雨の夜と下弦の月

毎日を静かに、穏やかに生きていきたいと思う日々。
そのわりにはジタバタと暮らすワタクシの毎日を綴っております。

40 翼ふたたび。

2009-04-22 20:25:24 | books&magazine
そういえば、先週から土日をかけて石田衣良の「40翼ふたたび」を読了しました。人間、40歳が人生のおおよその折り返し地点だと思うのですが、そこからもう一度何かを始められるかをテーマにした連作小説です。40歳で広告代理店を辞めて、紆余曲折の末フリープロデューサーになった男性のもとにいろんな人々がやってくるという形式で物語は進みます。そもそもフリープロデューサーって何?という疑問も残りつつ、23年間引きこもり続けた40歳とか、大手銀行を辞めて中小企業に転職することが自分のやりたいことだったと悟った40歳とか。この小説は、一部例外もありましたが、大体40前後の男性の物語になっています。男の人の40歳という年齢は、これから大人の男としての魅力が増してくる年齢だと個人的には思っているのですが、当のご本人たちはどうなんでしょうね。女性が40を過ぎると後は下り坂を転げ落ちるだけのような気がするけど、男性はこれからいい男になっていくんじゃないかなぁ。

一番印象に残ったのは、17歳から23年間引きこもり続けていた男性のお話です。年老いたご両親がこのまま手をこまねいて見ていられないと主人公を訪れるのですが、主人公はセラピストではない。自分にはどうしてあげることもできないと断ろうとするところからお話は始まります。今、現実にこういう人もいるわけですよね。40過ぎても引きこもりを続け、社会復帰しようにもできないような人々。「甘えてる」と言ってしまえばそれまでだし、年老いていく親兄弟のことを考えると切なくなる。引きこもらざるを得なかった事情はあるにせよ、ワタクシは個人的にはあまり同情もしない。人間、いったん楽な道を見つけてしまうとそこから抜け出すにはものすごい努力が必要になるわけで。でも、みんな生きていくために働いていることも事実で、彼らはそこからいつまで逃げているんだろうと思う。逃げ続けて一生終われるとして、そのために心を痛め続けなければならない周囲の人々のことを彼らはどう考えているんだろう?

石田衣良は、そういう人々を非難もしないし同情もしていないと思う。ただ、淡々とそういう人の心情を描き、温かい目で見守っている感じはする。もちろん連作小説の中の一つの物語なので、ある程度の結論みたいなものは提示しているけれど、必ずしもハッピーエンドとは限らない。引きこもり男性以外の話でも、どこかビターチョコの味がするのは、やっぱり40歳という年齢のなせる業なのかもしれないけど。20歳の時と同じ結論になるわけがないので、ちょっと身につまされる話だったりもする。人間も40歳を過ぎると、なかなか「美丘」みたいに純粋にはね、生きられる年齢ではなくなってきているんだなぁと思わされた本でした。