すちゃらかな日常 松岡美樹

サッカーとネット、音楽、社会問題をすちゃらかな視点で見ます。

日本に軍産複合体が生まれる日 ~日本初の武器見本市が開かれる

2015-05-19 09:37:50 | 政治経済
「危機」を煽る安倍首相が生み出すモンスター・システム

 横浜で先週、日本初の国際的な武器見本市「MAST ASIA 2015」が開催された。約40ヵ国から軍事関連企業が集結し、日本からは三菱重工や川崎重工など約20社が参加した。後援は防衛省、経産省、外務省。日本政府が総がかりだ。安倍政権には防衛産業を成長戦略のひとつにしたい狙いがある。

 またステルス戦闘機を開発・製造している米ロッキード・マーティン社がイベントをスポンサードするなど、アメリカが支援している点も見逃せない。去年4月に閣議決定された「防衛装備移転三原則」で武器輸出が解禁される一方、安倍政権が押し進める「攻め」の安保法制が後押しし、日本に軍産複合体が立ち上がる将来像が見えてきた。

 新しい安保法制により集団的自衛権の行使や地域を限定しない他国への後方支援が行われれば、自衛隊の装備や訓練はかなり様変わりするはずだ。当然、防衛費も伸びるだろう。日本の防衛関連メーカーの製品は武器輸出解禁で海外へ渡るだけでなく、国内市場も沸き上がることになる。市場規模は膨らむはずだ。とすれば防衛費をめぐり、鉄のトライアングルも形成されるだろう。

 政権・役所と企業間でヒト・モノ・カネが行き来するのはどこの業界でも同じだ。防衛品メーカーが関連官庁の天下り先候補になるだけではない。例えばアメリカで軍事基地や兵器メーカーが立地する地元に巨大な就職先を提供する様は、「原発がないと生きられない立地地域」を彷彿とさせる。地元の雇用と議員への票も密接に結びつくだろう。防衛品メーカーの誘致も盛んになるかもしれない。

 このように川上から川下までが利益追求で一致団結し、必ず儲かる軍需というモンスター・システムを回すようになる。 

 例えばアメリカでは軍需産業がシンクタンクへ献金を行い、まず仮想敵国の軍事的脅威を煽る報告書が作られる。(日本でもつい先日の安保法制の記者会見で、「危機だ! 危機だ!」と日本の危機を煽り立てる安倍首相の姿を覚えている人も多いだろう)

 そして軍需産業から報酬を受けたロビイストが国防関係の議員に働きかけ、最後は政府が動いて膨大な軍事費が計上される。例えば9.11同時多発テロをきっかけに、「対テロ戦争」の名目でアメリカの軍事費は前年比326億ドルも増額された。またそれだけでなくアフガニスタンやイラクでは、関連業務を民間軍事会社へ委託する「戦争の民営化」も行われた。

 軍需が成長産業になり、アメリカのように国全体が依存するようになれば「戦争をしないと生きられない国」になる。戦争で兵器を「消費」しては、また兵器を仕入れる魔のサイクルが訪れる。そこに膨大なカネが流れる。「どこかに火ダネはないか? なければうまく火をつけろ。でなきゃ儲からないぞ」という話になる。

 例えば安倍首相は5月18日の参院本会議で、集団的自衛権の行使要件である「存立危機事態」について、「電力が不足して国民生活に死活的な影響が出た場合」をあげた。つまり中東のホルムズ海峡が機雷で封鎖されて日本に原油が入ってこなくなり、電力不足が起これば掃海艇を派遣する、ということだ。

 日本が攻撃されてもいないのに、安倍首相は「電力不足」を理由に自衛隊を出すつもりでいる。要は戦争する理屈など、あとからいくらでもついてくるのだ。

「集団的自衛権の行使要件として『存立危機事態』を設け、歯止めはかけました」などといっても、こんなものは別に客観的な指標があるわけでも何でもない。要は、安倍首相の主観一発で「日本の危機だ。やるぞ」と決めれば自衛隊を出す、ということだ。いったい、これのどこが歯止めになるというのか?

 どうやら日本はこうしてアメリカと肩をならべ、「世界の保安官助手」を買って出るようだ。安保法制の関連法案を見る限り、歯止めに「見せかけた要件」はあっても本物の歯止めはない。今後も私的諮問機関やら閣議決定の連続ワザで、ズルズルとなし崩しに前へ踏み出すのだろう。そんな日本が軍需で国を回すアメリカ化する日はそう遠くない。

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