すちゃらかな日常 松岡美樹

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【女子W杯2023 決勝T】なでしこ、藤野の超絶スルーパス炸裂で3発8強入り 〜日本 3-1 ノルウェー

2023-08-06 11:13:51 | なでしこジャパン(ほか女子サッカー)
大会5ゴール目の宮澤が澤穂希の「記録」に並ぶ

 女子W杯の決勝トーナメント1回戦が5日に行われ、なでしこジャパンが古豪ノルウェーに3-1で快勝した。これで日本は2大会ぶりの8強入りだ。次は日本時間11日(祝日)16時30分からの準々決勝で、スウェーデンvsアメリカの勝者と対戦する。NHKが16時10分から総合テレビ(地上波)で生中継する。

 日本は相手のオウンゴールとWB清水梨紗のパスカット弾、MF宮澤ひなたの今大会5ゴール目で3点をあげて勝ち切った。なでしこはこれで今大会通算14ゴール。初優勝した2011年大会での「12ゴール」を上回り、1大会での日本代表最多記録を塗り替えた。

 ノルウェーは裏のスペースを警戒し、低く構えて5-4-1の専守防衛で来た。これに対し日本はカウンターに徹した前節スペイン戦とは打って変わって、パスを繋ぐポゼッションスタイルで迎え撃つ。

 日本のフォーメーションは3-4-2-1。スタメンはGKが山下杏也加だ。最終ラインは右から高橋はな、熊谷紗希、南萌華が構える。

 右ウイングバックは清水梨紗、左ウイングバックは遠藤純。セントラルMFはエースの長谷川唯と長野風花だ。2シャドーは新鋭・藤野あおばと宮澤ひなた。ワントップは田中美南だ。

パスサッカー対カウンター狙いの対決だ

 今日の日本はボールを保持するポゼッションサッカーで来た。攻撃時は3バックで最終ラインからていねいにパスを繋いでビルドアップする。

 また中盤では少ないタッチ数ですばやくボールを回し、フィニッシュは女子では珍しいライン裏を狙った高度なスルーパスを射し込む。
 
 一方、ノルウェーは攻撃時、2バックでビルドアップする。守備時のフォーメーションは5-4-1だ。彼女たちはボールを失うとリトリートし、自陣にローブロックを組む。最終ラインを低くして日本にボールを持たせる。

 ポゼッションスタイルでスタートした日本としては、相手が守備的に来てくれたのは望むところだ。理屈の上では、そのままボールを保持し続ければ失点する心配はない。まあその理屈通りに行かないのがサッカーなのだが。

ノルウェーの「高さ」が爆発する

 さて前半15分だ。宮澤が左サイドからアーリークロスを入れると、クリアしようとしたノルウェーDFの足にボールが当たってそのまま敵のゴール左スミに入る。オウンゴールだ。最高の形である。

 敵のクリアがオウンゴールになるということは、それだけ宮澤のアーリークロスが際どいコースを突いていた、ということだ。半分は宮澤の得点だ。

 だがノルウェーも反撃に出る。同19分だ。ノルウェーのリサが右サイドからマイナスのクロスを入れ、ゴール前に走り込んだレイテンが競り合いに勝ってヘディングシュートを決め同点に追いつく。日本は今大会、初失点だ。

 サイドからのハイクロスはノルウェーの得意形である。警戒していた彼らの「高さ」にやられた。やはりカラダを張ったボールの競り合いになると日本は弱い。なでしこ最大の弱点が出た。

 また日本は速攻ができる局面でも、いったんバックパスしてわざわざ遅攻にする。日本の男女によく見られる「バックパス症候群」だ。そうじゃなく相手がバランスを崩して速攻が利く局面では、時間を置かずに早く攻めたい。なでしこはもっと縦に速い攻めができるはずだ。

 球際の競りの弱さと遅攻偏重。この2つはなでしこの大きな課題だ。

 加えて日本は攻めが左サイドに偏っているのも気になる。日本の武器である左ウイングバックの遠藤にボールを集めたのかもしれないが、常に彼女が攻めの起点になり左右が偏っている。

 かくて一進一退のまま前半が終わった。

後半の日本はプレスとカウンターを強化してきた

 後半に入り、日本はボールを保持する相手の最終ラインに前からプレスをかけるようになった。球際の競り合いにも挑んでいる。素早い切り替えからの縦に速いカウンター速攻も意識するようになった。ハーフタイムに池田監督から指示があったのだろう。これで後半、日本は見違えるように修正できた。

 そんな後半5分だ。日本は左サイドの遠藤に展開してから敵ゴール前の中央でいったんボールを失う。だがノルウェーがこともあろうにそのゴール前の密集地帯であわててバックパスに逃げたところを、すばらしい出足で走り込んだ清水が絶妙のパスカットをしてゴール右に鮮烈弾を叩き込んだ。2-1だ。

 日本はボールを失った瞬間に、清水が素早いネガティブ・トランジション(攻→守への切り替え)からボールを奪い返しカウンターを見舞った。奪われてもすぐに奪い返す。1-1から1点リードしたこの追加点が非常に大きかった。以後、ノルウェーは同点に追いつこうと前がかりになり、かえって日本のカウンターを食らうことになる。

 ところがノルウェーはここで切り札を出してきた。同29分に高さのある女子初代バロンドーラ―のアーダ・ヘーゲルベルグを途中投入し、サイドからのアーリークロスや縦へのロングボールを盛んに入れてくるようになったのだ。これが彼女たち本来の自分らの形だ。5-4-1の守備的な戦いから、高さを生かして攻撃的にシフトしてきた。

 フィジカルと高さを生かしたあのパワープレイを前半からガンガンやられていたら、勝負はもっとむずかしくなっていたかもしれない。その意味ではノルウェーが日本対策として5-4-1で引いて守って来たのは、「策士、策に溺れる」の感がある。

裏抜けした宮澤が得点ランキング1位の決定弾

 そして同36分。ノルウェーが前にかかって攻めた後に、日本が速いカウンターを仕掛ける。

 自陣で縦パスを受けてボールを運んだ藤野が、ドリブルで敵陣に持ち込み相手ライン裏へ完璧なグラウンダーのスルーパスを放つ。これで裏抜けし、前のスペースに飛び出した宮澤が左足でゴール右に美しいショットを決めた。3-1だ。

 あの藤野のとんでもない超絶的なスルーパスはどうだろう? 今大会、あんなすごいフィニッシュはなでしこジャパン以外に見たことがない。

 しかもそのパスを受けた宮澤は、2戦連発の今大会5ゴール目。得点ランキング1位である。これで彼女は、あのカリスマ・澤穂希が初優勝した2011年ドイツ大会で達成した日本人最多得点記録に並んだ。

 さあ日本がついにベスト8進出だ。だが、これはほんの序章にすぎない。次の準々決勝の対戦候補はともに優勝を狙っている。3連覇がかかるアメリカか、前回大会3位のスウェーデンか。どちらが来ても強敵だ。

 まだまだ「先」は長いのだ。

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