すちゃらかな日常 松岡美樹

サッカーとネット、音楽、社会問題をすちゃらかな視点で見ます。

【SNSブームの新星】YouTubeジャーナリズムの時代が来た

2024-12-29 09:40:47 | メディア論
「マジメなこと」をユーモアも交えながら面白く解説する新世代

 その昔、ネタを取って報道する機能は大手メディア、いわゆるオールドメディアが独占していた。だが、これからは単なる一般人がそれをやる時代だ。この傾向はインターネットが生まれ、一般に解放された時点で始まった路線といえる。

 もともと60年代にアメリカでネットが生まれたのが、そもそもの始まりだ。これで「報道権」がプロから一般人の手に広く行き渡った。そしてまずネット媒体として、初期からのいわゆる昔ながらのWebサイトができた。

 ところが大きな変革が2000年に起こった。それまでWebサイトの構築や記事更新には、「HTMLタグ」などそれなりの専門知識が必要だった。

 だから一般人には、なかなかむずかしかった。で、そこまでの広がりがなかった。サイト運営はコア層のたしなみに過ぎなかった。

 だが2000年にHTMLタグなどの専門知識が必要なく、サイト構築や記事更新がカンタンにできるブログが生まれた。これが大きな転機になった。で、ネットユーザの多くが情報の受け手ばかりでなく、送り手の側になる。

 ブロガーの誕生だ。

 つまり従来、読み手だったネットユーザが書き手になるケースがすっかり一般化した。

 続いて2005年に「YouTube」が登場し、機能がさらに進化した。今度はブログみたいな文字と画像だけでなく、なんと動画と音声付きで情報を送ることができるようになったわけだ。

 こうして今や、YouTubeはいよいよ黄金期を迎えつつある。

エンタメ系に偏るYouTubeに不安を感じる

 だが巷間、見ていると……どうも不安な点もあちこちにある。そのひとつは、ジャンル的にエンターテインメント系に偏っている印象がある点だ。

 いわゆる(硬い言い方だが)報道系のものが少ない。

 つまり従来からあったテレビで主流のバラエティ番組やワイドショー、芸能ニュースみたいなありふれたネタを、ただ単に媒体を替えて今度はYouTube上でやってるだけ、みたいな感じがする。

 要は中身、やってるネタがテレビそのままなのだ。媒体がテレビから単にYouTubeに変わっただけである。

 これでは逆にプロが制作するテレビ番組より、アマチュアが作るYouTubeの方が、むしろ伝える情報の精度や正確性のレベルが明らかに低いぶんデマや誤報が多い点だけが目立ってしまう。

 だからYouTube独自の強みが活かせない。(逆に「素人YouTuberのメリットや強み」は後述する)

 一方、収益面を見ると多くのインフルエンサー(影響力のある有名YouTuber)は、「案件」と称する企業の広報宣伝活動の一翼を担い、彼らの販売促進にひと役買っておアシを頂き喜んでいる。

 いや別にそれを批判するのが今回の趣旨じゃない。

 だがここでちょっと警鐘を鳴らしたいのは……それって、いわゆるオールドメディアが「かつて来た道」と同じだよ? って話なのだ。

「購読料」で経営が成り立たず「広告頼り」になる新聞業界

 オールドメディア(特に新聞)は、もともと部数を売り、購読料・収入で経営が成り立つスタイルだった。

 だが販売部数の激減でそれがすっかりダメになる。その結果、企業の広告頼りになり質的に堕落し、広告クライアントに都合の悪いことは報道できない広告タブー体質が生まれた。で、客観的な報道機関としては質が落ちて行った。

 彼らはクライアントや絶対的な政府権力、富裕層など「既得権益層」に致命的に弱いのだ。

 この道程と同じ道を、いまネットユーザはたどってしまっていないだろうか? という杞憂がある。

 例えばかつての新聞は記者がいい記事を書けばそのぶん読者数が増え、購読料からの収入が増した。これにより倍々ゲームで経営状態が向上した。

 だがもはや現代では紙の新聞が時代性に合わなくなり、ネットの台頭もあり全国的な部数減が起こって従来の経営戦略はだんだん萎んだ。で、広告料収入頼りになって行った。

 それとともに既成の広い意味での権力(これは政治的な権力だけでなく、例えば「商業主義」も立派な権力の典型だ)に抗えなくなり、「書くべきこと」が自由に書けなくなった。で、タブーが増えることで、新聞はメディアとして終わって行った。

テレビは日本人に「消費意識」を植え付けるためアメリカが日本に入れさせた

 一方、かたやテレビは、もうハナからCM頼りのメディアだから何をか言わんやだ。こうしたCM頼りの欠陥は、もともとテレビが生まれたときから抱えていた特性だ。

 しかも逆にその弱点は、先の終戦時、日本の敵対国だったアメリカが当時の軍国主義・日本を弱体化するための武器でもあった。

 つまりテレビはもともと軍国主義に洗脳された敗戦国・日本の国民に「消費意識」というまったく新しい概念を芽生えさせることで、消費により洗脳し、軍事的に「大人しくさせる」ためにアメリカが日本へわざわざ輸入させたものだ。戦略的に、である。

 例えば日本で初めてテレビ放送をスタートさせたNHKに遅れること半年後だった。

 民間放送として初めて1953年8月にテレビ放送を開始した(読売新聞社主で)日本テレビ初代社長の正力松太郎氏は、そんな米国CIAのエージェントだった(コードネームはPODAM)。

◾️参考1・日本テレビとCIA 発掘された「正力ファイル」

◾️参考2・ウィキペディア「正力松太郎

【記者クラブの弊害】日本には約800の各種記者クラブがあるが……

 さて、加えてそんなオールドメディアに、いくつかのマイナス要因が重なった。

 そのひとつとして大きいのが、記者クラブ制度の弊害だ。

 もともと記者クラブは、明治時代からある。その初期の歴史は直接知らないが、想像するに難くない。

 当然、はるか昔は報道各社が単独でそれぞれ取材活動していたはずだ。

 それが「取材源はどうせ役所など同じだから各社みんなでまとまり、合同で取材源と団体交渉した方がいい。そのほうが何かと我々の力が増し、効力が出るよね?」という話になった。

 特に中央(地方)官庁などの公的機関や業界団体などを取材する各新聞社のチームは、各社とも取材対象がぴったり重なっているからなおさらだ。

 だったら合同で記者クラブを作り、みんなで力を合わせて情報を吸い上げる合理的なシステムを作ろうぜ、ということになった。

 で、あちこちに記者クラブができ、いまでは日本に約800団体もの各種記者クラブが存在する。ザッと上げただけでも、以下の通りだ。

 参考『記者クラブ一覧』(ウィキペディア)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%A8%98%E8%80%85%E3%82%AF%E3%83%A9%E3%83%96%E4%B8%80%E8%A6%A7

 これらの記者クラブは、いまや中央省庁や国会、政党のほか、企業・業界団体、地方自治体の役所など、あちこちに設置されている。

記者クラブの安楽な「横並び主義」が堕落を生む

 ところが、これがまた堕落の温床になって行った黒歴史がある。記者クラブはその性格上、必然的にクラブに加盟してない「よそ者」を弾く性質がある。そんな閉鎖性や排他性が強い。自然と情報カルテル的な性格を帯びる。

 いわゆる護送船団方式だから、それが安楽な「横並び主義」も生む。

 だんだん特ダネを「抜いた」「抜かれた」なんて関係がなくなる。記者は情報ソースとしては、役所や企業等が記者クラブを通して「同時に発表」した資料やレクチャーに、もはや頼り切りなのだ。

 資料に書いてあることを、機械的にリライトするだけで原稿ができ上がる。

 で、記事を発表する「解禁日」は、各社共通だ。みなさん同時発表で、仲良く横に並びよろしくやりましょうやーーそんな安易な空気が醸造されて行く。

 これで記者はもらった資料や受けたレクチャーをもとに、ただ記者クラブにいるだけで自動的に記事が書ける。ラクに仕事が成り立つ。

 こうして自分の足で取材先をあちこち歩き回り、汗をかいて「自社にしかないネタを抜く」気力なんて、だんだんなくなって行く。

 なんせ情報ソースは、絶えずネタをくれるありがたい自分たちの「お仲間」だ。だから取材源は大切にしなきゃーー。

 そんな悪しき慣習が生まれて行った。

記者が「受け止めをください」だって?

 そんな現代の記者が「いかにダメか?」は、今の記者会見を一瞥しただけでわかる。その典型例がある。

 例えば今どきの記者が会見で質問するときの決まり文句のひとつ。「○○の件について『受け止め』を下さい」てなセリフだ。

 あんな「受け止めをくれ」なんて、いちばんダメな聞き方といえる。

 すなわち「自分はこの件についてこう考える(分析している)が、一方、あなたはどう思うか?」などと、相手になんらかの刺激を与えて異なる意見を「当てる」ことで、新たな議論を喚起するような方向の質問の仕方じゃない。

 自分独自のユニークな発想や思考を相手にぶつけ、その反応を見るわけではない。

 逆に自分は相手に何も示さず、○○についてただ単に「あなたの意向や方向性を(なんでもいいから)教えてください」という聞き方だ。

 これなどはすっかり記者クラブ体制の安逸な生活に慣れ、情報の発信元が与えてくれる「意向通りの切り口」に沿い、ただ何も考えず記事を書くようになっている何よりの証拠だ。

 自分が記事を書く方向性を決める「あなた(取材源)の意向や切り口を私にどうぞ示してください」という質問の仕方なのだ。

 つまり記者のメンタリティが「体制側の仰せの通りに致します」「あなたに従います」という意味である。

 こんなふうにオールドメディアは同じ取材源と日常的に密着し、「ナアナア」の関係になる。政府や役所、業界団体など「既得権益側」の味方と化す。

 癒着の関係だ。

 で、健全な批判や批評関係がなくなって行く。馴れ合い、もたれ合いの利権の関係が構築される。

 そしてオールドメデイアの世界は長年のこんな野合で腐敗が進み、いまや治療が不可能な状態にまでなっている。

 こうなるともう、おしまいだ。

 例えばあの兵庫で斎藤知事をしきりに何かと攻撃する、百条委員会のお付きであるマスコミ陣のヒステリックで異常な取材の様子を見れば、おおかた内情は窺い知れる。

 たぶんあそこのオールドメディアは、兵庫県政史上最長の5期20年も続いた旧・井戸敏三知事体制とナアナアだった。長年、馴れ合い関係にあったのだろう。

 だから突然、そこへ降ってわいた新しい斎藤・新知事政権をあんなに叩くのだ。で、斎藤知事を倒し、「古き良き時代を再び」というわけである。

YouTuberはオールドメディアが「かつて来た道」を歩いてないか?

 こんなふうにもともとオールドメディアは、必然的に自滅する方向にあった。

 そこにインターネットが新たに台頭し、新しいメディアとして自由闊達なSNSが生まれた。これでは、旧メディアはもうひとたまりもない。かくてオールドメディアは完全な終焉を迎えつつある。

 そのテレビというオールドメディアが企業CM頼りで、「あとはテキトーに人気のお笑い芸人でも出しておけばいいや」てな具合いに番組自体がすっかりつまらなくなって行ったあの、かつて来た道ーー。

 ところが広告タイアップ案件頼りになっている今のYouTuberさんは、かつてのオールドメディアが来たのと同じ道を歩もうとしているかのように見える。

 これってとても危険な兆候じゃないだろうか? なぜなら広告頼りになってしまうと、クライアントにとって都合の悪いことは報じることができなくなるからだ。

 つまり現代のYouTuberも、オールドメディア同様に安楽な広告案件体制に慣れ切り、なんらか利権絡みがないとコンテンツ作りができない(そのモチベーションがわかない)体質になって行く気配がする。

 なんだかヤバい感じだ。いや、そういう人がいてももちろんいいのだが、「そうじゃない人」がもっといてもいいのでは? と思うのだ。

 例えばとても案件がつかないような、もっとハードな報道寄りのコンテンツだってあってもいいのになぁと感じる。

YouTubeチャンネル「ねずみ」や「吠える!ニュース」「アシタノワダイ」はおすすめだ

 具体的には、既存のチャンネルでいえばドキュメンタリー志向の「街録チャンネル」や、清水有高氏・主催の「一月万冊」、あるいはCBCニュース系の「大石が深掘り解説」などなど。

 このほかテイストはエンタメ寄りでも、ユーモアを交えながら「マジメなこと」を面白おかしく報じるYouTubeチャンネル「ねずみ」や「吼える!ニュース一刀両断チャンネル」、「アシタノワダイ」などもおすすめだ。ああいうのが、もっと増えてもいい。

 テレビや新聞などのいわゆる「くたびれたプロ」が作る慣例的な手法じゃなく、彼らは視点や切り口がユニークで斬新だ。「ハッ」とさせるものがある。

 なかにはちょっと陰謀論的な方向に寄ってしまっている回もあるが、まあそこはそれだ。

 個人的には、このテの有意義なチャンネルがもっと出てきてほしいなと希望している。

 このほか感じることは、仮に報道っぽいことをやっていても、どうしても素人さんだからツッコミが甘い点だ。ここは(仕方ないが)将来的には、もっと進化させたい。

 例えば先日あるYouTuberが、厚生労働省に電話で新型コロナワクチンの取材をしていた。だが、その聞き方がどうも浅いのだ。ツッコミが甘い。

 ゆえに官僚の都合のいいように操作されてしまっていた。もっとあらかじめ自分で独自に調べてネタ(突っ込む材料)をある程度持ち、その内容を取材相手に「当てる」感じでやったほうがいい。

 なんでも取材相手に「どうぞゼロから教えてください」では、相手に舐められてしまう。先方に都合のいい方向に誘導されるだけだ。それでは他チャンネルがまだ報じてないような、新しいネタは取れない。

 このほか正確に情報の「ウラを取る」ことや、「引用の仕方をマスターする」など、情報の基本的な取り扱い方のセオリーが、もっとYouTube上で広まればいいなぁとも感じる。

 そんな感じで、今後もYouTubeの健闘を祈っている。

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