井の中の蛙、カイラス山巡礼に挑む!

夢のカイラス巡礼を終え、登山を再開しました。山岳信仰の延長上に四国遍路、カイラス山巡礼があり、原点の登山に戻ります。

新緑の夕張岳に登る!

2014-06-24 20:31:23 | 芦別・夕張山系の山
 6月に入ってから風邪のためすっかり体調を壊していました。
咳がなかなか鎮まらず10日間ほどは夜も眠れないくらいでした。
3週間が経過して、やっと、体を動かしても良い気持ちになってきました。

 そこで選択した山が夕張岳です。
この時期に山開きを迎える夕張岳ですが、今年の山開きは6月22日の日曜日でした。
その翌日となる23日に私達は夕張岳に向かいました。

 夕張岳の登山口となる林道はシューパロダムが出来たことによりすっかり様変わりしていました。
シューパロトンネルを抜けると右手にシューパロダムのダム湖が見えてきます。
このダム湖の中を真っ直ぐに橋が通っています。
この橋の入り口が分かりづらく、標識もないので通り過ぎてしまったくらいです。

 トンネルを抜けるとすぐに橋に向かう道路が見えてきますので減速していた方がいいでしょう。
展望台のような施設の手前から右折します。
そしてシューパロダム湖の上を気持ちよく走ると、あとは道なりに走っていけば以前の林道に繋がります。

 札幌から登山口までは約2時間ほどの道程になります。
今年の注意点として林道は登山口の手前7キロの地点でゲートが閉じられています。
林道の一部に崖崩れの恐れがあるためこのような措置が執られています。
詳しくは森林管理局の林道情報をご覧ください。

 林道情報はこちらのアドレスからご覧になれます。
  http://www.rinya.maff.go.jp/hokkaido/apply/nyurin/nyurin_kisei.html

 私達は6時に札幌を発ち、8時にこのゲートに到着しました。
ゲートの手前に20台ほど駐車できるように整備されています。
   
   この駐車場に車を止めます。

 ここからゲートをくぐり、林道歩きが始まります。
   
   8:15分にゲート前を出発しました。

 そして、木漏れ陽の林道を快調に歩きます。
9:35分、以前はここまで登ってこれた所にあるゲートに到着です。
   
   このゲートを抜け急な坂道となる林道を一登りして、やっと、登山口(冷水コース)に到着です。

 ここで小休止を取って息を整えます。
山頂までは、ここから6.5キロほどあります。

 9:50分、登山口を出発します。
涸沢状態の登山道を登ります。
左右の笹が刈り払われているので見通しも利く登山道となっています。
(整備していただいた人達に感謝です!!)

 順調に登っていくと約1時間ほどで水場に到着です。
   
   ここで冷たい水を汲んで行きます。

 ここからは急な登山道を喘ぎ喘ぎ登ります。
病み上がりの身体ですが思った以上に身体が動きます。

 11:25分、シラネアオイが顔を見せるようになってくると石原平です。
しかし、今年は開花が早いせいななのかスラネアオイの花の色が白く色抜けしたような状態になっています。
   

   
   あまり良い色の花がありませんでした。

 ここからさらに傾斜の増す登山道を登ります。
トラバースするところには転落防止用にザイルが固定されています。
ここを慎重に抜けると望岳台です。

 11:45分、望岳台に到着しました。
   
   ここで休んでいる人達がいました。
   子供さんもいましたが、ここまで約10キロは歩いているでしょうか?

 ここまで来ると、もう一登りで急な坂とはお別れです。
やっと登り切ると、いつもある雪渓が目に入ってきません。
今年は雪融け例年以上に進んでいるようです。

   
   エゾノリュウキンカの花が咲いていました。

   
   山頂が見えてきました。
まだまだ、遠く見えます。
ここから少し進むと高層湿原部に入ります。

 12:15分、男岩の横を通り抜けます。
   

 湿原部には木道が整備されています。
その木道の両側にいろいろな花が咲いて私達の目を楽しませてくれます。
   
   チングルマです。

   
   ミヤマオダマキです。

 そして名前の分からないのが次の写真です。
   
   この花の名前を知っている方がいましたら教えてください。
(シロウマアサツキではないかと教えていただきました。)

 木道を歩いて最後のところで一休みします。
この先は、また急な登が待ちかまえています。

 吹き通しには夕張草が咲いているのですが、どの花も咲き終わっているようでした。
   
   白い花が穂先の先端部分にしかありません。
   下の部分は咲き終わっているようです。
 
 ここから山頂部にかけても花が楽しめます。
   
   ハクサンイチゲです。

   
   ハクサンチドリです。

   
   

 花を楽しみながら急斜面を登ります。
そして夕張神社の社まで来ると山頂は目の前です。
   

 13:15分、夕張岳の山頂に到着です。
芦別岳の山頂は雲の中ですが、おおむね視界が利くいい天気です。
   

 山頂は風が強いので神社前まで降って昼食の休憩を取ります。
担ぎ上げた水を沸かしてカップ麺を食べます。
汗をかいた身体が冷えてきたので暖かい食べ物は疲れを取ってくれます。

 14:00分、降りに掛かる時間を考えると山頂でゆっくりしてもいられません。
駐車場まで4時間は掛かるとみています。

 下山時も花を楽しみながら降ります。
   
   アズマギクでしょうか。

   
   大きな一株だけ色鮮やかなシラネアオイがありました。

 降りは快調に飛ばします。
といっても疲れた身体に急斜面の降りは応えます。
痛くなってくる膝や太股の筋肉を休ませるために適当に休憩を入れます。

 16:30分、夕張岳ヒュッテに到着です。
この山小屋は新築されたばかりです。
   
   小屋の外観です。
この写真の左手に沢水を引いた小屋があります。

   
   小屋の中です。

 小屋中をゆっくり見たかったのです、時間が押していたのと靴を脱ぐのが面倒でしたのでちょっと覗いただけです。

 今度は、ぜひこの小屋に泊まってみたいと思いました。
さて、ここから林道歩きを1時間半はしなければなりません。
疲れた身体にむち打って歩きます。

 18:10分、やっと駐車場に戻ってきました。
やれやれ、今日の行動時間は丁度10時間、お疲れさまでした!!

 

  
 

 

藪漕ぎに耐えて繋いだ神威岳からソエマツ岳・その3

2014-06-09 20:28:11 | 日高山系の山
 昨夜は残雪の上でのテント泊でした。
このテン場は、南側の風はハイ松が受けるためテントには何の影響もありません。
風の音を聞きながら快く寝ていることが出来ました。

 しかし、明け方の2時頃、寒気がして目を覚ましました。
いくら気温が高い日が続いているとはいっても雪の上です。
明け方は冷気がテントの中まで侵入してきました。

 起床予定時間は4時です。
あと2時間ほどで起きなければなりません。
寒さを我慢して寝続けましたが、突然身体が震えるなど寒さは確実に身体を痛めつけてきたのです。
(このことが発端となって札幌へ帰ってきてから咳が止まらなくなり病院へ行く有様でした。)


 5月30日(金曜日)

 やっと明るきなってきたので起床。
いつものように朝食をサ、サ、サと済ませ、出発の準備をします。
今日もいい天気なのですが、目の前に聳える神威岳の登りが今日一番の難所です。

 5:50分、いよいよ靴幅山に向かってまずは尾根を降ります。
この降りは、一度登っているので多少藪の薄いところをついて歩くことが出来ます。
また、上から見ると藪の薄いところが幾分見えやすいのでそこを狙って降ります。

 コルからの登り返しは、ハイ松の左手を狙って鹿道を利用しながら急斜面をドンドン登ります。
さすがに一度経験した道は歩きやすく感じます。

 7:10分、靴幅山の山頂に到着です。
この山頂部にキバナシャクナゲが咲いており、その向こうにドーンと構える神威岳が素晴らしいので写真を1枚写しました。
   

 ここからは、2度目となる靴幅リッジを慎重に歩き、藪を少し漕ぐと2日前のテン場です。
さらに下降を続けます。
コルに近くなると鹿道が沢の方から尾根に向かって延びてきます。
鹿道を使いながらコルまで降ると、さあ、ここからは神威岳の山頂まで標高差にして300mの急騰が続きます。

 この急登は鹿道がなく、降ってきたときもハイ松の中を強引に漕いで降りてきました。
このときは根元が神威岳側にある順目でしたから何とかなりましたが、今日は逆目のハイ松との格闘です。
斜面が急な上、複雑に絡み合う枝先を分けながら登るのは本当にきつい仕事です。

 このきつい仕事も前へ、前へ、と自分に言い聞かせて耐えます。
約3分の2ほど登った所から、やっと、踏み分け道が出てきて、ここからは何とか藪漕ぎも楽になりました。

 7:10分、靴幅山から3時間ほどで神威岳の山頂に戻ることが出来ました。
ここで少し長目の休憩を取り、デポしていた水とガソリンを回収します。
そして、沢まで降るのに必要な水を1人当たり500ccづつ持ってあとの水は投げて荷物を軽くします。

 神居岳の山頂からは登山道を降るのですからドンドン降ることが出来ます。
「藪漕ぎに比べると1級国道だね!」などと軽口をたたきながら降ります。
しかし、重いザックで降る急勾配の道は体力を奪います。
ヘロヘロ気味になりながら降っていくと左手の下の方から沢水の音が聞こえてきます。

 11:50分、尾根取り付きに到着です。
ここで、デポしておいた沢靴に履き替え沢水を思い切り飲みます。
雪を融かして造った水は、冷たいうちは気にならないのですが、温くなってくるといろんな味がして美味しくないのです。
それに比べると、沢水は最高です。

   
   尾根取り付き点にあった雪渓がすっかり無くなっていました。
わずか2日でも雪はドンドン融けています。

 今回使った残雪のテン場もいつまで残っているのでしょうか?
そんなことを考えると、今回の山行は、ギリギリのタイミングだったかもしれません。

 沢靴に履き替えて降ります。
疲れのためか集中力が途切れて、ときどきルートを外しそうになります。
それを修正しながらドンドン降ります。

 下二股の笹原は、笹丈が背丈ほどあるためルートを見失ってしまいました。
しかし、すぐ側に沢が見えているのでルートを探すより沢に出て降った方が早いので直進します。
下二股を渡渉してしまうと残りは30分ほど廃道となった林道歩きです。

 直射日光が照りつける中の林道歩きは疲れた身体には毒です。

 14:40分、神威山荘に帰ってきました。

 今日はここで1泊します。

 On氏は、この時間ならば林道を歩いて車まで戻れると思っていたようです。
私も、この時間なら無理すれば日も長いので明るいうちに車まで歩けると思ってました。
でも、思った以上に疲れていること、さらに、そんな無理を重ねて今日中に帰る必要のないことから口には出しませんでした。

 日の高いうちに小屋まで戻れたのですから、ここでゆっくりして疲れを取らなければと思いました。

 
 5月31日(土曜日)

 級も朝から天気が良く、暑くなりそうです。
昨夜はゆっくり出来たので多少は身体の疲れも回復しています。
朝の涼しいうちに林道を歩いてしまおうということで6:00分に小屋を立ちます。

 林道に陽が当たっていない場所は本当に涼しく、また、木々の緑が目に優しいのです。
そんな林道歩きをしていても3時間を過ぎるとさすがに疲れてきます。
来るときに3時間ほどで歩いた林道が、3時間を過ぎても着かないのです。

 結局、3時間30分ほど掛かってやっと林道ゲートまで戻ってきました。

 今回、この縦走が成功したのは、何より天気に恵まれたのが第1の理由です。
次に、神威岳の山頂に1泊する予定を早く登れたので先へ歩いてテン場を探したことです。
この点については、神威岳の山頂からソエマツ岳までの稜線を見通すことが出来たので、残雪の状況などを見て3人で話し合った結果、先へ先へテン場を移動して行ったのも良かったと思います。
この臨機応変がすんなり決まるのが私達のパーティの良いところだと思っています。

 さあ、これで残す大所が神威岳からペテガリ岳となりました。
これは来年の課題となります。

 そして、そのまえに小さなところで十勝岳から楽古岳間、エサオマントツタベツ岳の山頂部を挟んだ1kほどを夏の間に登ることにしました。
これを今年の夏中に歩き終え、来年のゴルデンウィーク明けに日高主稜線縦走の完結を目指して神威岳→ペテガリ岳を歩く予定です。


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  この時期の山にはダニが飛んでいるほどです。
 私は今回の山行で5~6カ所ほど刺されていました。
 幸いなことにすべて抜き取ることが出来ました。
 お腹の右側1カ所はちょっと深く食い込まれていました。
 これは用意していた毛抜きで慎重に抜き取りました。

  ダニが恐ろしいのは、ライム病などのウィルスを持っていることです。
 このウィルスが体内にはいると最悪の場合は死に至ります。
 帰ってから調べてみると刺されてから24時間以内に抜き取りことが出来れば
 この危険を回避できるようです。

  ダニを抜き取った後、傷口の周りが大きく赤く腫れてくるようでしたら
 すぐに病院へ行った方がいいと思います。
 この場合にはすでに感染している恐れがあります。

  これからの季節、山菜取りなどで山には入る機会は多いものです。
 消毒薬に毛抜きは必携ですね。

藪漕ぎに耐えて繋いだ神威岳からソエマツ岳・その2

2014-06-05 20:35:53 | 日高山系の山
 昨夜は風が強かったのですが、このテン場は風の影響を受けず最高でした。
遠くでゴーッと風が唸りをあげているのですが、その唸りが近くへ来ると消えていくのです。
気温も高いので寒くはありません。
そんなことで最高の睡眠が得られるはずなのですが・・・
最近、山に来てもなぜが熟睡できないのです。
まあ、寝不足かもしれませんが、身体は横になっているだけで疲れが取れるといいます。
夜の8時には横になっているので朝4時起きでも8時間は寝ていることになります。

   
    朝日は、靴幅山の右手から上がりました。

5月29日(木曜日)

 5:30分、いよいよソエマツ岳に向かって出発します。
まずは、靴幅山へ向かいます。
靴幅山というのは、地図上でいうと1,468mのコブ山を指します。
なぜ靴幅山などいう名前が付いているかというと靴幅しかないナイフリッジがあることから付けられたようです。
そのナイフリッジに向かって進みます。

 20分ほど進むとそのナイフリッジが目の前に見えてきました。
なるほど、右側がスパッと切れ落ちた岩肌です。
左側には白樺などが生えているとはいえこちらも切れ落ちた急斜面なのです。
リッジの上は幅が約1mほどありますが、そのリッジにはハイ松が生えており、その枝に掴まりながら歩きます。
   
   このリッジを残雪期に歩くのはどんな気分でしょうか?

 冷や汗をかきながらリッジをわたり終えると一息で靴幅山の山頂でした。
6:00分、テントサイトから30分で靴幅山に到着です。
この山頂部には2人用テントなら1張り張れるくらいの広さがありました。

   
   ソエマツ岳が一層近くなってきました。
   写真右側の横に伸びた残雪をテン場にしました。

 ここからは急な降りとなります。
幸いなことにハイ松の横は草原となっており鹿道があります。
その鹿道を利用してドンドン降ります。

 そしてコルからは残雪のある稜線目指して登ります。
この登りも鹿道があるところはそれを利用して登ります。
しかし、鹿道が尾根の天頂部を外れるようなら藪漕ぎをしてでも天頂部を外さないようにします。
そうしてがんばり続け、1,380mの残雪のある稜線に着きました。
 
 7:15分、テン場に到着です。
   
   この残雪は雪庇が残ったものです。
横幅も十分にあります。
ここをテン場として、テントに寝袋など必要のない荷物をデポします。
しかし、万が一のため食料やガスコンロにツェルトトなどを持ってビバークに備えます。

 幾分軽くなったザックを背負って1,550mの肩を目指して登ります。
この登りがきつかったです。
藪を漕ぎ、1歩、1歩、笹を掴み、ハイ松を漕いで登ります。

 9:20分、やっと肩に到着です。
   
   この肩にはいいテン場がありました。
ここまで来て、やっと、ソエマツ岳の本峰を目にすることが出来ました。
写真の左が本峰です。

 今日は気温が高いためシャツ1枚になって登っています。
おまけに強い日差しを受けているので汗だくです。
水の消費も進みます。

 ここからは、西峰に向かってハイ松の中を歩かなければなりません。
   
   ハイ松の丈も幾分低くなってきたので強引に歩きます。

 やっと西峰にたどり着くと、また降らなければなりません。
しかし、その先にはソエマツ岳の本峰が間近に見えています。
見たところ1時間は掛かるかなと思いましたが、距離にすると300mあるかないかです。
すでに、Sz氏が降っているので後を追いかけます。

 10:25分、ソエマツ岳の本峰に到着です。
西峰から20分と思ったほど時間は掛かりませんでした。

 さて、これで今回の目標だった神威岳からソエマツ岳の稜線歩きを達成したことになります。
これで、南日高は十勝岳から神威岳までの稜線を繋いだことになります。
遙か彼方にはピリカヌプリが見えています。
昨年、この目の下の稜線からピリカヌプリまで歩きましたが、その時はガスに覆われ見ることが出来ませんでした。
その稜線を今日ははっきりと見ることが出来ます。
   
   この稜線を歩き、ピリカヌプリの山頂の少し右側から沢を降りました。

 ここで30分ほど休憩を取ります。
私はハイ松の陰に入って身体を冷やします。
今日の気温だと熱中症の恐れがあるからです。
10分ほど目を瞑って寝ていると息が落ち着いてきます。

 11:00分、さあ、テン場に向かって帰ることにします。
   

     
   西峰に向かって降ります。

 ハイ松の稜線下りですが、断然、登りよりは楽です。

13:25分、テン場に戻ってきました。
   
   今日の宿も無事に決まって、ホッと一息です。

藪漕ぎに耐えて繋いだ神威岳からソエマツ岳・その1

2014-06-02 09:04:13 | 日高山系の山
 今シーズンの日高主稜線歩きは、野塚岳から十勝岳、芽室岳からピパイロ岳の肩までと順調に歩いてきました。
今回は、一番距離の残っている南日高にあるソエマツ岳からペテガリ岳間のうち、中間の山となる神威岳から南にあるソエマツ岳間を歩いてきました。

 この区間には登山道がありません。
そんなことで、本来ですとゴールデンウィークなど残雪期に登られる山なのですが、一緒に登っているメンバーのOn氏の都合でこの期間は使えないのです。
さらに、GW明けも使えず、やむなく稜線の雪はないかもしれませんが水作り用の雪ぐらい残っているだろうということで、5月27日から挑戦することになりました。

 メンバーはいつもの3人、Sz氏にOn氏、それに私です。
幸いなことに天気予報に雨マークがないという安定した期間が、唯一、救いの期間です。


 5月27日(火曜日)

 今日の予定は、神威山荘までと気楽な行程です。
札幌を朝9時に立ち、まずは浦河町の登山口を目指します。
林道は、神威山荘の手前13kmほどの所にあるゲートが閉じられています。
この先の林道は、地盤が固まっていない、道路上の落石や倒木の処理が終わっていない、などの理由からゲートは閉ざされているのです。

 まずはこの林道歩きが、登山の初まりとなります。

 12:20分、いよいよ林道歩きが始まります。
   
   今まさに新緑の季節!

 まずは日陰でしっとりとした空気の中を歩きます。
今回は沢靴も持っているのでザックの重量は結構なものですが、快調な足取りで歩きます。
途中から日差しが強くなってきたものの疲れのない身体ですのでグングン歩けます。

 正面の山肌が綺麗に借り払われてくると神威山荘は間近です。
15:25分、神威山荘に到着です。
   
   正面に見える山は通称名ニシュオマナイ山です。

 今日はこの小屋で1泊します。


 5月28日(水曜日)

 朝4時に目を覚まし登山準備をします。
朝食のお茶漬けをサラサラと胃の中に流し込み、辺り一面に散らばっている荷物をザックに詰め込みます。

 5:15分、神威山荘を後にします。
両側が植林された明かるい林の中を歩きます。
ほどなく渡渉地点に来ます。
   
   雪融け水で増水していると思ったのですが、そうでもありません。

 沢靴ですので濡れるのは問題はありません。
ズボズボ入っても臑ぐらいの深さでしょうか?
飛び石を使ってくるぶしほどの水に浸かりながら渡渉は終了です。
この先は、しばらく林道歩きが続きます。

 下二股で2度目の渡渉、笹原を歩いてようやくここから沢歩きが始まります。
しかし、沢水の量は普通です。
この沢は、巻き道が整備されているのでそれを使ってドンドン進みます。
それぞれが、この沢の経験がありますのでドンドン歩けるのです。
   

 途中に咲いている花には癒されます。
   

 6:20分、約1時間ほど歩いたので休憩を取ります。
On氏が、この辺りに遭難者の慰霊のために設置したレリーフがあるはずだといいます。
それは右岸の岩壁に埋められていました。
   
   大塚武さんの追悼レリーフです。
このレリーフに両手を合わせ登山の無事を祈ります。

   
   順調な歩きが続きます。 
久しぶりに歩く沢靴の感触と水の冷たさが気持ちいいです。

 正面に山肌が近づいてくると上二股です。
   
   右股に入ったとたん目にしたのは沢が雪でビッシリと埋まっている様子です。
沢靴で雪の上を歩くと滑りますので岩の上を歩いて登ります。
ほどなく、沢の真ん中にある大きな岩に赤いペンキで書かれた矢印を見つけます。

 7:15分、約2時間でここまで来ました。
この地点が尾根取り付きとなります。

 さあ、ここで沢靴を履き替えます。
沢靴は袋に入れて木に縛り付けデポします。
1人当たり3~4リットルの水を持っていよいよ尾根歩きとなります。

 ここからは急な登山道が続きます。
適当に休みを入れますが、それにしても早く進みすぎです。
今日は神威岳の山頂でテント泊の予定なのでゆっくり進めばいいのです。

 急な尾根を登り切ると大きな雪渓が残っています。
   
   目の先には神威岳の山頂が見えています。

 この雪渓にはテント泊の跡がありました。
きっとGWに登った人達のものだと思われます。

 10:40分、神威岳の山頂に到着です。
   

 ここで、やっと、ソエマツ岳までの稜線を見ることが出来ました。
   
   稜線上にはほとんど雪がありません。

 しかし、水を造る程度の雪渓が稜線近くに残っているようです。
正直なところ、この稜線を見た瞬間に藪漕ぎを覚悟しました。
でも、水が作れれば何とかなると思いました。

 ここで3人で相談しました。
いかんせん、この時間では神威山頂での1泊はもったいなさ過ぎです。
この先どんな状況になるか分からない状態では、少しでも先へ進みたいものです。

 3人で相談した結果、神威岳から降って少し登った稜線まで歩くことにしました。
この稜線の過ぐ近くに雪渓もあります。

 神威岳から降りだすと、最初のうちは踏み分け道があります。
といっても、普通の登山道に比べると道とはいえないものです。
その踏み分け道を利用してドンドン降ると、そのうち藪に突入です。

ハイ松が行く手を阻みますが、幸いなことに枝の張り方が順目なのです。
枝先が上から下へ伸びているのでその隙間に身体をねじ込むと歩きやすいのです。

 しかし、登りになるとそういうわけにはいきません。
歩いている正面に枝先があるのでその枝を両側に分けて歩かなければなりません。
この作業を急斜面で行うのは大変なのです。
おまけにねじ曲がった幹の白樺も行く手を遮ります。
少しだけ良かったのは、小灌木は芽吹きの時期を迎えたばかりなので枝を簡単に分けられるのです。

 13:10分、やっと目指した稜線に到着です。
今年始めての藪漕ぎが終了したのでホッとしました。

 ここには最高のテン場がありました。 
   
   綺麗に整地された地面です。

 おまけに神威岳からは見えなかったソエマツ岳側の陰に雪渓もありました。
   
   整地された地面に水作り用の雪、おまけに最高のロケーションです。

  
  後ろには神威岳も端正な姿を見せてくれます。

 よく見ると辺り一面に行者ニンニクも生えています。

 夕方までたっぷりある時間を使って、早速、酒盛りが始まります。
幸せな時間が過ぎていきます。

 ここで、ソエマツ岳への稜線を見ながら行った作戦会議の結果、靴幅山から降り登り返した稜線にある大きな雪渓に明日泊まることとして、そこから、一気にソエマツ岳を日帰りで往復することにします。

 すぐ横に見える靴幅山の存在は忘れお酒が進みます。 

 今回テン場とした場所の地図を貼り付けますので参考にしてください。
    


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  大塚武さんについて
 
   大塚さんは、東京商大(現・一橋大)山岳部キャプテンとして山を駆け巡っていた。
  1964年(昭和39年)7月に日銀北海道支店長に転勤、道内外の山を登られていた。
  1970年(昭和45年 11月、請われて北洋相互銀行社長に就任。
  1975年(昭和50年)4月の日本山岳会北海道支部総会において、伊藤秀五郎さんの後を
   受けて第5代支部長に就任。
  1983年(昭和58年)8月6日、神威岳に登ったが、疲労のため途中下山した。
  8月27日、大塚さんは体調を整え、単独で神威岳に再挑戦した。
   ところが28日の下山予定時間を過ぎても下山せず、
  29日 北大山岳部が捜索したが手掛かりなし。
  そのため、30日、道警に捜索願が出され、日本山岳会北海道支部をはじめ関係する
  山岳会や遭対協などが捜索を行った。
  その後、知事の要請で自衛隊も捜索に加わり、数百人規模の大掛かりな捜索が行われた。
  しかし、行方不明 から7日目の9月4日、十勝側の中ノ川上流で遺体となって発見された。
  享年66歳でした。

  遭難の翌年、本人の遺徳を偲び、このレリーフがニシュオマナイ川右岸の岩に埋められたものです。