日本の戦争に「アメリカを巻き込み」中国を叩く
中国と戦争したい安倍首相はマッチポンプだ。自衛隊が「できること」を格段にふやして自分から中国を刺激し、他方、「いざというときはよろしく頼む」と集団的自衛権の行使容認でアメリカにアメを舐めさせる。これでいざ対中国戦が始まれば、安倍首相の思惑通り日米連合軍 vs 中国の構図になる――。
日本は2000年の第一次アーミテージ・レポートから第三次アーミテージ・レポート(2012年)により、ずっとアメリカから集団的自衛権行使を容認するよう要求を突きつけられてきた。例えば、第一次レポートには以下のようにある。
『日本が集団的自衛権の行使を禁止していることは、同盟への協力を進める上での制約となっている。これを解除することにより、より緊密で効率的な安保協力が可能になるだろう。これは日本国民だけが決断できることである』
他方、中国は南シナ海はじめ着々と海洋進出の地固めをしている。もちろん尖閣もそのひとつだ。いつか利害が日本と衝突する可能性は高い。かねてから中国を叩きたかった安倍首相は、このアメリカからの集団的自衛権の行使容認要求と、中国の覇権化を同時に利用する手を思いついた。それが今回の新安保法制に隠された裏の狙いだ。つまり日本がアメリカの戦争に巻き込まれるのでなく、日本がアメリカを戦争に巻き込み主導権を握るシナリオである。
日本を南シナ海で中国にけしかけ漁夫の利を狙うアメリカ
アメリカは国力が衰えて覇権に陰りが見え、彼らによる一極支配は終わろうとしている。もはやアメリカ一国では「世界の警察官」は務まらない。そこで保安官助手を買って出たのが安倍政権だった。アメリカから見れば手足が増え、かさむ戦費も分担してもらえる。いいことづくめだ。
だがアメリカには密かな狙いがある。戦争の歴史は、エネルギー資源をめぐる列強の闘争の歴史だ。南シナ海も例外ではない。中国がしきりに岩礁の埋め立てを進める南シナ海は「第二のペルシャ湾」ともいわれ、膨大な量のエネルギー資源が埋蔵されている。米エネルギー情報局(EIA)では、石油の埋蔵量が110億バレル、ガスの埋蔵量が190兆立方フィートにも上ると推計している。
加えて南シナ海は日本の「ノド元」に当たる。日本に供給されるエネルギー資源などの90%近くが南シナ海を経由して運ばれている。シーレーンの要衝だ。この地域での軍事的緊張は、日本の「存立を脅かす事態」である。現に第三次アーミテージ・レポート(2012年)でも、「日本は航行の自由を確保するために、アメリカと協力して南シナ海の監視を強化すべきである」と重要性が強調されている。
そこでアメリカが描くシナリオでは、まず南シナ海をめぐり日本と中国が戦火を交え(というより好戦的な安倍首相を中国にけしかけて)途中でハシゴをはずし、その後、米軍主導によるPKO(平和維持活動)など戦後処理を含め南シナ海でアメリカがイニシアチブを握る。そして当該地域に眠るエネルギー資源の開発権を手中にする狙いがある。つまりけしかけられた安倍首相は、自分から王手飛車にかかりに行っている。
欧米列強と肩を並べて東京裁判史観を払しょくする
だが、その安倍首相にも彼なりの「同床異夢」がある。目の上のたんこぶである中国を叩き、アジアでのヘゲモニーを握ることで自虐史観を解消したい歴史修正主義者の安倍首相にとってもメリットは大きい。
中国と偶発的な接触や小競り合いが起これば、大義名分ができる。膨張主義を取る中国が少しでも仕掛けてくれば、「自衛」の名のもとに安倍首相は喜んでやる気だ。集団的自衛権でアメリカを活用し、危険物を除去するチャンスである。
加えて中国の首をあげることで「明治の志し」を遂げて欧米列強と肩を並べ、東京裁判史観の払拭につなげたい――。リベラル派が言い募る「命」や「人権」などとは程遠い、これがリアル・ポリティクスである。
かくて日本とアメリカの奇妙な共犯関係が成立した。事態は刻々と進行している。
南シナ海での中国の埋め立て行為を非難する声明を日米が発表
すでに第一陣として日本は、南シナ海で中国と揉めるフィリピンと、防衛装備品の移転について6月初旬にも合意する見込みだ。海上自衛隊のP3C哨戒機やレーダー、艦載ミサイルなどをフィリピンへ供与する。中国と対立するフィリピンに日本の装備品が渡れば、すなわち日本が中国に宣戦布告したも同じだ。
また5月29日にはシンガポールで「アジア安全保障会議」(英国際戦略研究所主催)が開かれたが、これに合わせて日本の中谷元防衛相と米国のカーター国防長官らが会談し、「南シナ海における中国の埋め立て行為に深刻な懸念を表明する」との声明を発表した。
さらにカーター国防長官は同会議における演説でも中国を重ねて非難し、埋め立てを即時中止するよう要求。演説会場にいた中国軍の趙小卓上級大佐がこれに反論し、2人は激しい応酬を繰り返した。一触即発の展開である。
事態は急速度でアメリカのシナリオ通りに進んでいる。あとは日中開戦がいつになるか? だけだ。
日本はアメリカにけしかけられて矢面に立ち、ハシゴをはずされないよう注意しなければならない。あのウクライナのように。
中国と戦争したい安倍首相はマッチポンプだ。自衛隊が「できること」を格段にふやして自分から中国を刺激し、他方、「いざというときはよろしく頼む」と集団的自衛権の行使容認でアメリカにアメを舐めさせる。これでいざ対中国戦が始まれば、安倍首相の思惑通り日米連合軍 vs 中国の構図になる――。
日本は2000年の第一次アーミテージ・レポートから第三次アーミテージ・レポート(2012年)により、ずっとアメリカから集団的自衛権行使を容認するよう要求を突きつけられてきた。例えば、第一次レポートには以下のようにある。
『日本が集団的自衛権の行使を禁止していることは、同盟への協力を進める上での制約となっている。これを解除することにより、より緊密で効率的な安保協力が可能になるだろう。これは日本国民だけが決断できることである』
他方、中国は南シナ海はじめ着々と海洋進出の地固めをしている。もちろん尖閣もそのひとつだ。いつか利害が日本と衝突する可能性は高い。かねてから中国を叩きたかった安倍首相は、このアメリカからの集団的自衛権の行使容認要求と、中国の覇権化を同時に利用する手を思いついた。それが今回の新安保法制に隠された裏の狙いだ。つまり日本がアメリカの戦争に巻き込まれるのでなく、日本がアメリカを戦争に巻き込み主導権を握るシナリオである。
日本を南シナ海で中国にけしかけ漁夫の利を狙うアメリカ
アメリカは国力が衰えて覇権に陰りが見え、彼らによる一極支配は終わろうとしている。もはやアメリカ一国では「世界の警察官」は務まらない。そこで保安官助手を買って出たのが安倍政権だった。アメリカから見れば手足が増え、かさむ戦費も分担してもらえる。いいことづくめだ。
だがアメリカには密かな狙いがある。戦争の歴史は、エネルギー資源をめぐる列強の闘争の歴史だ。南シナ海も例外ではない。中国がしきりに岩礁の埋め立てを進める南シナ海は「第二のペルシャ湾」ともいわれ、膨大な量のエネルギー資源が埋蔵されている。米エネルギー情報局(EIA)では、石油の埋蔵量が110億バレル、ガスの埋蔵量が190兆立方フィートにも上ると推計している。
加えて南シナ海は日本の「ノド元」に当たる。日本に供給されるエネルギー資源などの90%近くが南シナ海を経由して運ばれている。シーレーンの要衝だ。この地域での軍事的緊張は、日本の「存立を脅かす事態」である。現に第三次アーミテージ・レポート(2012年)でも、「日本は航行の自由を確保するために、アメリカと協力して南シナ海の監視を強化すべきである」と重要性が強調されている。
そこでアメリカが描くシナリオでは、まず南シナ海をめぐり日本と中国が戦火を交え(というより好戦的な安倍首相を中国にけしかけて)途中でハシゴをはずし、その後、米軍主導によるPKO(平和維持活動)など戦後処理を含め南シナ海でアメリカがイニシアチブを握る。そして当該地域に眠るエネルギー資源の開発権を手中にする狙いがある。つまりけしかけられた安倍首相は、自分から王手飛車にかかりに行っている。
欧米列強と肩を並べて東京裁判史観を払しょくする
だが、その安倍首相にも彼なりの「同床異夢」がある。目の上のたんこぶである中国を叩き、アジアでのヘゲモニーを握ることで自虐史観を解消したい歴史修正主義者の安倍首相にとってもメリットは大きい。
中国と偶発的な接触や小競り合いが起これば、大義名分ができる。膨張主義を取る中国が少しでも仕掛けてくれば、「自衛」の名のもとに安倍首相は喜んでやる気だ。集団的自衛権でアメリカを活用し、危険物を除去するチャンスである。
加えて中国の首をあげることで「明治の志し」を遂げて欧米列強と肩を並べ、東京裁判史観の払拭につなげたい――。リベラル派が言い募る「命」や「人権」などとは程遠い、これがリアル・ポリティクスである。
かくて日本とアメリカの奇妙な共犯関係が成立した。事態は刻々と進行している。
南シナ海での中国の埋め立て行為を非難する声明を日米が発表
すでに第一陣として日本は、南シナ海で中国と揉めるフィリピンと、防衛装備品の移転について6月初旬にも合意する見込みだ。海上自衛隊のP3C哨戒機やレーダー、艦載ミサイルなどをフィリピンへ供与する。中国と対立するフィリピンに日本の装備品が渡れば、すなわち日本が中国に宣戦布告したも同じだ。
また5月29日にはシンガポールで「アジア安全保障会議」(英国際戦略研究所主催)が開かれたが、これに合わせて日本の中谷元防衛相と米国のカーター国防長官らが会談し、「南シナ海における中国の埋め立て行為に深刻な懸念を表明する」との声明を発表した。
さらにカーター国防長官は同会議における演説でも中国を重ねて非難し、埋め立てを即時中止するよう要求。演説会場にいた中国軍の趙小卓上級大佐がこれに反論し、2人は激しい応酬を繰り返した。一触即発の展開である。
事態は急速度でアメリカのシナリオ通りに進んでいる。あとは日中開戦がいつになるか? だけだ。
日本はアメリカにけしかけられて矢面に立ち、ハシゴをはずされないよう注意しなければならない。あのウクライナのように。