すちゃらかな日常 松岡美樹

サッカーとネット、音楽、社会問題をすちゃらかな視点で見ます。

【W杯への修正点】4-1-4-1でバイタルを埋めろ

2018-03-29 10:49:15 | サッカー戦術論
プランBは本田の1トップと中島のセカンドトップだ

 まったくあのウクライナ戦からは多くの情報を得られた。非常に有意義なテストマッチだった。この試合から引き出せる修正点は数多いが、今回は「バイタル空くよ」問題と、W杯本番でリードされた場合のプランBについて考察してみよう。

 まず前者に対する修正点だ。結論から先にいえば、ハリルジャパンの守備のやり方では中盤の横幅を4枚(4-2-3-1のダブルボランチと2SH)で埋めるのは無理だ。

 実際、4-2-3-1で臨んだウクライナ戦では、サイドに開く敵MFにボランチがついて開いて中盤真ん中にスペースを空けてしまい、そこを狙われて失点した。しかもこの現象はウクライナ戦だけでなく、過去のテストマッチでも何度も発生している。ハリルが人について行く守備を志向する限り、この「バイタル空くよ」問題は解決できない。

 そこでシステムを4-1-4-1にして中盤には3センター(アンカーと2インサイドハーフ)を置き、相手ボールになったら4-5-1に変化してリトリート対応する。これで中盤は5枚でしっかり守れる。おまけに守備時の4-5-1は4-1-4-1や、3センターを後ろに残した4-3-3にも変化できるため、場合によってはハイプレスもかけられる。

 問題は3センターの人選だが、アンカーとインサイドハーフ1枚は長谷部と山口蛍で決まり。あとは残りのインサイドハーフ1枚が悩ましい。柴崎か、井手口や長澤を呼び戻すのも1案だが、ここは大胆に本田を推す。後述するが、本田をインサイドハーフのスタメンで使っておけば、さらなるシステム変更が可能になるからだ(後述)。

 本田って実は何気に守備もうまく粘りがある。ゆえに3センターの一角をやれるはずだ。現に所属チームでもやるときがある(私個人としては、彼には本当にボランチをやってほしい)。

ハリルは「政治的」に本田を警戒している

 さてハリルは本田を4-2-3-1の「3」の右SHでテストしている。ハリルはこのポジションの選手には攻撃時、ウイング的に裏のスペースに飛び込むことを要求している(久保や浅野のように)。だが、ぶっちゃけスピードがなく(悪くいえば鈍重な)本田には向かない動きだ。

 私は戦術的にはハリルを支持するが、こと選手選考と選手起用にはかなり異論がある。いまだにFW杉本健勇や宇佐美を見切らずテストしているのもそうだが、この「本田問題」もその最たるものだ。そしてこの本田案件には、ハリルのメンタリティの深い部分が影響していると見る。

 結論から先にいえば、ハリルにとって本田は「目の上のたんこぶ」なのだ。ハリルは監督として厳然たる権力を握り、絶対的な長として君臨したがる帝王キャラだ。そんなハリルにとって、発言力と実績があり、ややもすればフィールド上の「現場監督」になりかねない本田は常に警戒すべき対象なのである。

 このことは記者会見を見ただけでわかる。メンバー発表の席上で、本田のことに記者の質問が集中するだけでハリルは露骨に嫌がる。結局自分は本田を選ぶクセに、「みなさんの質問は本田の話ばかりですね。大量に出ているケガ人のことはどうでもいいんですか?」などと、チクリと嫌味を言う。人々が本田を認め、本田について知りたがるのが気になってしかたないのだ。

 私などはそんなハリルのキャラを見て「わかりやすいなぁ」「子供みたいだ」「おもろいおっさんだな」と好ましく見るのだが、反対に「腹黒く権謀術数を駆使する独裁者だ」と嫌う人もいるかもしれない。ま、それはともかく。

 ハリルが本田には(彼が好む)トップ下を絶対やらせないのも、ハリルの警戒感ゆえではないかと私は睨んでいる(なぜならトップ下は「帝王」のポジションである)。そして本田には最も向かないWG的なSHをあてがい、これまた本田には向かない裏への飛び出しを要求するのも同じ理屈だ。ハリルは本田に苦難を与えようとしている。誤解を恐れずにいえばパワハラの一種かもしれない。

 チーム内で政治力がある帝王・本田は「タテに速いだけじゃなくタメも必要だ」「カウンターばかりでなくポゼッションすべきだ」などと、ハリルの戦術コンセプトに逆行する発言を公然としかねない。本田は政治力を生かしてチームメイトを口説き、内部から反乱を起こす可能性がある。そうなればチームはバラバラ、非常に危険だーー。

 ハリルの目にはそう見えるのだ。

リードされれば本田をワントップへ

 話がそれた。ハリルのプロファイリングは別の機会に譲るとして、本題へ行こう。本田のポジション問題だ。上の方で本田を4-1-4-1のインサイドハーフに推したが、実はこの案はひとつぶで二度おいしい。

 ロシアW杯の本番で仮に同点の膠着状態になるか、またはリードされてどうしても点がほしいとき。交代カードを切ることなく、インサイドハーフの本田を(大迫に代えて)ワントップへ移動できるのだ。で、システムを4-4-1-1にして中盤センターはダブルボランチに。セカンドトップには中島を投入する。

 つまりチームで最も「個」が強く、1番シュートが上手い選手と、2番めにシュートがうまい選手を最前線で組ませるわけだ。こうすれば日本代表名物の得点力不足解消の一助になるし、「中島問題」も解決できる。

 え? 中島問題って、いったい何だ? 

 この3月シリーズで一番インパクトがあったのは、まちがいなく中島だ。攻撃的で日本人離れした「個」の強い彼を使わない手はない。だが中島が主戦場とする左サイドは、ハリルの戦術を最も理解しているハリルの申し子、MF原口がレギュラー確定だ。おまけに控えにはあの乾までいる。もう満員である。

 ならば中島は、現状、絶対的な存在がいないトップ下枠(セカンドトップ枠)で選出する。加えて中島をセカンドトップに使うことで、彼の守備の問題だって解決できる。それって何か?

 ハリルが考えるSHは、守備時には上がってくる敵のSBについて自陣深くまで引き最終ラインにも加わらなきゃいけない。それが約束事だ。W杯本番まで残り2ヶ月ちょいで、守備がまったく素人の中島にそんなノウハウを仕込むのはムリだ。なにより中島には、持ち味を生かしてもっと攻撃的な役割をやってもらいたい。

 で、セカンドトップである中島の守備の仕事は、敵の最終ラインがボールを保持しているときのファーストディフェンダーとしての役割に限定する。「おまえは引いてくるな。リードされてるんだから攻撃に専念しろ」って話だ。

 さて、あとはW杯で勝利の美酒に酔うだけである。

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