すちゃらかな日常 松岡美樹

サッカーとネット、音楽、社会問題をすちゃらかな視点で見ます。

【森保ジャパン】3-0で勝てた試合だった 〜日本1-1ベネズエラ

2018-11-17 21:52:34 | サッカー日本代表
3つのミスで勝ちゲームを逃す

 来年1月のアジアカップに向け、いよいよ最後の強化試合となる「11月シリーズ」が始まった。まずは16日に行われた、歯ごたえのあったベネズエラ戦。日本代表は中島、南野、堂安の2列目が躍動しチャンスも作った。だが痛いミスも犯し、3つの大きなミスで勝ちゲームを逃した。

 ひとつめのミスは前半25分。堂安の逸機だ。南野が大迫に縦パスを通し、大迫は横についた堂安にパス。その堂安は軽やかに反転しながらGKの上を狙うシュートを放つが、コースが左に逸れた。GKとの完全な1対1。決めておきたい絶好のチャンスだった。

 ふたつめのミスは前半33分。中島が外した絶好機だ。CBの冨安がハイボールを競ったこぼれ球をMF遠藤が拾い、ワントップの大迫にすばらしい縦パスを通す。受けた大迫は裏抜けを狙い走り込む中島の前のスペースにスルーパスを出す。中島はGKと完全な1対1になったがシュートを弾かれた。これも決めたい一発だった。

 第3のミスは後半35分。自陣ペナルティエリア内で、SBの酒井が意味のないファウルを犯しPKを取られた。あの局面では酒井は敵ボールホルダーの進路を単にふさぐだけでよく、チャージする必要などまったくなかった。酒井は前半39分にすばらしいダイレクトボレーで日本の1点目をもぎ取ったが、1失点の契機も作ってしまった。完全なひとり相撲だ。

 とはいえ日本は素早いトランジション(攻守の切り替え)や爆発的なゲーゲンプレッシング、柴崎&遠藤が組む中盤の底のコンビネーションの熟成など収穫も目立ち、驚いたことにマンチェスター・シティとリバプールのいいとこ取りをしたようなチームになりつつある。

 確かに森保監督が就任してからこれまでの3試合とくらべ、課題は多く残った。ベネズエラの「日本研究」の前によさを消された。また前の選手を4人代えた後半22分以降は試合の流れをつかめず、層の薄さも露呈した。だが、あとは終えた試合の分析を今後に活かせばいい。その意味では引き分けに終わったとはいえ、相対的に実り多かったといえるテストマッチだった。

日本の攻撃を引っ張る3つの積極性

 日本のフォーメーションはこの日も4-2-3-1だ。スタメンはGKがシュミット・ダニエル。最終ラインは右から酒井(宏)、冨安、吉田、佐々木。セントラルMFは柴崎岳と遠藤航のコンビ。2列目は堂安と南野、中島。ワントップは大迫だ。

 さて森保ジャパン最大の売りは3つの積極性である。それは仕掛けと奪回、そして縦への意欲だ。

 まずひとつめ。日本は中島や堂安、南野ら前の選手が敵陣でボールを持てば、前さえ向けたらどんどんドリブルやスルーパスで仕掛けて行く。非常に貪欲だ。ボールロストを決して恐れない。

 そして日本はボールを失ってもリトリートせず、その場で激しくプレスをかけて即時奪回を狙う。ゲーゲンプレッシングである。ボールをロストした瞬間に素早く切り替え、「攻撃的な守備」に突入する。1人目が外されれば2人目がボールに襲いかかり、それでもだめなら3人目が行く。これで相手ゴールに少しでも近い位置でボールを奪い、ショートカウンターをかける。

 残る第3の積極性は、選手のベクトルが常に前を向いている点だ。日本のボールホルダーはまず第一選択として意欲的に縦パスを狙う。これは最終ライン発のビルドアップから中盤、アタッキングサードに至るまで一貫している。

 例えば足元に優れるGKのシュミット・ダニエルが、正確無比なロングボールをワントップの大迫めがけて射し込んで行く。リバプールのようなダイレクト攻撃である。これに大迫は胸トラップ一発で応えて簡単に前を向き、ボールを収める。と、日本はたちまちアタッキングサードでボールをキープできる。

 それだけでなくCBの吉田やセントラルMFの柴崎は、スキさえあれば裏抜けを狙う味方に対し敵DFの背後を突く鋭いスルーパスを放っていた。若いCBの冨安も縦パスが非常にいい。

 これに呼応して堂安は機敏に動き出し、敵のゾーンのギャップを突く。彼はボールが来るより先に走り出し、自分がもらいたい前のスペースをカラダで示す。「ここに出せ」と。スペースでもらうのが決定的にうまい選手である。

トランジションが勝負のカギを握る

 森保ジャパンの2列目の3人はいずれも攻守の切り替えが速いが、なかでも南野はトランジションの申し子のような選手である。彼はワンプレイ終わっても絶対に足を止めない。攻撃でも守備でも、二の矢、三の矢を狙って必ず次の動き出しをする。非常にハングリーだ。

 そしてこれは南野に限った話ではなく、いかにネガティブ・トランジションとポジティブ・トランジションの時間差を縮め、時間軸をシームレスにすることで攻守を活発化させるか? がチームのプレイ原則として一貫している。

 だから森保ジャパンでラストパスが出る局面では、最低3〜4人がいいポジショニングをしてゴール前に詰めているし、逆に守備では、この試合の前半10分に日本のミスから放たれた致命的な敵のシュートにゴール前でスライディングしながらボールを自ゴールから掻き出したCB冨安のような超ファインプレイも生まれる。

 すべては「次の瞬間に自分は何をすべきか?」を絶えず頭の回転を止めずにイメージしているから起こることだ。そして敵は、そんな日本の素早いトランジションについて行けずに失点する。こんなふうに現代フットボールにおいてトランジションは決定的に勝負のカギを握っている。

見応えある中盤の底のコンビネーション

 最後にこのゲームの収穫としてあげておきたいのは、柴崎と遠藤の2人で組む中盤の底のコンビネーションである。

 柴崎はロシアW杯での華麗なレジスタぶりが印象に残るため「消えている」かのように感じてしまうが、よく観察すると森保ジャパンの若い強烈な2列目を生かすための地道で黒子的なポジショニングをしていることがわかる。注意深くバイタルを埋め、最終ラインからボールを引き出し、シンプルに前につないでいる。

 かたや遠藤は積極的に前へ出てアグレッシブに相手ボールを刈り取るチェルシーのカンテ的なスタイルを発展させてきており、そのとき柴崎は後ろにステイしてしっかりバランスを取っている。また、その逆もしかり。いわゆる、つるべの動きがきれいに成立している。

 彼ら2人はたがいの動きを細かく見ながら自分のポジショニングを決めている。そのコンビネーションの完成度がどんどん高まってきている。これは大きい。

 さて最後の最後に選手別で3人だけに触れれば……途中出場した原口はよく走って多くのチャンスを作った。ドリブルもキレている。実にアグレッシブで、意欲とガッツが気持ち良かった。彼ならではの泥臭い守備面も込みで考えれば、ライバルの同じ左サイド・中島といい勝負だろう。

 そして瞬発力のあるすばらしいロングキックを連発したGKのシュミット・ダニエルと、いい縦パスとナイスカバーを見せつけたCB冨安の2人はぜひ今後も続けて起用し、大きく育ててほしい。森保監督への切なる願いだ。

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