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内田さんのテイトのモーツァルト協奏曲 その5

2022年11月06日 23時56分00秒 | モーツァルト
この週末は、奈良でした。観光客も以前に戻り外人も多かったです。まず春日大社へ。今年若宮の式年造替が終わり、「八日間初まいり」をしました。新しくなった若宮の本殿は、春日大社の4つの本殿とほぼ同じ建物。なかなか朱色が鮮やかでした。そして「若宮十五社めぐり」で十五の摂社末社へのお参りもしました。これで御力の蘇った若宮様の強い加護をお受けすることができることでしょう。そのあと、恒例正倉院展に行きました。今年は隠岐国正税・郡稲帳、筑前国戸籍などでありました。なんだか展示物が少なくなったかなあ、と思ったのでありました。

そんなわけで、秋もたけなわの中、今回はモーツァルトであります。最近ヘンデルなどが多く、自分でも、もういい加減いいでしょう、と思っているのであります。とはいうものの、それなら何を、ということになり、まあそれなら王道モーツァルト、ということになりました。 久々にモーツァルトを聴くと、妙に幸福な気持ちになるのでありました。モーツァルトは、人間を幸せにする!のでありました。

それで、今回はピノ協奏曲。その中から内田光子さんの演奏。なぜ内田さんか、というと、私の机の前にうずたかく積まれたCDの中に、そのCDがたまたまあったのでありました。そんなこととやはりこの内田さんとテイトの演奏は、私が最もよく聴く演奏であります。内田光子さんとジェフリー・テイト指揮イギリスCOの演奏で、モーツァルトのピアノ協奏曲第13番ハ長調K.415。1987年5月ロンドンのセント・ションズ教会での録音です。もう35年も前のもの。内田さんもお若いですよねえ。

しかし、モーツァルトのピアノ協奏曲でもシュタイアーや、ベザイデンホウト、ブラウティハムスホーンデルヴルトなどのフォルテピアノ勢力の台頭も著しいのであります。毎度のことながら、これらは苦手。やはりモダンピアノの響きが好きなんで…。でもこれらも聴こう!とは思っているのですが、どうも敬遠してしまうし…。今回の内田さんの演奏を聴くと、やはりモーツァルトはこれでなくては!と妙に力強く思ってしまうのでした…。毎度のことで申し訳ない。

それで、この13番はLPの時代からけっこう好きな曲で、10番台では15番と並んで聴きます。14番は16番と並んでそれほど聴かない。しかしこの演奏、この2曲を非常にうまく演奏してくれます。まずは、テイトの指揮です。この人の演奏、ハイドンやモーツァルトの交響曲は非常にいい。正攻法の直球一本といった姿勢で、曲のバランスもいいですし、モーツァルトの曲のよさをうまく引き出してくれています。この演奏でもピアノをうまくサポートするとともに交響曲のような響きを聴かせてくれますねえ。私は、この人の演奏は大好きです。

一方、内田さんのピアノ、いつもながらの深い表情。テンポも大胆な設定であり、なかなか深い演奏になっています。時には、もう少しサラッと、と思うときもありますが、いろいろと考えさせてくれる演奏で、聴いてきておもしろいですね。内田さんにはクリーブランドとの演奏もありますが、第13番はまだ出てないですかね。この演奏もいいですが、テイトとの演奏に惹かれるものがありますねえ。

第1楽章、冒頭から実に堂々としたオケの演奏。それに負けず内田さんのピアノ。そして、非常に柔らかで優しげ、そしてスケールの大きな演奏になる。そして次第に繊細な表情も見せながら実に豊かな表現に富む演奏がとてもいいです。第2楽章、内田さんのピアノは、より繊細でとても優しげであり美しい。また深い気持ちが表れて、聴き惚れてしまいますねえ。この楽章の演奏はとても好きです。そして第三楽章。快活なロンドと二度にわたる悲痛なアダージョの対比の中でのピアノの深い感情が非常に印象的で、心に染み込んできます。内田さんのピアノの表情は実に素敵であります。

奈良でいつも必ず見るのが興福寺五重塔ですが、そろそろ120年ぶりの大修理に入るようです。修理には10年かかるそうです。となると、もしかして生きているうちに修理が終わらないかもしれない。さすれば、今回が今生の見納めとなるかもしれないと思ったりしたのでありました。
(Philips PHCP-1189 1988年)

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