少ないタッチ数のパスワークが冴える
森保ジャパンは9月12日にベルギーのヘンクで行なわれたキリンチャレンジカップで、トルコ代表と対戦した。MF中村敬斗の2ゴールなどで4-2と日本が大勝した。日本は控え組だったが少ないタッチ数でテクニカルにパスを繋ぎ、トルコ・ゴールを次々に陥れた。4ゴールのほか、久保建英と古橋亨梧にポストを叩いた惜しいシュートが1本づつあった。
なかでもトップ下に入った久保は鮮やかなパスとドリブル、精力的なプレッシングでチームに貢献した。ただ消えている時間があったのは課題だが。
この日の日本はいつもとちがい、強くて速いグラウンダーのボールを2タッチ以内で丁寧に繋いで最終ラインからビルドアップする意図が感じられた。これは劇的なトランジションとショートカウンター志向に偏る、いつものレギュラー組にはない趣向だ。部分的にでもポゼッションスタイルを取り入れようとする森保監督の新しいトライなのだろう。
日本のFIFAランキングは20位。一方のトルコはFIFAランキング41位だが、現在行われているEURO2024予選のグループDで勝ち点10を積み上げ2位につけている中堅国だ。彼らは2002年の日韓W杯で3位に入って以来、W杯には出場していない。
ただしタレントは豊富だ。インテルに所属する攻撃的MFハカン・チャルハノールやベンフィカでプレーするMFオルクン・コクチュ、ドルトムント所属のMFサリフ・エズジャン、A・マドリーのチャグラル・ソユンク、ホッフェンハイム所属のDFオザン・カバクなど枚挙にいとまがない。ただし今日のスタメンは控え組だが。
さて日本は9日の衝撃のドイツ戦からスタメンを10人変えてきた。今日はサブ組がどこまでやるか? が見られる貴重なテストマッチだ。結論から先に言えば、特に伊藤敦樹(浦和レッズ)と中村敬斗(スタッド・ランス)、毎熊晟矢(セレッソ大阪)には驚かされた。
日本のフォーメーションは4-2-3-1。スタメンはGKが中村航輔。最終ラインは右から毎熊晟矢、谷口彰悟、町田浩樹、伊藤洋輝が構える。CMFは伊藤敦樹と田中碧。2列目は右から堂安律、久保、中村敬斗。ワントップは古橋だ。
対するトルコのフォーメーションは4-1-2-3である。
伊藤敦樹が痛烈な先制弾を放つ
試合が始まっていきなりの前半15分だった。MF伊藤敦樹が右サイドからドリブルで切れ込み、ボックス内の堂安とワンツーをかまして左足を振る。ゴール右上スミに目の覚めるような代表初ゴールを叩き込んだ。ボールはゴール目がけて一直線に弾けるように飛んだ。新顔からいきなりのプレゼントだ。
トルコはなかなかプレスが厳しいチームだ。だが日本もトップ下の久保を中心に積極的にプレスしている。特に久保はいまやすっかり、かつては足りなかった献身性を身につけており、しつこく敵の足元に圧力をかけ続ける。すばらしい。
19分。その久保が中央をドリブルで持ち上がり、古橋亨梧にラストパス。古橋はシュートを打つが決まらず。彼に関してはこのときイヤな予感がしたが、のちに的中してしまった。
続く25分。久保が右から中へドリブルでカットインし、ダイアゴナルランした堂安にスルーパスを出すが合わず。ただ、日本は初顔合わせながら、なかなかテクニカルなパスワークを見せている。いきなりのサブ組の実戦なのでどうなることか? と思っていたが、まったくの杞憂に終わった。いつものスタメン組に劣らない魅力がある。
中村敬斗がゴラッソを決める
さてこの日の主役がゴールを決めたのが28分だった。久保がボックス手前の中央からシュートし、GKが胸の中心で両手を使って弾いたこぼれ球に合わせて中村敬斗がゴラッソを決めた。
これで伊藤敦樹と右SB毎熊晟矢をワンプレーづつ見たが、彼らは地を這うようなパスを出している。特に伊藤敦樹は腰の入ったいいインサイドキックを持っている。毎熊も非常によく、これなら右SBは菅原と合わせて安泰だ。
さて36分、その毎熊が起点になった。彼はボール奪取から右サイドをドリブルし、果敢にボックス内へ侵入する。そしてきれいに折り返す。これに合わせた中村敬斗が右足で敵の股を抜き、この日2ゴール目を叩き出した。
中村はシュートがうまい。決してふかさず、きれいに抑えてコースを狙って決めている。ただし彼は消えている時間も長い。所属のスタッド・ランスでもそうだ。フォワードもできる彼は、「(けっこう消えているが)ここぞの場面で一発を決めるストライカー役」の方が向いているのかもしれない。
日本、トルコ双方とも守備時4-4-2でプレーしている。と、左SBのあの伊藤洋輝がなんと敵陣に攻め上がっているぞ、と思った瞬間にオフサイドになった(笑)
トルコが反撃の牙をむいたのが44分だった。彼らは左ボックス角手前でFKを得る。キッカーの左IHコクチュがゴール前のファーに入れたボールを右SBミュルドゥルがヘッドで折り返し、GK中村航輔が弾いたボールをCBカバクが詰めた。3-1だ。このときの接触でGK中村が肩を強く打ち、シュミット・ダニエルと交代した。
途中出場の伊東純也がPKを決め突き放す
日本は後半の立ち上がりから堂安に代えて伊東純也、中村に代えて前田大然、毎熊に代えて橋岡大樹を投入してきた。トルコもスター選手のチャルハノールを入れる。
前田はさすがのプレッシングだ。強力で圧がある。彼はボールに強く行くよう、本能がカラダを動かしてるんだろうな、という印象だ。
今日のメンバーはボールのタッチ数が少なく、いい感じだ。CMFの伊藤敦樹は最終ラインのカバーリングも怠らず、好プレーを続けている。彼は遠藤&守田に替わる重要なオプションになりそうだ。毎熊も攻撃面で光るセンスがある。
だがそんな後半16分にトルコが追撃の火の手をあげる。パスを受けた途中出場のFWユンデルがボックス左からマイナスの折り返しを入れ、谷口と町田に当たりコースが変わったボールをFWユルドゥルムが押し込んだ。3-2。1点差だ。
これに対し古橋は3度目のシュートチャンスがあったが決められず。彼はライン裏に抜ける動きや動き直しを献身的に続けておりすばらしいのだが、実らない。なんとか彼を爆発させるテはないものか?
後半18分、日本は伊藤敦樹に代えてCMF遠藤航を投入した。トルコが一軍クラスを投入する何人かのメンバーチェンジのあと盛り返し、今やすっかり彼らのゲームになっている。縦横にパスを回され、圧をかけられている。
そんな30分だった。伊東純也がドリブルでボックス内に侵入し、ファウルを受けPKになる。伊東自身がキッカーを務め、ゴール右スミに落ち着いて決めた。4-2だ。続く34分には町田に代えてCB冨安健洋を投入する。試合の締め役だろう。そしてゲームセット。日本は追いすがるトルコを突き放した。
荒削り上等、そのぶん将来性がある
新しいメンバーを何人も見られた点で実り多い試合だった。急ごしらえなのでチームとしての連携は当然、機能しないのが当たり前だ。特にいつも一緒に何試合も実戦を積み上げてきているレギュラー組とくらべて、四の五の言うのは論外だろう。個人的には、それよりむしろそれぞれを「個」として見た。光るものはあった。
彼らはもちろん甘さもあるが、ふだん代表戦に出てない控え組の彼らにあまり厳しいことを言う気がしない。むしろ個として見るべきものがあるぶん、なでしこジャパンと同様、伸び代が大きいと感じる。将来が楽しみだ。
森保監督が言うように、なんだか「W杯優勝を目指そうかな?」というおおらかな気分になってきた。
森保ジャパンは9月12日にベルギーのヘンクで行なわれたキリンチャレンジカップで、トルコ代表と対戦した。MF中村敬斗の2ゴールなどで4-2と日本が大勝した。日本は控え組だったが少ないタッチ数でテクニカルにパスを繋ぎ、トルコ・ゴールを次々に陥れた。4ゴールのほか、久保建英と古橋亨梧にポストを叩いた惜しいシュートが1本づつあった。
なかでもトップ下に入った久保は鮮やかなパスとドリブル、精力的なプレッシングでチームに貢献した。ただ消えている時間があったのは課題だが。
この日の日本はいつもとちがい、強くて速いグラウンダーのボールを2タッチ以内で丁寧に繋いで最終ラインからビルドアップする意図が感じられた。これは劇的なトランジションとショートカウンター志向に偏る、いつものレギュラー組にはない趣向だ。部分的にでもポゼッションスタイルを取り入れようとする森保監督の新しいトライなのだろう。
日本のFIFAランキングは20位。一方のトルコはFIFAランキング41位だが、現在行われているEURO2024予選のグループDで勝ち点10を積み上げ2位につけている中堅国だ。彼らは2002年の日韓W杯で3位に入って以来、W杯には出場していない。
ただしタレントは豊富だ。インテルに所属する攻撃的MFハカン・チャルハノールやベンフィカでプレーするMFオルクン・コクチュ、ドルトムント所属のMFサリフ・エズジャン、A・マドリーのチャグラル・ソユンク、ホッフェンハイム所属のDFオザン・カバクなど枚挙にいとまがない。ただし今日のスタメンは控え組だが。
さて日本は9日の衝撃のドイツ戦からスタメンを10人変えてきた。今日はサブ組がどこまでやるか? が見られる貴重なテストマッチだ。結論から先に言えば、特に伊藤敦樹(浦和レッズ)と中村敬斗(スタッド・ランス)、毎熊晟矢(セレッソ大阪)には驚かされた。
日本のフォーメーションは4-2-3-1。スタメンはGKが中村航輔。最終ラインは右から毎熊晟矢、谷口彰悟、町田浩樹、伊藤洋輝が構える。CMFは伊藤敦樹と田中碧。2列目は右から堂安律、久保、中村敬斗。ワントップは古橋だ。
対するトルコのフォーメーションは4-1-2-3である。
伊藤敦樹が痛烈な先制弾を放つ
試合が始まっていきなりの前半15分だった。MF伊藤敦樹が右サイドからドリブルで切れ込み、ボックス内の堂安とワンツーをかまして左足を振る。ゴール右上スミに目の覚めるような代表初ゴールを叩き込んだ。ボールはゴール目がけて一直線に弾けるように飛んだ。新顔からいきなりのプレゼントだ。
トルコはなかなかプレスが厳しいチームだ。だが日本もトップ下の久保を中心に積極的にプレスしている。特に久保はいまやすっかり、かつては足りなかった献身性を身につけており、しつこく敵の足元に圧力をかけ続ける。すばらしい。
19分。その久保が中央をドリブルで持ち上がり、古橋亨梧にラストパス。古橋はシュートを打つが決まらず。彼に関してはこのときイヤな予感がしたが、のちに的中してしまった。
続く25分。久保が右から中へドリブルでカットインし、ダイアゴナルランした堂安にスルーパスを出すが合わず。ただ、日本は初顔合わせながら、なかなかテクニカルなパスワークを見せている。いきなりのサブ組の実戦なのでどうなることか? と思っていたが、まったくの杞憂に終わった。いつものスタメン組に劣らない魅力がある。
中村敬斗がゴラッソを決める
さてこの日の主役がゴールを決めたのが28分だった。久保がボックス手前の中央からシュートし、GKが胸の中心で両手を使って弾いたこぼれ球に合わせて中村敬斗がゴラッソを決めた。
これで伊藤敦樹と右SB毎熊晟矢をワンプレーづつ見たが、彼らは地を這うようなパスを出している。特に伊藤敦樹は腰の入ったいいインサイドキックを持っている。毎熊も非常によく、これなら右SBは菅原と合わせて安泰だ。
さて36分、その毎熊が起点になった。彼はボール奪取から右サイドをドリブルし、果敢にボックス内へ侵入する。そしてきれいに折り返す。これに合わせた中村敬斗が右足で敵の股を抜き、この日2ゴール目を叩き出した。
中村はシュートがうまい。決してふかさず、きれいに抑えてコースを狙って決めている。ただし彼は消えている時間も長い。所属のスタッド・ランスでもそうだ。フォワードもできる彼は、「(けっこう消えているが)ここぞの場面で一発を決めるストライカー役」の方が向いているのかもしれない。
日本、トルコ双方とも守備時4-4-2でプレーしている。と、左SBのあの伊藤洋輝がなんと敵陣に攻め上がっているぞ、と思った瞬間にオフサイドになった(笑)
トルコが反撃の牙をむいたのが44分だった。彼らは左ボックス角手前でFKを得る。キッカーの左IHコクチュがゴール前のファーに入れたボールを右SBミュルドゥルがヘッドで折り返し、GK中村航輔が弾いたボールをCBカバクが詰めた。3-1だ。このときの接触でGK中村が肩を強く打ち、シュミット・ダニエルと交代した。
途中出場の伊東純也がPKを決め突き放す
日本は後半の立ち上がりから堂安に代えて伊東純也、中村に代えて前田大然、毎熊に代えて橋岡大樹を投入してきた。トルコもスター選手のチャルハノールを入れる。
前田はさすがのプレッシングだ。強力で圧がある。彼はボールに強く行くよう、本能がカラダを動かしてるんだろうな、という印象だ。
今日のメンバーはボールのタッチ数が少なく、いい感じだ。CMFの伊藤敦樹は最終ラインのカバーリングも怠らず、好プレーを続けている。彼は遠藤&守田に替わる重要なオプションになりそうだ。毎熊も攻撃面で光るセンスがある。
だがそんな後半16分にトルコが追撃の火の手をあげる。パスを受けた途中出場のFWユンデルがボックス左からマイナスの折り返しを入れ、谷口と町田に当たりコースが変わったボールをFWユルドゥルムが押し込んだ。3-2。1点差だ。
これに対し古橋は3度目のシュートチャンスがあったが決められず。彼はライン裏に抜ける動きや動き直しを献身的に続けておりすばらしいのだが、実らない。なんとか彼を爆発させるテはないものか?
後半18分、日本は伊藤敦樹に代えてCMF遠藤航を投入した。トルコが一軍クラスを投入する何人かのメンバーチェンジのあと盛り返し、今やすっかり彼らのゲームになっている。縦横にパスを回され、圧をかけられている。
そんな30分だった。伊東純也がドリブルでボックス内に侵入し、ファウルを受けPKになる。伊東自身がキッカーを務め、ゴール右スミに落ち着いて決めた。4-2だ。続く34分には町田に代えてCB冨安健洋を投入する。試合の締め役だろう。そしてゲームセット。日本は追いすがるトルコを突き放した。
荒削り上等、そのぶん将来性がある
新しいメンバーを何人も見られた点で実り多い試合だった。急ごしらえなのでチームとしての連携は当然、機能しないのが当たり前だ。特にいつも一緒に何試合も実戦を積み上げてきているレギュラー組とくらべて、四の五の言うのは論外だろう。個人的には、それよりむしろそれぞれを「個」として見た。光るものはあった。
彼らはもちろん甘さもあるが、ふだん代表戦に出てない控え組の彼らにあまり厳しいことを言う気がしない。むしろ個として見るべきものがあるぶん、なでしこジャパンと同様、伸び代が大きいと感じる。将来が楽しみだ。
森保監督が言うように、なんだか「W杯優勝を目指そうかな?」というおおらかな気分になってきた。