折り目をいれる。
稲束をブルンと回せば、ギュッと締まる。
サクッ、パキッ、ブルン…無駄なく、力まず、堅調に…サクッ、パキッ、ブルン!
錦織りなす山裾に、稲束が舞う。
祖母ちゃんが舞っている。艶やかな日舞の舞台が現れた。
「祖母ちゃん、キレイだぁ!」
(愛知県岡崎市・無職・74歳)
※行替えは、ブログで読みやすいように勝手に変えました(すみません)
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