すちゃらかな日常 松岡美樹

サッカーとネット、音楽、社会問題をすちゃらかな視点で見ます。

【食料品の消費税0%論争】完全廃止か? 食料品だけ0%か? あなたはどっちに賛成ですか?

2025-02-21 14:23:17 | 政治経済
食料品0%を唱える「江田&泉房穂」陣営に元自民の安藤氏が疑問を投げた

 いま実はとても重要な議論が巻き起こっている。

 いろんな人が入り乱れ「消費税は減税すべきだ」と主張してる。だが、その減税のやり方が人によってちがう。手法がさまざま割れているのだ。

 つまり複数の人が異なる減税の手法を現状あれこれ提案している。しかもその各人が「あのAさんのやり方にはこんな欠陥がある」などと指摘していてややこしい。

 加えてその内容が素人さんには難解で口を差し挟めないのか、見たところ世論はいまいち盛り上がってない。

 どうにも事態は深刻さの度合いをどんどん増して行くーー。

【食料品の消費税ゼロ】皆さんからの質問に答えます(安藤裕チャンネルひろしの視点)
「食料品の消費税を0%にすると飲食店がバタバタ潰れる」という安藤氏。

 さて、ここで外野からひとつ呼び掛けたいのは、まず双方とも淡々と冷静に思考することだ。

 決して感情的になってはいけない。

 そしてもし自分の方が間違っていると分かったら、体裁を取り繕わない。その時点ですみやかに持論を改め、キッチリ軌道修正するのが肝心だ。

 くれぐれもそう願いたい。

立民・江田氏の案に対し安藤氏は「それでは飲食店がバタバタ潰れる」


 まず議論の前提になる事実関係と、その経緯を説明しよう。

 本ブログのこの記事でも書いた通り、立憲民主党の江田憲司・元代表代行が会長になり、昨年12月に時限的な食料品の消費税0%の実現をめざす勉強会「食料品の消費税ゼロ%を実現する会」を立ち上げた。

 江田さんは食料品に限定し、消費税を0%にしようと主張している。前兵庫県明石市長の泉房穂さんがそれに賛同し、これをきっかけに政権交代も視野に入れて連携している。

 ところがその泉さんらに対し、元自民党議員で積極財政派の安藤裕さんが異を唱えているのだ。

 いや別に悪気があってのことじゃない。単に「その手法にはこんな欠陥がありますよ」と指摘しているだけだ。

 安藤さんの解説によれば、江田さんが考えるやり方で食料品だけ消費税0%にすると、なんと「飲食店がバタバタ潰れる可能性もある」という。

 この手法を取ると売り手の側(飲食店などの事業者)が、かえって損をするケースが出てくるのだ。

 カンタンにいえば食料品の消費税を0%にすると、売り手の側のショップなどが「仕入れ税額控除」を受けられなくなり、損をしてしまう。

 だから大変なのだ。

安藤さん自身も当初「仕入れ額控除」に気づいてなかった

 実は当初、安藤さんもこれに気づいてなかった。だが飲食店を営むある視聴者からこの指摘があり、初めて安藤さんはこの落とし穴に気付いたという話だ。

 つまりプロの税理士で積極財政派の安藤さんですら、なかなか気づかなかった盲点なのである。それは素人には分かりにくいのも無理はない。

 ではなぜ食料品だけ消費税0%にすると売り手が損をするケースがあるのか? それは冒頭にあげた安藤さんのYouTube動画を見てほしい。

 安藤さんはかなり切実だ。

 強い危機感を感じている。

 そしてこんなふうに、その後もこのテーマについて何本も同じ趣旨の動画をアップロードしている。つまりそれだけヤバい問題だ、という認識だ。

目的は同じなのになぜひとつにまとまれないのか?

 この件について私見を述べれば、やはり国民のための政策をやるには「直球一直線」が正しいのかな? と感じる。

 例えば国民民主党の玉木雄一郎代表が主張する「103万円の壁の引き上げ」にしろ、今回の「食料品限定の消費税0%」にしろ……ターゲットにする眼目を部分的に限定するやり方では、必ずどこかに無理が生じるんだろうな、という印象だ。

 もうひとつ、疑問を感じる点がある。

 例えば積極財政派が政策を出す場合、みなさん財務省やら政府やら体制側に気を使ってでもいるのか、ストレートなやり方をしないのだ。

 で、上記のように品目など対象を限定して小規模にし、なるべく権力側を刺激しないやり方を取ろうとする。

 だが今回のようにその手法では、かえって無理が生じて破綻するのかも? 安藤さんの説によればそういう理屈だ。

 とすればやはり安藤さんが言うように、消費税は「完全廃止」または「5%減税」のどちらかで賛同者がスッキリまとまるのがベストな感じがする。

 これで大きな塊を作り、政権を取りに行くのが正攻法だろうと思える。

 もちろん関係者の皆さんはそれぞれ個別の事情がありなかなか難しいだろうが、ここは国民のためにぜひハードルを乗り越えリスクを取ってほしいなと感じる。

自公政権は非情な構造改革路線だ

 以降は、この件に関連する傍論だ。

 おそらく日本政府やその意を受けた財務省は、貧乏な個人ほど負担が重くなる(逆進性の高い)消費税を道具に使い、下層階級を日本から一掃したいのだろう。

 これは2020年から2021年にかけて続いた自公政権のトップ・菅義偉首相が、あからさまに明言していた方向性だ。つまり極端な新自由主義にもとづく政権運営である。

 当時は「えっ? そんな酷いプランを考えているのか?」と非常に驚いたものだ。自民党はあれから少しも変わってない。

 ハッキリ言えば、「1%(高所得者層) vs 99%(下層階級)」の構図で示される99%の階層を完全に「抹消」し、全国民の1%にすぎない高所得者層だけを対象に国家運営をしたいのだ。これなら例えば福祉に使う財源なんていらない。

 つまり少なくとも政権側から見れば、余計な予算がいらず効率的だ。

 また一市民だけでなく、企業に関しても同じことがいえる。

 自公政権は経済界をスクラップ&ビルドして中小企業をなくし、能率の高い社会にしたがっている。これもあの菅・元首相がモロに公言していた。例えば以下の記事のようなストーリーだ。

菅内閣は「中小企業つぶし」という日本経済つぶしを押し進めている』(ダイヤモンド・オンライン / 室伏謙一:室伏政策研究室代表)
https://diamond.jp/articles/-/256479

 そして日本を高所得者と大企業ばかりの国にし、スリム化を図る。金持ちと大企業だけで省力化し、効率的な国家運営をしたいと考えている。

 つまり消費税も、その目的を達成するためのツールのひとつなのだ。

 わかりやすい事例をあげれば、以下のページの「OECDはコロナ経済対策の転換を提言」の項を読めばわかる。すなわち構造改革路線である。

OECDのコロナ経済対策の提言と菅政権の中小企業再編』(野村総合研究所・金融ITイノベーション事業本部/木内登英)
https://www.nri.com/jp/media/column/kiuchi/20200918.html

 こんな政権は、一刻も早く倒さなければならない。

消費税は「預かり金」じゃない

 日本は折からのコストプッシュ・インフレによる物価高騰と、それに起因する消費の低迷ぶりが酷い。

 こんなふうに商品の価格が高くなれば、モノが売れない可能性もある。だから売り手(事業者側)は、消費税分は自分が被って安く根付けせざるを得なくなる。

 つまり消費税分を価格に転嫁できないわけだ。

 ただし正確には、このとき買った消費者自身が「消費税を払っている」わけではない。消費税は「預かり金」じゃない。

 基本、売り手は値段をいくらにしようが自由だ。だが高すぎると売れない可能性がある。だからもう自動的に「本体価格+おおよそ消費税に相当する金額=売り値だ」みたいな話になっているわけだ。あくまで消費税は事業者が国に納めるしくみである。

 ところが(政府の策略だと思うが)消費税の導入以来、長い間にわたり、あたかも商品を買うとき消費者自身が消費税を込みで払っているかのように錯覚させる作戦が取られてきた。

 例えば商品を買った際に店でもらうレシートや、チラシの価格表示などがそうだ。それらは揃って意図的に「偽装」されている。

 具体的には、例えば食料品のレシートなら以下のような表示がされている。外税の場合と、内税の場合をそれぞれ例に上げよう。(金額に意味はない)

◾️外税の場合(1)小計/1573円、外税・8%対象額/1573円、外税・8%/125円、合計・1698円。

◾️内税の場合(2)小計/600円、8%内税対象額/600円、内税額/44円、合計・600円。

 こんなふうに「税抜き価格」と「税込み価格」をわざわざ表示し、いかにも消費者が支払う商品の価格は「消費税込み」であるかのような洗脳が長年、行われてきた。

 またこうしたレシートやチラシのほか、店頭に置いてある商品の価格を客に示す値札にも、「本体価格100円、消費税込み110円」などと、インチキな表示がされている。

 だから「消費税は客が払った預かり金だ。だからそのカネを、もし事業者が国に消費税として納めなかったらネコババになる」という世間の認識ができてしまった。

 国がこんなふうに消費者を錯誤させた狙いは、将来的なインボイス導入を睨んでのものだったわけだが……これはちょっと話がそれるので今回はやめておく。

権力を握るためには手段を選ぶな

 最後に話をまとめよう。

 今回のちょっとしたモメ事を見て、なんだかちょっと「やれやれ」な気分になってしまった。

「消費税減税を進めたい」と考える人たち同士が争ってどうする? というお話に近い。

 例えばかつて「核兵器をなくしたい」という目的は同じなのに、60年代に旧日本社会党と日本共産党が反目し合い、結局、話がまとまらず核の廃絶は実現しなかった。それとまったく同じではないだろうか?

 政治はこんなふうに党派性にこだわるとダメなのだ。

「国民の負担を軽くして救おう」という目的は同じ。なのに、ある者は「じゃあ食料品だけを消費税0%にしよう」と考える。

 またある者は「ウチは(消費税じゃなく)所得税の控除幅を大きくする策で国民を救う。103万円の壁を上げさせるんだ」

 てんでバラバラだ。話がまとまらない。

 だから結局、大きな塊が作れない。いろんな小さい勢力が入り乱れ、めいめいが散発的に弾を打つだけに終わってしまう。

 非自民勢力は、そこが大きな弱点だ。

 だが一方の自民党なんて、権力を握るためには手段を選ばない。

 なんせ彼らは敵だったはずの社会党すら味方につけ、あの村山富市氏を首相にしてまで政権を作ったじゃないか?

 非自民勢力にはああいう大胆さや、いい意味での「無神経さ」がまったくない。

 昔の左翼みたいに党派性に過剰にこだわり、結果、目的は同じなのにひとつになれない。

 非自民勢力はそこを修正し、根本的に発想を変える必要がありそうだ。

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