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リパッティについて

2008年11月16日 18時02分31秒 | ショパン
夏に中川右介著『巨匠たちのラストコンサート』を読んで、その中のディヌ・リパッテイの章が最も印象に残ったことを書きました。今回は、そのリパッティについてであります。

今は昔、バックハウスが亡くなってしばらくして、バックハウスの最後の演奏会のライブが発売されたことを、広告で見ました。当時バックハウスがどれほどのものかあまり知らなかったので、ほうほう、という程度でした。それと時を同じくして、もうひとり、もっと以前だけれど、もっと若くして亡くなられたピアニストの同じく最後のコンサートライブがあることを知りました。それがリッパティでした。その後、最後のコンサートになった経緯などは雑誌などで読みましたが、あまり聴く機会もなく十年以上が過ぎまたし。そして、就職して職場の先輩で、リパッティがお好きな方がいらっしゃって、話しの中にそれが出て来て、ほんとに久しぶりにその名前を聴きました。そして、その後もそれほど聴く機会がなく、先述の本でいたく印象に残り、おもわずCDを買ってしまいました。

その中から、ショパンのピアノ・ソナタ第3番ロ短調作品58です。この曲をリパッティは、1947年3月にロンドンのアビーロードスタジオで、三日間かけて録音したそうで、リパッティ自身は最後まで結果には満足しなかったようです。体調もよくなかったようでアルバートホールでのコンサートも辛うじて一度だけ開くことが出来たほどです。そんな中で行われた録音は、このソナタの他にスカルラッティのソナタ、ショパンの夜想曲をそれぞれ一曲と、最後のコンサートのアンコールで弾かれた、バッハのコラール「主よ、人の望みの喜びよ」などがあります。

しかし、ショパンはいいですねえ。といっても、私は思いついたように聴く程度で、これまでそれほど熱心に聴くわけではないのですが、時たま聴くと、その旋律の叙情的な美しさに聞き惚れるんですよね。このリパッティの演奏ですが、これはほんとに凄い演奏です。ピアノの一音一音にこれほどまでに魂を感じる演奏もそう聴けるものではないですねえ。ただ、録音はかなり昔のモノラルなんで、雑音などはないのですが、鮮明さには欠け、特に低音が聞きづらく、雷が鳴っているようです。そうは言っても、このリパッティのショパン、これまで聴いた中でも特上の迫力・気品・詩情を感じ、圧倒的な名演です。他の演奏が緩く思えると言ったら言いすぎでしょうか。第1楽章、冒頭の第一主題の気迫には驚かされますが、そのあとに登場する第二主題、この主題は本当にショパンらしいものですが、これが実に気品と慈愛に満ちてます。第一主題とは一転してこの対比もおもしろいです。そして、曲が進むに連れて、リパッティの卓絶したテクニックの凄みを感じます。第2楽章はスケルツォ。即興的ですが、軽やかなリッパティのピアノが楽しめますね。そして、第3楽章、ここが1番いい。三部形式で、前半部・中間部、これほどの詩情とピアノに慈しみを感じることはないであろうような、名演ですねえ。聴く方の精神状態にもよりますが、不覚にも涙を流してしまいました。ここでのリパッティの演奏はほんとに優しくこの優しさに包まれたいです。再現部で再度聴けるテーマ、ほんとにいいですねえ。と思っていると、終楽章、一転して情熱的で力強い曲。ここではリパッティのピアノは切れ味鋭い。軽快な風味ではなく、重い音が鳴り響きますねえ。ピアノの音の鮮明さもあざやか。最後は見えを切るように終わります。ほんとにいい演奏です。

EMIからのICONのEMIレコーディングス(7CD)に収められている録音は少し籠もった音がします。DOCUMENTSのショパン10枚組に収められた方が鮮明な音がします。好みもありますが…。
(Emi Icon 2 07318 2 輸入盤)

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