すちゃらかな日常 松岡美樹

サッカーとネット、音楽、社会問題をすちゃらかな視点で見ます。

【プレミアリーグ 23/24 第12節】遠藤航はオン・ザ・ボールを磨け ~リヴァプール 3-0 ブレントフォード

2023-11-14 05:04:37 | イングランド・プレミアリーグ
頻繁に起こるボールロストをなくしたい

 現地時間11月12日にプレミアリーグ第12節が行われ、リヴァプールとブレントフォードが対戦した。試合はリバプールが3ゴールを上げて勝利した。遠藤航がアンカーで先発フル出場した。

 ひさしぶりにプレミアリーグで先発した遠藤は、まずまず無難にプレーした。ただし4分と14分、37分に、そう難しくない場面でボールロストをしたほか、退場もののラフプレーをするなど課題も露わになった。

 この試合はボールが落ち着かないゲームだった。ブレントフォードは2-4-4でビルドアップするが、リバプールがボールを保持すると5-3-2で自陣にブロックを敷いて待ち構えた。そんな試合が動いたのは39分だった。

 ボックス内で縦パスを受けたCFダルウィン・ヌニェスが、右にいたサラーに横パスを出す。受けたサラーはきっちり枠内にシュートを決めた。先制点だ。このあとサラーとジョタが1点づつを取り、3-0でレッズが完勝した。

 リバプールのフォーメーションはいつもの4-1-2-3だ。スタメンはGKがアリソン。最終ラインは右からトレント・アレクサンダーアーノルド、ジョエル・マティプ、ファン・ダイク、コスタス・ツィミカスだ。

 アンカーは遠藤。右インサイドハーフはドミニク・ソボスライ、左インサイドハーフはコーディ・ガクポ。3トップは右からサラー、ヌニェス、ディオゴ・ジョタだ。

オン・ザ・ボールでバタつく

 この試合の遠藤は(3回のボールロストを除けば)そう目立った大きなミスもなく、破綻なくこなしていた。まずまずだった。ただし安定感があったとは言えない。

 例えばボールをトラップしようとして大きく弾いてしまい、そのため結果的に敵と競り合いになって仕方なくファウルしてしまったりしていた。

 例えば55分のシーンなどは象徴的だ。彼はボールを収めようとしてコントロールミスし、奪われそうになって出した足がブレントフォードのMFクリスティアン・ノアゴーの膝に当たった。これはレッドカードかどうかVARで検証されたが、ノーカウントで終わり助かった。

 こんなふうにオン・ザ・ボールのときの遠藤はけっこうバタバタしており、どうも危なっかしい。今にもミスしそうだった。そんなふうだから「パスの受け手はどこにボールが欲しいか?」などを考えた上でパス出ししているようには見えない。

 また遠藤のパスは他人に預ける無難なパスばかりで、マクアリスターのような「試合を決めてしまう」ような決定的なキーパスがないのが物足りなく感じる。

 ただしこれはあくまでライバルのマクアリスターとくらべればの話だ。遠藤のポジションはあくまでアンカーなので、求められるパス出しは組み立ての第一歩になるシンプルなボールだろう。ゆえに現状でも特に問題はない。

競り合いで敵の足を踏むクセをなくせ

 もうひとつ遠藤のプレイで気になったのは、競り合いの時に相手の足を踏んでしまうことが多い点だ。現にこの試合でもやっていた。

 また11月10日に行われたヨーロッパリーグ第4節のトゥールーズ戦でも、退場の可能性のある彼のプレイが論議を呼んだ。一方、このブレントフォード戦では見逃されてラッキーだったというしかない。

 まとめれば、やはり遠藤はプレミアリーグに慣れるのにまだ時間がかかりそうだ。

 この試合ではふだんアンカーを務めるマクアリスターが出場停止だったため遠藤が出たが、これが例えばビッグ6のチームが相手ならクロップは遠藤をスタメン出場させただろうか?

 結論として、遠藤はまだしばらく慣らし運転が必要だろう。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【ラ・リーガ 23/24 第13節】なぜ久保は輝けなかったのか? ~アルメリア 1-3 レアル・ソシエダ

2023-11-13 05:12:05 | その他の欧州サッカー
レギュラー陣と控え組の力の差がモロに出た

 現地時間11月11日にラ・リーガ第13節が行われ、アウェイのレアル・ソシエダはアルメリアに3対1で勝利した。この試合、久保健英はターンオーバーで後半からの出場になった。

 というのも、レアル・ソシエダは欧州チャンピオンズリーグのグループD・第4節のベンフィカ戦を終えて中2日しか経ってなかったからだ。

 ゆえにこの日のスタメンはミケル・メリーノやブライス・メンデスらが並ぶいつものメンバーとは違い、ベニャト・トゥリエンテスやアルセン・ザハリャン、ウマル・サディクらがスタートから出場していた。

 そのためラ・レアルは例によってレギュラー陣と控え組の力の差が大きくあらわになり、控えメンバーが出た前半はまるでいいところがなくノーゴールでハーフタイムを迎えていた。

久保のいる右サイドが犠牲になった

 そして後半になって、久保は左インサイドハーフのミケル・メリーノとともに頭から途中出場した。だが久保はわずかにセットプレイで得点に絡んだだけで、ほとんど輝けなかった。

 それはなぜか?

 いつもは久保と右サイドでコンビを組む右インサイドハーフのブライス・メンデスがこの日は欠場し、ベンチ入りさえしてなかったからだ。代わりに右インサイドハーフはトゥリエンテスが務めていた。

 だがそのトゥリエンテスは、レギュラー組のブライス・メンデスとは段違いに力が劣る。で、必然的にボールは久保のいる右サイドではなく、左インサイドハーフのミケル・メリーノを軸に左サイドで回ることになった。

 そのため右サイドの久保はボールタッチ自体が非常に少なく、ほとんど試合に入れなかった。これは久保がダメだったのではなく、組み合わせの問題だ。

 ラ・レアル名物の、スタメン組と控え組の力の差が如実に出る現象のおかげで、久保のいる右サイドが犠牲になったのである。

果たして彼らは今季を無事に終えられるのか?

 この試合は3ゴールを奪ってひとまず勝ったものの、ソシエダの選手層の薄さは本当に深刻だ。ラ・リーガとチャンピオンズリーグを掛け持ちする地獄の今シーズン、果たして彼らは良い成績を収められるのだろうか?

 いまのところはなんとか健闘しているが、これが長く続くとはとても思えない。

 過密日程で今後もローテーションを組むことが必至になるだけに、この試合で起こったような変調はまた何度も起こる可能性がある。彼らの行く末が心配される。

 とりあえずは現ラインナップで凌いだとしても、しかるべき時期にしかるべき新戦力を補強しない限り、同じことは必ずまた起こるだろう。

 しかもただでさえ、ブライス・メンデスやミケル・メリーノら主力組には移籍のウワサが絶えないのだ。もし彼らがビッグクラブに引き抜かれでもすれば、ラ・レアルはまさに一巻の終わり。泥船化して万事休すだ。

久保はプレミアリーグ上位へ行くべきだ

 とすれば久保は早晩、もっと選手層の厚い上位クラブに移籍せざるを得なくなるだろう。ならば個人的には、ウワサされているレアル・マドリーなどではなく、プレミアリーグの上位クラブへ行くことをおすすめしておく。

 スペイン語が通じる居心地のいいマドリーへ行ってナアナアで「井の中の蛙」になるのではなく、世界中から「化け物たち」が集まりしのぎを削る世界一のプレミアリーグで切磋琢磨したほうが若い久保のためになる。

 これだけはまちがいない。

 要は「スペイン一」をめざすのか? それとも「世界一」をめざすのか? の違いだ。

 ややもすればストイックさに欠け慢心してしまいがちな久保は、環境を厳しくして自分であえてハードルを上げたほうが努力するようになる。

 マドリーへ行きそれで満足してしまうのではなく、後者を選んで難関に挑み「自分にはまだまだ足りないところがある」と自覚して自己改革を続けたほうが、まだまだ伸びしろのある久保にはふさわしい。後者を選べば、彼はまだグンと成長する。うけあいだ。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【CL 23/24 E組 第4節】鎌田がレギュラーを取れないのは不当か? ~ラツィオ 1-0 フェイエノールト

2023-11-12 05:40:07 | CL/EL/EURO(世界規模のサッカーリーグ)
ハイライン・ハイプレスが超絶的だった

 現地時間11月7日に欧州チャンピオンズリーグの第4節が行われ、ラツィオとフェイエノールトが対戦した。試合は1-0でホームのラツィオが競り勝った。右インサイドハーフでスタメン出場した鎌田大地がレギュラー獲りに雄々しく名乗りを上げた。
 
 地味だが、非常に戦術的な醍醐味のあるゲームだった。フェイエノールトの最終ラインがボールを保持したビルドアップ時、ラツィオはハーフウェイラインのすぐ手前に超ハイラインを設定し、なんと前の7枚が敵陣へ入って総がかりでハイプレスをかけた。

 第一陣は4枚、それをプッシュアップする第二陣が3枚だ。この前からの強い圧力に前半のフェイエノールトは苦しみ、ビルドアップの精度を欠いた。

 それでも次第にフェイエノールトはボランチをうまく使ってボールの逃げ道を作り、ラツィオの圧から逃れるようにはなった。だが肝心のゴールを奪うまでには至らなかった。

 かくて前半46分にラツィオのFWチーロ・インモービレがボックス内へ侵入し、ゴール右の角度のない所から素晴らしいゴラッソを叩き込んだ。鎌田はこのとき、きっちりゴール前に詰めてこぼれ球に備えていた。見えないファインプレーだ。

 さて、これでラツィオの勝利は決まった。彼らはこの試合をものにしたことで、2勝1分けのグループ2位となり決勝トーナメント圏内に浮上した。

鎌田は「可もなく不可もなく」だったか?

 では本題である鎌田の話に移ろう。

 この試合における各メディアの鎌田に対する評価は、おおむね「可もなく不可もなく」レベルだった。だが個人的にはまったく解せない。

 鎌田は運動量も多く、守ってはよくプレスをかけ、攻めては攻撃の起点になる重要なパスを何度も展開していた。

 一方、鉄板のレギュラーだとされる左インサイドハーフのルイス・アルベルトはフィジカルが弱く、案外ボールをロストしていた。この試合での鎌田は彼よりデキがよかった。

よさがわかりにくい鎌田大地

 そんな鎌田という選手は、よさが非常にわかりにくい選手である。例えば一見してそれとわかるダイナミックなエネルギー感でもあればわかりやすいが、鎌田はそれとはまったく対極にあるタイプだ。

 逆に、彼はいい意味でカラダの力がすっかり抜けており、決して力まずひょうひょうと軽やかにプレイする。そのサマはまるで道を究めた剣の達人のようだ。

 そんな鎌田のプレイを見て、「躍動感やエネルギー感がないぞ。なんだか気力がなさそうに見えるな。この選手はいったいどこがいいのだろうか?」と疑問に思う人もいるのではないだろうか? そう、鎌田はよさがわかりにくいのだ。だから損をする。

 反対に同じ右インサイドハーフのライバルであるゲンドゥージなどは、プレイに躍動感やエネルギー感があり、一見して「いい!」と感じる。観る者にわかりやすいよさがある。鎌田とは好対照だ。だが、実はどちらもいい選手なのだ。

サッリの戦術さえ十分に理解すればチャンスはある

 そこで疑問に思うのは、鉄板のレギュラーだとされている左インサイドハーフのルイス・アルベルトである。彼はどちらかといえば鎌田と同じで、わかりやすい躍動感やエネルギー感はない。しかもこの試合を観ればわかる通り、案外、重要な場面でボールロストしたりもしている。

 もちろん彼の技術が高いのはわかるが、それにしてもなぜこの選手が「絶対の鉄板」なのだろう? とも感じる……。だがズバリ、鎌田との違いは、彼の過去の長年のラツィオでの実績とチームで果たす役割だ。

 ルイス・アルベルトは2016年から7年間もラツィオに在籍し、その間、セリエA月間最優秀選手賞を取るなどの活躍をしてきた。そしてサッリの着任以来、彼の右腕であり続けてきた。

 要するにルイス・アルベルトが絶対的だとされているのはそうした継続的なチーム内での実績と、サッリ特有のユニークな戦術「サッリ・ボール」を誰よりもよく理解し実践しているからだ。

 とすれば技術面では決して彼に劣らない鎌田がレギュラーを獲るには、少し長い目で見てサッリの戦術をしっかり理解すればいいだけの話だ。そうすれば彼の持つ高い技術がますます生きてくる。こう考えれば、鎌田のレギュラー獲りはそれほど遠い日のことではないかもしれない。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【EL 23/24 B組 第4節】三笘は明らかに疲れている ~アヤックス 0-2 ブライトン

2023-11-11 07:00:38 | CL/EL/EURO(世界規模のサッカーリーグ)
PLとELの掛け持ちでチームは疲労困憊だ

 現地時間11月9日にヨーロッパリーグのグループB・第4節が行われ、アヤックスとブライトンが対戦した。アウェイのブライトンがアンス・ファティとサイモン・アディングラのゴールで2点を取って勝ち切った。

 特にファティは、1ゴール1アシストの活躍だ。しかもチームはこれで2勝1分けで、決勝トーナメント進出圏内の2位になる大きな勝利をあげた。

 一方のアヤックスは対照的に、0勝2分けのグループ最下位だ。暗いどん底の淵にいる。

 彼らは第1節の強豪マルセイユ戦では、非常にエキサイティングなサッカーで息詰まるシーソーゲームを演じて見せた。結果は3-3の引き分けに終わったが、見ごたえ充分だった。だがその後は1勝もできず浮上の気配がない。

 かたやブライトンも勝ったとはいえ、ケガ人続出でこの試合もデキはいまいちだった。左SBでスタメン出場したジェームズ・ミルナーはあっという間にケガで交代してしまったし、DFルイス・ダンクも負傷して前半でベンチに下がった。

 またケガ明けのペルビス・エストゥピニャンが後半から出場したが、またも故障し試合から退場した。彼ら選手たちはプレミアリーグとリーグカップ、ヨーロッパリーグを掛け持ちし、過密日程で四苦八苦なのだ。

キレがなかった三笘

 なかでも特に三笘薫は、明らかに疲れていた。得意のドリブルは冴えず、途中でブロックされてしまう。インテンシティも低い。大部分、試合から消えていた。

 目立ったシーンといえば、68分にペナルティエリア内から一度シュートを放った場面ぐらいだった。ちなみに彼はフル出場している。

 三笘もプレミアリーグとリーグカップ、ヨーロッパリーグにフル回転で「全試合出場」しており疲労困憊している。そのうち壊れるだろう。

 なのに彼は今度はW杯アジア2次予選に駆り出され、日本とはレベルが段違いに低いミャンマーやシリアと戦わなければならないのだ(国内組でも勝てるにもかかわらず)。

 本人からすれば、たまったもんじゃないだろう。だが口が裂けてもそんなことは言えない。

 願わくば、くれぐれもケガだけはないよう祈りたい。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【CL 23/24 D組 第4節】久保の存在が敵のゾーンを歪ませる ~レアル・ソシエダ 3-1 ベンフィカ

2023-11-10 05:14:27 | CL/EL/EURO(世界規模のサッカーリーグ)
ベンフィカは完全に崩壊していた

 例によって「久保健英が凄かった!」という記事があふれていたので、試しに試合を観た。するとベンフィカが完全に崩壊しており、まったくサッカーになってない。おもしろくもなんともないゲームだった。

 ベンフィカの最終ラインが押し上げてゾーンを圧縮せず、ラ・レアルにスペースをやりすぎた。彼らにスペースを与えると、こういうとんでもないことになる。

 久保の個人技を楽しみたい人にはこたえられないが、拮抗した試合全体のおもしろさを観たい人にとってはまるで無意味なゲームだった。「あっ」という間に20分間で3点入ってゲームは終わった。で、ソシエダの決勝トーナメント進出が決まった。

 ただし、さらに踏み込んで深く思考してみると、ベンフィカが崩壊していたのは実は彼らが「ダメなチーム」だったわけではなく久保がベンフィカを「壊した」のだと考えると非常に興味深いことが見えてくる。

 すなわち久保が巻き起こす「珍現象」だ。

久保がマーカーを引きつけ敵のゾーンを偏らせる

 この試合、久保が右サイドでボールを持ってドリブルを始めると、ベンフィカの3枚のマーカーがそれに引っ張られた。で、この状態で久保は敵を引きつけながら縦にドリブルする。すると何が起こるか?

 ベンフィカの全体のゾーンが右方に引っ張られて偏りができる。

 つまり右に引き付けられて左サイドが空く。この状態でボールを逆サイドにサイドチェンジすれば、逆サイドにいる左WGのバレネチェアや左IHのミケル・メリーノらがフリーになっており彼らがおもしろいようにゴールを決めることができるのだ。

 つまり右サイドにいる久保のドリブルがベンフィカのゾーン全体を右へ引っ張り、左サイドにスペースができる。そのため左にいるバレネチェアやミケル・メリーノらがフリーでボールをもらえるわけだ。

 この久保が作り出す「久保システム」は非常に有効だ。

 日本代表でも使えるかもしれない。

 例えば右サイドで久保がドリブルしマーカーを数人引き付ける。すると逆サイドの三笘がフリーになる。で、サイドチェンジすれば三笘のゴールが簡単に生まれるーー。

 そんな「怪現象」が日本代表でも観られるかもしれない。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【日本代表メンバー発表】ガチのメンバーを選んだ森保監督の「愚」

2023-11-09 08:50:57 | サッカー日本代表
改革の意思がない監督とそれを擁護するサッカーメディア

 きのう行われた2026年北中米W杯・アジア2次予選の代表メンバー発表記者会見が、「やれやれ」なことになっていた。

 ちなみに私はこの会見が開かれる直前に書いたブログ記事で、「欧州チャンピオンズリーグやヨーロッパリーグ等と日程が重なり過密日程になるアジア2次予選をきっかけに、日本代表はAチームとBチームを作るべきだ」と唱えた。

 そして対戦相手が日本とは大きくレベルの劣るアジア2次予選では、「国内組を主体としたBチームで臨むべきだ」と提案した。過密日程を避けて選手の消耗やケガを防ぐと同時に、将来の若い日本代表選手を育てるためだ。一石二鳥である。

森保監督が「2次予選は甘くない」と反論する論拠は?

 すると、私の案とは相反して誰でも想像がつくガチなメンバーを発表した森保監督は、会見の席上、「2次予選はそんなに甘くない」と主張した。

 そして「なぜ甘くないか?」を裏付ける傍証として2つの過去のケースをあげた。ひとつは次の通り、前回の予選におけるミャンマー戦での話だ。

「カタール・ワールドカップの予選の際も、ホームのミャンマー戦は10点取ったが、アウェーのミャンマー戦では2点しか取れなかった」

 そして傍証の第二点として「アルベルト・ザッケローニ監督時代のアジア3次予選では、3勝1分け2敗という結果だった」という逸話を語った。

 だから「2次予選は甘くないんだ」というわけだ。

まったく別のチームを例に挙げるのは論理が破綻している

 では、わかりやすい2点目の論拠から反論しよう。いやいや、「ザッケローニ監督時代の予選では〇〇だった」などと、今とはまったく別のチームを例に挙げて「だから2次予選は甘くないんだ」などと論述しても根拠になってない。

 だって、それは今とはまるでレベルが違う別のチームのお話なのだから。

 では続けて森保監督が傍証として挙げた一点目の論拠へ行こう。繰り返しになるが、それはこういうお話だ。

「カタール・ワールドカップの予選のときもホームのミャンマー戦は10点取ったが、アウェーのミャンマー戦では2点しか取れなかった。ゆえに、2次予選は甘くないのだ」

 いやいやカタールW杯における日本代表は、典型的な「カウンターのチーム」だった。だがその後、久保健英が台頭し彼がトップ下でゲームを作れるようになった今の日本代表は、例えば「ポゼッションでも勝てる」だろう。

 つまり今の代表はカタールW杯における日本代表とは、まったく別のチームになっているわけだ。

今の冨安と遠藤、守田は「神レベル」だ

 いや久保だけじゃない。今の代表にはカタールW杯当時にはいなかった、強力な右SBの菅原由勢もいる。それに冨安だって、カタールW杯当時とくらべれば格段に進歩した。いまや冨安はアーセナルで「神レベル」だ。

 それだけじゃない。

 遠藤航と守田英正のボランチ・コンビにしても、カタールW杯当時とくらべればもはや「別のコンビ」に進化したと言っていい。それとも森保監督は今年10月17日に行われ、日本が圧勝したあのチュニジア代表戦での遠藤と守田、冨安の3人のプレーぶりを見ておられないのだろうか?

 いやいや、そんなわけはない。なにしろ現に森保監督ご自身が、あの試合を指揮しておられたのだから。

ポストプレイでひと皮むけて進化した浅野

 おまけに森保監督のイチのお弟子さんでもあるFWの浅野拓磨も、10月シリーズのカナダ戦では「今まで彼が一度も見せたことがなかった」ような見事なポストプレーをしていた。

 そんな浅野は、カタールW杯当時から長足の進歩を遂げたといえる。それとも森保監督は、「いや浅野はまったく進歩していない」とでもおっしゃるのだろうか?

 こんなふうに要素を上げて行くと、カタールW杯当時と今の代表とではレベルやスタイルがまったく別のチームになっていることがわかる。

 にもかかわらず森保監督はカタールW杯予選当時の日本代表のケースを例に挙げ、「アウェーのミャンマー戦では2点しか取れなかった。だから2次予選は甘くないんだ」などと、ヘンちくりんな例示をなさっている。

 いや、それは今とはすっかり別のチームだった過去の時代のお話だ。挙げる例示や傍証が論拠になっていない。論理が破綻している。

 なぜなら問題は、「今の代表はどうなのか?」なのだから。

炭鉱のカナリアは鳴かない

 しかも笑ってしまうのは、森保監督が記者会見の壇上でこんな「トンデモ理論」を開陳しているのに、その会見に詰めかけたメディア陣からまったく異論が出なかった点だ。

 いや、森保監督に反論しなかっただけじゃない。森保監督とナアナアで一蓮托生の彼らメディアは、きのう揃って自社が公開した代表メンバー発表会見の記事タイトルで堂々と「2次予選は甘くない」などという大見出しを立てて森保監督にこびへつらっている。

 これでは岸田政権とベッタリ癒着し、岸田官邸のヨイショ記事ばかり書いている官邸メディアとまるで同じだ。

 彼らは森保監督に嫌われたら商売上がったりなのである。

 つまり「体制側」と利益を同じくしているヨイショ・メディアなのだ。

 当然、彼らは森保監督に反論するどころか、「2次予選は甘くない」などと今回ガチのメンバーを選んだ森保監督を擁護する記事を書く。

 こんなふうにメディアが自浄作用を失ったら終わりだ。

(唯一、過密日程で「ケガは考えないのか?」と森保監督に厳しく質問されていた記者さんが1人おられたが)

 結局、彼らは、岸田官邸を取り巻く腐敗した記者クラブ・メディアが絶対に岸田首相を叩かないのと同じだ。そして彼らサッカー・メディアは、岸田首相を批判しないことで結果的に「日本を滅ぼそう」としている官邸メディアと同じことをしている。

 炭鉱のカナリアは、鳴かなくなったら終わりである。

 やれやれ、だ。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【第2次森保ジャパン】日本代表はAチームとBチームを作るべきだ

2023-11-08 11:20:26 | サッカー日本代表
低レベル化が心配なワールドカップ

 2026年北中米ワールドカップのアジア枠は、「4.5」から「8.5」に拡大された。これが意味するところは大きい。まず杞憂されるのは、ワールドカップの「低レベル化」だ。

 いや例えば欧州チャンピオンズリーグでさえ、現在行われているグループステージはレベルの劣るクラブが混じっており、あんまり見る気がしないくらいだ。あの「チャンピオンズリーグでさえ」である。

 それに対し、今度のワールドカップの場合はレベルの低いアジア枠が「8.5」もあり、そのぶんさらなる低レベル化が心配される。

 欧州チャンピオンズリーグのグループステージでさえ試合によっては観る気がしないのに、アジア枠が「8.5」もあるワールドカップのグループステージなど観る人は激減するのではないか? と心配される。

 まあアジア枠を広げたのはビジネス的な理由もあるのかもしれないが、いずれにしろワ-ルドカップの低レベル化が進むことだけはまちがいないだろう。

アジア2次予選に「欧州組総動員」で臨む愚かなJFA

 さて、本題だ。

 本日の午後3時から、第2次森保ジャパンのワールドカップ・アジア2次予選(ミャンマー戦・シリア戦)に向けたメンバー発表が行われる。

 おそらく森保ジャパンは、アジア枠が「8.5」に広げられたというのに欧州組を総動員した全力のメンバーで臨むのだろう。

 愚かなことだ。

 すでに何度か書いたが、ただでさえ現在サッカー界は、欧州チャンピオンズリーグとヨーロッパリーグ、ヨーロッパカンファレンスリーグ、およびカラバオカップやFAカップなどの大きな大会や国内カップ戦がぞくぞく行われている過密スケジュールの真っただ中だ。

 各クラブは、自国リーグ戦とこれらの大会に並行して選手を出すため、四苦八苦でやりくりしている。

 そこへ持ってきて、ワールドカップのアジア2次予選である。しかもアジア枠が「8.5」に拡大され楽勝必至の同大会の2次予選に、こともあろうに第2次森保ジャパンは「欧州組も総動員した大政翼賛体制」で臨むのである。

 バカバカしいことこの上ない。

Bチームの組織化は代表の底上げになる

 昔から言われてきたように、いいかげん日本代表はAチームとBチームを作って両輪体制で運営するべきなのだ。おそらくAチームは欧州組中心、Bチームは国内組中心になるだろう。

 そしてワールドカップのアジア2次予選やアジアカップなどは、Bチームで戦うべきなのだ。日本人選手のレベルは、もうすでにその域に達している。

 いやそれだけでなくBチームの選抜やその活動は、日本代表の大いなる底辺拡大と底上げ、レベルアップに大きく貢献するはずだ。

 具体的には、今回の「10月シリーズ」のカナダ戦やチュニジア戦などはBチームで臨み、ワールドカップ・アジア2次予選への「Bチーム参加」の地ならしをすべきだった。

 こうした計画的で実効的な組織運営をせず、ワールドカップの「たかが」アジア2次予選へ欧州組まで総動員した大政翼賛体制で臨むなんて実にバカげている。

 選手が疲弊するだけだ。

 日本サッカー協会は、そろそろ日本代表の「Aチーム・Bチーム」化に本気で取り組むべきだろう。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【分析コラム】なぜ鎌田大地はスタメン起用されないのか?

2023-11-07 09:16:15 | その他の欧州サッカー
フィジカルと選手の組み合わせの問題だ

 ラツィオの鎌田大地は、なぜリーグ戦でスタメン起用されないのか? 断片的に現地報道が伝わってくるが、どうもその理由がハッキリしない。そこで多少の推測も交えて考察してみよう。

 現地報道から漏れ聞こえてくるところでは、マウリツィオ・サッリ監督自身は鎌田のことを「大好きな選手だ」と言って気に入っているらしい。これは事実のようだ。とすればスタメン起用されないのは、選手として認められてないからではない。

 とすれば使われないのは、同時に起用する選手との兼ね合い、つまりバランスの問題だろう、と想像はつく。

 さて、まずサッリはしきりに「フィジカル」を重視し、取り沙汰している。

 そして現地報道によれば、向こうでは鎌田は「フィジカルが強くない」とされているようだ。で、サッリが左インサイドハーフとしてレギュラーだと考えているルイス・アルベルトも、同様にフィジカルは強くない。

 ゆえに鎌田とルイス・アルベルトを両インサイドハーフとして同時に使うと、フィジカルが弱い同士でバランスが悪い。サッリはそう考えている。

 で、鉄板のルイス・アルベルトを左IHに使い、右IHにはフィジカルが強いゲンドゥージを組み合わせている。

 つまり第一に「フィジカル問題」で、鎌田はゲンドゥージに負けているわけだ。

鉄板のルイス・アルベルトともかぶる

 もうひとつ、難しい問題がある。

 どうやら現地では、「鎌田は右IHより、左IHのほうがデキがいい」とされているようだ。ところがその左IHは、鉄板であるルイス・アルベルトの不動のポジションである。

 これにより第二には、この「ポジション問題」で鎌田はルイス・アルベルトに負けているのだ。つまり左IHとしては、鎌田はルイス・アルベルトの控えになる。

 結果、鎌田の出場機会はめっきり少なくなっているわけだ。

 さらにもうひとつ問題がある。

 実はそれでもサッリは鎌田を使いたいために、試合途中で先発した左IHのルイス・アルベルトを下げ、代わりに鎌田を途中出場させることがある。

 ところがルイス・アルベルトは自分が途中交代させられることをひどく嫌い、ベンチに下がるたびサッリに激しく毒づくのだ。

 そんな問題もあり、サッリは鎌田をますます起用しにくくなって行くーー。

 まとめると、こういうことだ。

 このテの問題は、選手間や監督との間で必ず大きな軋轢を生む。チームとしていい状態だとはいえない。

 ちなみに鎌田の契約は単年だ。2年の延長オプションが付いているが、来夏にまたフリートランスファーで移籍することもできる。もしこのポジション問題がこじれるようなら、いっそのこと鎌田は移籍するのもテかもしれない。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【久保健英】バルサ戦でのフィジカルが凄かった

2023-11-06 09:28:16 | その他の欧州サッカー
当たり負けしない力強さ

 久保健英は、現地時間11月4日に行われたラ・リーガ第12節・バルセロナ戦でフル出場した。

 久保といえば、後半になるとガス欠でバテで交代になるのが定番だったが、この日は違った。試合終了まで力強く戦い続けた。

 例によって得意のドリブルで局面を切り裂くシーンも多く見られたが、なかでも特に目を見張らされたのがフィジカルの強さだった。

 久保といえばどちらかといえばひ弱な印象があったが、このゲームではボールとマーカーの間にカラダを入れて頑強に粘ったり、敵を背負いながらパワフルにボールキープする場面が多く見られた。

 もちろんフィジカルトレーニングの成果なのだろうが、技術が進歩しているだけでなくカラダもその進化に合わせてスケールアップしているのだ。

 この若者はいったいどこまで伸びるのか?

 大柄なスペイン人相手に決して当たり負けしない小柄な久保の姿を見て、思わず頬がゆるんでしまった。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【ラ・リーガ 23/24 第12節】ラ・レアルが勝てた試合だった 〜レアル・ソシエダ 0-1 バルセロナ

2023-11-05 10:06:06 | その他の欧州サッカー
2回の絶好機を決めていれば……

 スタメン出場したバルサのロベルト・レバンドフスキは終始、消えていたし、ジョアン・フェリックスの魔法も効力を発揮しなかった。もしサッカーに「判定勝ち」があったとすれば、この日の試合は明らかにラ・レアルのものだったーー。

 レアル・ソシエダがあのバルセロナを敵に回して堂々と押し込み、圧倒的に攻め立てた。彼らは今や鉄板のスタメン陣さえ揃っていれば、バルサとも互角の勝負ができるチームになっている。

 バルサは左SBのアレハンドロ・バルデを高く上げ、残りの3人が左へスライドして3バックでビルドアップしてくる。この3バックに対し、ソシエダは3トップがマンツーマンでプレスをかけた。特にオヤルサバルは二度追い、三度追いで奮闘した。

 勝負は後半49分にアラウホのゴールでバルサに軍配が上がったが、前半2分に敵のバックパスをカットしたオヤルサバルがあのシュートを決めていればどうなっていたかわからなかった。あれは絶対に決めなければいけない好機だった。

久保は絶対的な決定機を数度作った

 久保健英も組み立てとチャンスメイクでいい働きをしていた。決定機で言えば、オフサイドにはなったが後半10分にライン裏へ飛び出して放ったハーフボレーが決まっていればこの日のヒーローになっていただろう。そのほかにも数度、彼は絶対的な決定機を作っていた。

 久保は後半になるとバテて足が止まり試合から消える悪いクセがあるが、この日の試合ではフル出場し健闘していた。

 ただチームとしては、後半18分に右SBトラオレに代えてエルストンドを、また同34分にバレネチェアに代えてモハメド・アリ・チョ、同39分にオヤルサバルに代えてカルロス・フェルナンデスを投入する、というふうに鉄板のスタメン陣が1人2人と引っ込むとテキメンにチーム力が落ちる。レギュラーと控えの間に無視できない力の差がある。これは深刻な問題だ。

 スタメンの11人が売り切れたら終わり、というのでは長いシーズンを戦えない。この点はラ・レアルの大きな課題だ。然るべきタイミングで新戦力の補強が必要だろう。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【なでしこ無気力試合】批判している人は矛盾に気づいてない

2023-11-04 08:49:59 | サッカー日本代表
「ドーハの悲劇」で日本はいったい何を学んだのか?

 私はこの件に関して賛成でも反対でもないので取り上げるつもりはなかったのだが、気が向いたのでひとこと言及してみる。

 ネット上ではすでに大騒ぎになっているので説明は不要だろう。なでしこジャパンが来年のパリ五輪出場をかけたアジア2次予選・ウズベキスタン戦の件である。

 この試合、なでしこジャパンは2点を取り2-0とリードした時点で、準決勝で強豪オーストラリアと当たるのを避けるため、それ以上、点を取るのをやめた。で、70分間以上、彼女たちはただひたすらボールを回して時間を消費した。これが「無気力試合だ」として批判されている。

 ここでちょっと思うのは、では1993年10月28日に行われたイラク戦、つまりあの「ドーハの悲劇」で日本はいったい何を学んだのか? ということだ。

 それは「勝ち試合を勝て」「勝ち試合を殺し切れ」である。

「時間をうまく使え」が教訓だったのでは?

 あのドーハの悲劇でのイラク戦。試合終了間際まで日本は2-1で勝っていたのに無理攻めし、相手ボールになった。で、イラクのCKから「一発」を浴びて2‐2の同点とされ日本のアメリカW杯行きは露と消えた。

 あのとき日本中で巻き起こったのは、「日本はリードしているのに、なぜボールを安全にキープしてうまく時間を使わなかったのか?」という指摘だった。

 つまりドーハの悲劇のときは日本中が「なぜ攻めたのか?」と批判し、かたや、今回のなでしこジャパンの無気力試合では「なぜ攻めなかったのか?」と批判している。

 まったく矛盾しているのだ。ダブルスタンダードである。

時間稼ぎの「さじ加減」で許される、許されないが決まるのか?

 いや、もしかしたら、こういう言い分なのかもしれない。

「ドーハの悲劇のときは試合終了間際だった。だから『時間をうまく使う』行為は許された。だが今回のなでしこジャパンのケースでは「70分以上」にわたり時間稼ぎをしたから悪いのだーー。

 こういうことなのだろうか?

 ではいったい、勝っているときボールを保持してうまく時間を使う行為は、試合が残り何分以内なら許されて、残り何分以上あれば許されないのか?

 もちろんそんな決まりなんてない。

 結局、この件を批判してる人は論理性も何もなく、その場の「情動」や「気分」で叩いているだけじゃないのか? そんな気がする。

 実はこの問題を究極的に突き詰めると、「勝つためのマリーシアを認めるのかどうか?」という壮大なテーマに行き着く。マリーシアを認めない人は「正々堂々と戦え」と言ってなでしこジャパンを叩くし、認める人は叩かない。そういうことでしかない。

 つまり両者は永遠に交わらないのだ。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【分析コラム】プレミアリーグは序盤で早くも優勝候補が絞られた?

2023-11-03 07:29:39 | イングランド・プレミアリーグ
新監督ポステコグルーがスパーズを生まれ変わらせた

 世界中から猛者が集まるプレミアリーグは、第10節を終えた序盤戦で早くも優勝候補が絞られたような感がある。ズバリ、マンチェスターシティとトッテナム・ホットスパー、そしてアーセナルが有力だ。

 なかでも第10節終了時点で8勝2分けと負けなしの勝ち点26で首位に立つスパーズは調子がいい。監督が横浜F・マリノスとセルティックで結果を出した戦略家ポステコグルーに代わり、なにより選手のメンタルが激変した。選手たちがイキイキとのびやかにプレーしているのが手に取るようにわかる。アンジェ・ポステコグルーのモチベーターぶりが光っている。

 昨季までの彼らは単に「ビッグ・シックス」の1クラブというだけで、淡々とルーティーンワークをこなすサラリーマンみたいな集団だった。熱いものがなく、そこそこの成績は残すが優勝は絶対しない。そんな万年課長みたいなチームだった。

 だが今季は新監督ポステコグルーの薫陶を受け、8ゴールを上げて得点ランキング2位にいる韓国代表FWソン・フンミンを筆頭に、レスターから移籍してきたイングランド代表MFジェームズ・マディソンも第10節を終えて3ゴール5アシストと爆発している。

 またメンタルの問題を抱えていることを明かし、不振に陥っていたブラジル代表FWリシャルリソンも復活の兆しを見せている。

 ポステコグルーのサッカーはお得意のハイライン・ハイプレスだ。コンパクトな陣形を保ち、ゾーンを圧縮して敵を窒息させる。最終ラインから少ないタッチ数でグラウンダーのショートパスをていねいに繋ぎ、ビルドアップするスタイルである。

 ただしシティやアーセナルとくらべると、選手層がそう厚いとは言えないのが減点ポイントか? だがチームの勢いは彼らが明らかに断トツだ。

手堅いシティはFWドクに注目だ

 これに対し、8勝2敗の勝ち点24で3位につけているペップ率いるマンチェスター・シティーも、強さに揺るぎがない。エースのノルウェー代表FWアーリング・ハーランドは、11ゴールで相変わらず得点ランキングのトップにいる。

 また今季はなによりスタッド・レンヌから移籍してきたベルギー代表FWジェレミー・ドクがすさまじい。

 筋肉隆々で躍動感がハンパない彼は無双のドリブルでごりごりサイドを食い破り、チームのチャンスを作り続けている。しかもそんな彼とポジション争いをしているのが、イングランド代表MFのジャック・グリーリッシュなのだから選手層の厚さに驚かされる。

 シティーは大黒柱のMFケビン・デ・ブライネが長期離脱中なのが不安材料だが、同じく離脱中だったMFマテオ・コバチッチとMFベルナルド・シウバが戻り、出場停止処分が解けてMFロドリが復帰したのも大きい。あのデ・ブライネがいなくても3位につけているのだからすごい。

 勝ち慣れている彼らは試合運びもうまく、安定感がある。ペップの魔法も相変わらず健在で、手堅い優勝候補であることはまちがいない。

選手層が分厚いアーセナルも有力だ

 選手層という意味ではプレミアリーグで1、2を争うのがアーセナルだ。彼らは7勝3分けの負けなし。勝ち点24で2位につけている。目玉は右WGで使われるブカヨ・サカの突破力だ。

 また第10節のシェフィールド・ユナイテッド戦でハットトリックを達成したFWエドワード・エンケティアやFWガブリエル・マルティネリなど、あのトロサールやウーデゴールらがスタメンで出られないくらいの層の厚さを誇る。

 このチームの死角といえば左SBオレクサンドル・ジンチェンコの守備力くらいだが、彼は偽SBをはじめ攻撃への貢献度が高いので監督のミケル・アルテタも外せないところ。試合展開に応じて冨安を途中投入するなどしてやりくりしているが、この左SBのレギュラー争いも見物のひとつだ。

 個人的には冨安はCBで使ってほしいが、まあ上がつっかえているので仕方ない。

 もうひとつアーセナルの死角を挙げるなら、個人的な印象だが指揮官アルテタの胆力だろうか。彼は見た目が神経質そうで、どこかどっしりとした余裕が感じられない。常にピリピリと何かにイラ立っているように見える。

 昨季、ペップにひっくり返されて逆転優勝されたように、監督としての器がまだ板についてないように感じる。ペップやポステコグルーのような「俺にまかせろ」感がイマイチ感じられない。「このおっさんのために死ぬ気でプレーしよう」と選手に思わせる「何か」が欠けているような気がする。まあ個人的な印象だが。

チェルシーとマンUの再建はあるか?

 このほかリバプールも爆発的な攻撃力・得点力があり有望だが、今季は本職じゃないマクアリスターがバイタルエリアを守る「アンカー問題」が解決しない限り守備が安定しないので優勝はないと見る。

 そのほかマンチェスターユナイテッドとチェルシーは絶対に優勝はない(笑)。今季のチェルシーは「ひょっとしたら立ち直るのでは?」と微かな期待をして観ていたが、まさか第10節でブレントフォードに0-2で負けるなんて夢にも思わなかった。しかも内容が悪すぎる。やれやれだ。

 他方、マンUももはや「負け慣れ」してしまい回復の兆しがない。

 この2チームは「昔の名前で出ています」という看板だけのチームだ。有名なだけで抜け殻である。いちばん深刻なのは選手のメンタルだ。覇気もなければヤル気もない。

 スパーズも昨季まではこの駄目グループに属したが、名モチベーターのポステコグルーが見事に立て直した。マンUとチェルシーも選手のメンタルをゼロからモチベートできる人物が監督にならない限り、浮上はむずかしいだろう。

 このほか優勝まではないだろうが、アストン・ヴィラとニューカッスルもいいサッカーをしている。見ごたえがある。あと個人的には、順位は下の方だがウルヴズも面白い存在だ。

 彼らはガッツのあるメンタルで非常に攻撃的だ。かつ、負けていても絶対に試合を諦めない(マンUやチェルシーは彼らの爪の垢でも煎じて飲んでもらいたい)。選手別では、FWペドロ・ネトとFWファン・ヒチャンのプレイは必見だ。見て損はない。おすすめです。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【分析コラム・リーグ杯】遠藤航とマクアリスターは対照的だ ~ボーンマス 1-2 リバプール

2023-11-02 10:36:46 | イングランド・プレミアリーグ
スペースを埋め無難にパスを捌いた遠藤

 11月1日にイングランドリーグ杯(カラバオカップ)の4回戦が行われ、2点を取ったリバプールがボーンマスに競り勝った。遠藤航がアンカーで先発し、後半には遠藤は退きマクアリスターが登場した。

 雨の中の試合。遠藤は4-1-2-3のアンカーでプレイした。レッズは31分にエリオットが打ったミドルシュートのこぼれ球をガクポが押し込み、先制に成功する。

 続く63分にはボーンマスのクライファートにCKからのシュートを決められ同点になったが、70分にダルウィン・ヌニェスが左サイドからカットインし素晴らしいゴラッソを豪快に決めリバプールが勝利した。

 興味深かったのは、前半はアンカーを遠藤が務め、後半はマクアリスターが同じポジションでプレイしたところだ。そのぶん両者のプレイスタイルの違いが鮮明に浮き彫りになった。

 まずポジショニングだ。遠藤は最終ラインの前のスペースを埋めることに注力していたのに対し(いかにも本職のアンカーが考えそうなことだ)、一方のマクアリスターはチャンスと見ればポジションを捨てても攻撃を優先していた点だ。

 両者のコントラストがはっきりして興味深かった。

 ただし遠藤は安易にボールホルダーの足元へ飛び込み、カンタンにかわされるシーンが数回あった。リーグ戦でも見られるシーンだが、あそこは修正する必要があるだろう。

キラーパスを出したマクアリスター

 一方、攻撃面での比較はどうか?

 まずポジショニングについては、遠藤は昔で言えば「リンクマン」(前と後ろを繋ぐ役割)に徹し、足元で受けたボールを無難にグラウンダーのパスで横や前へ繋いでいた。

 文字通り、守備陣と攻撃陣を「リンク」させる役割だ。

 かたやマクアリスターはといえば、象徴的だったのはアンカーの深い位置でボールを受け、顔を上げて最前線のFWサラーに向けて浮き球のやわらかいロングパスを通したシーンだ。

 マクアリスターはもともと攻撃の選手なので、こういう一発で試合を決めてしまえる攻撃的なパス出しができる。

 彼は遠くが見えており、ゴールを取るまでのルートを瞬時に頭の中で描ける。ただしそのぶん、守備は得意じゃない。

遠藤は「攻撃性能」でマクアリスターを上回れるか?

 単純に両者を比較すれば、遠藤はマクアリスターがサラーに通したような決定的なラストパスを出すのは難しいだろう。守備に重きを置く選手なのだから当たり前だ。

 ただし監督のクロップは、明らかにマクアリスターのそういう攻撃的なセンスを買ってアンカーのレギュラーポジションに置いている。

 とすれば遠藤がポジションを掴むには、マクアリスターのような「攻撃的なパス」が出せるようになるか? あるいは逆に、そのぶん守備で決定的にチームを助ける役割を果たすか? のどちらかだ。

 遠藤のプレイスタイルを考えれば後者のほうになるだろうが、ただし守備における活躍だけでマクアリスターを上回るのはやはり難しいかもしれない。なによりクロップの目に映るインパクトが違う。

 とすればやはり遠藤はクロップから求められている、鋭い縦パスを配給するなどの「攻撃性能」を地道にアップさせていくしかないだろう。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【移籍のウワサ】久保健英のマドリー移籍には絶対反対だ

2023-10-30 08:59:01 | その他の欧州サッカー
成長が止まるのではないか?

 レアル・ソシエダの久保健英と切っても切れないのが、古巣レアル・マドリードへの復帰の噂だ。おそらくこのテのネタはメディアなるものが存在する限り、絶え間なく続くのだろう。

 だがマドリーへ行かせたいメディアのみなさんには誠に申し訳ないが、個人的には久保のマドリー行きには絶対反対だ。

 レアル・マドリードという巨大クラブは、ラ・リーガでプレイする選手にとっては双六の上がりだ。そこへ行ってしまったら最後、満足し「ひと息ついて」しまうのではないか? 

「やり切ったぞ」という達成感とともに、久保はマドリーの選手という地位に安住するのでは? そして選手としての成長が止まってしまうのではないか? 久保は22歳。まだまだ伸びるはずの選手だ。そんなことになってはもったいない、と感じる。

ストイックさに欠けて見える久保

 特に久保という選手は外から見ていると、自己肯定感が非常に強いタイプのように感じる。裏を返せば、ややもすると自分を厳しく律するストイックさに欠けて見える。いかにも大らかなスペイン風味だ。

 例えば彼の属するレアル・ソシエダは、10月24日に行われた欧州チャンピオンズリーグのグループD第3節でベンフィカ・リスボンに圧勝した。彼は良いプレイをしたがゴールだけがなかった。惜しいシュートがバーを叩いた。で、試合後に彼は、「もしあのゴールを決めていれば僕が王様だった」と言い放った。

 あの発言には、違和感を覚えた。

 試合に勝ちメディアに持て囃され、ちょっといい気になってしまっている感じがした。もしストイックな選手なら、そんなセリフはぜったい口にしないだろう。逆に「なぜ自分はあの場面でシュートを決められなかったのか?」を自己分析し、黙ってさらなる努力を続けるはずだ。

 もっとも、あの発言は久保なりのメディアに向けたリップサービスだったのかもしれないが。

 この件と同じで、彼がマドリーへ行けばある意味「いい気」になり、そこで満足してしまうのではないか? マドリーへ移籍し、ある種の強い自己肯定感を味わってしまうと「それなりの選手」で終わってしまうのではないか? と杞憂する。

 まだまだ果てしなく伸びるはずの選手だけに、そうなってしまうのはとても惜しい。

プレミアリーグなら伸びる余地はある

 で、もし彼が移籍するとしたら、個人的にはイングランド・プレミアリーグの上位クラブあたりがいいのではないかと感じる。具体的には、今季のデキでいえばマンチェスターシティかアーセナル、スパーズの3択だ。

 とにかくプレミアリーグは世界中から選りすぐりの「化け物たち」が集まる巣窟であり、上を見ればキリがない世界である。

 久保はそんな世界の化け物たちと切磋琢磨し、「まだまだ自分には足りないところがある」と自覚すれば、努力を続けて成長するだろう。彼がこれまでやってきた自己研鑽を振り返ればそう想像はつく。

 例えばあえて言うが、久保がまだローンでマジョルカやヘタフェなどのクラブを渡り歩いていた時代、彼は高い技術はあってもハンパな選手だった。

 ちょっと接触プレイがあると両手を広げて大げさに倒れプレイをやめてしまう。で、ファウルをアピールする。だがゲームはまだ進行中なのだ。倒れた彼はそのぶん試合から取り残されてしまう。久保のチームは10人で戦っているのと同じだ。そこがわかってない。トランジションが悪い。

 また彼はボールさえ持てば鬼に金棒だが逆にいえばオフ・ザ・ボールが悪く、ボールのないところでは「どこ吹く風」で足を止めてゲームに関与しないケースがあった。守備の意識も高くなかった。

 そんな「技術だけはある」がハンパだった選手がその後、それらの自分の欠点を見事に修正し、いまや世界のトップ・オブ・ザ・トップに手の届くところにいる。彼は大きく成長した。

 そのせっかくの成長を止めないためにも、マドリーへ行くのだけはやめたほうがいいと感じる。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【分析コラム】遠藤航が「攻撃好き」なクロップを唸らせるには?

2023-10-28 05:00:07 | イングランド・プレミアリーグ
攻撃的だが守備は苦手なマクアリスター

 現地時間10月26日に行われたヨーロッパリーグ第3節のトゥールーズ戦で、リバプールの遠藤航が移籍後初ゴールを決めてメディアが大はしゃぎだ。「遠藤が凄い! これでレギュラーまちがいなしだ!」とばかりに、天地がひっくり返ったように騒いでいる。

 だが慎重なクロップは、たった1回ゴールを決めた程度では考えを変えないだろう。「継続的」に攻撃的なプレイを見せ続けなくては、遠藤のレギュラー獲りは遠いままだーー。

 さて残念ながら、目下、アンカーの遠藤はヨーロッパリーグとカップ戦要員に収まっている。プレミアリーグには相変わらずマクアリスターがアンカーとして先発する日々だ。この構図が完全に固定化している。

 だがマクアリスターは本来攻撃の選手であり、ぶっちゃけ守備は苦手だ。本ブログでは過去に何度も具体的に彼の守備面でのミスを指摘しているが、彼は守備の選手なら絶対にやらないような「致命的なやらかし」をアンカーの位置で何度もやり、チームをたびたび失点の危機に陥れている。

 マクアリスターのミスのおかげでチームのリズムがすっかり狂い、不安定になることがしばしばある。いや別に私は彼に個人的な恨みがあるわけじゃない。ただ淡々と客観的に状況を分析しているだけだ。サッカーチームというものは、まず守備が安定していなければ本領を発揮できないものなのだ。

 現在、レッズはプレミアリーグで6勝2分け1敗の4位と上位にいるため、結果的に彼のミスは目立たない。だが試合の内容をつぶさに見れば、彼の失敗が足を引っ張っているのは一目瞭然だ。赤いシャツのチームはギクシャクと不安定な試合を繰り返しながら、それでもなんとか勝ち続けている状態である。

「攻撃好き」なクロップが選ぶのは?

 ではなぜ攻撃的なマクアリスターは、こともあろうに守備的なアンカーポジションの先発要員としてクロップに使われているのか? それはおそらくクロップ自身が「攻撃的な選手が好みだから」だろう。

 例えばマクアリスターは、アンカーの位置からでも試合を一発で決めてしまえるようなキラーパスが出せる。攻撃面だけに限定すれば、非常に高い技術の持ち主だ。具体例をあげれば、第6節のウエストハム戦でFWダルウィン・ヌニェスに放った、チームの2点目に繋がったような高度なパス出しだ。

 このときマクアリスターは中盤の底の深い位置から、最前線のヌニェスを狙って縦への鋭いロングパスを入れた。寸分の狂いもなく、ボールはヌニェス目がけて飛んで行く。

 一方のヌニェスは自分の頭上へと飛ぶボールの落下地点へ素早く移動し、目の前に落ちてきたボールを足の甲にうまく乗せてなんとダイレクトでシュートを決めた。超絶的なゴラッソだった。

 つまりマクアリスターは、こういう必殺のパスが出せるから先発で使われているわけだ。

クロップはレッズの欠陥を自覚しているが……

 さて、ここで思い出されるのは、遠藤を獲得したときクロップが彼に言ったというジョークだ。

 クロップは「うちのチームには守備的なMFが足りないんだ」といい、「つまりウチは、なんというか、攻撃的すぎるんだよ(笑)」と笑った。

 ユーモアのセンスがあるクロップは冗談に絡めて、「いまのリバプールは守備に欠陥がある」という現状分析をして見せたのだ。この分析はまったく正しい。冒頭で説明したように、レッズの守備には欠陥がある。

 そして皮肉なのは、クロップはこの自チームの欠陥を自分で重々わかっていながら、にもかかわらずアンカーという守備の要諦を握るポジションに攻撃的な、(だが守備はヘタな)マクアリスターを起用してしまっていることだ。

 つまりクロップは客観的には自チームの欠陥をわかっていながら、それでも攻撃好きな彼は「本能的に」マクアリスターを選んでいるわけだ。

いまのレッズには何が求められているか?

 攻撃的な能力でくらべれば、確かに遠藤はマクアリスターに一歩譲る。前述したようなFWヌニェスへマクアリスターが出したような超絶的なロングパスなどは遠藤にはマネできないだろう。

 だがいちばんに考えるべきは、いまのリバプールには何が求められているのか? だ。それはもちろん「守備の安定」であり、ならばアンカーに誰を使えばいいかは一目瞭然だろう。

 どう考えても両インサイドハーフにはマクアリスターとソボスライを起用し、より前の位置でマクアリスターの攻撃的な能力を生かすのがベストだ。と同時に、彼らより一列下がったアンカーには守備が安定している遠藤を使うのがいい。

 ならば遠藤はクロップに求められている縦パスなどの攻撃的な能力を今後高めながら、虎視眈々とレギュラー入りを狙ってほしい。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする