こんなCDを買った!聴いた!

最近購入した、または聴いたCDについて語ります。クラシック中心です。

もうひとつ、バックハウス

2012年07月21日 19時33分43秒 | バッハ
しかし、九州の豪雨も驚きましたが、6月から兵庫県も幾度も大雨・洪水警報の類は出されています。出てもほとんど大したことない場合もあるのですが、昨日は少々肝を冷やしました。ちょうどとあるミュージカルを中規模のホールで見る機会がありまして、その開始と同時に警報が出ました。休憩時には正しく豪雨状態。瞬く間に道路は10㎝ほどの水が貯まり、ネットで確認してもこの地域にはかなり後まで黄・赤マークになっている。これはやばいぞ、と思い少々不安になり、ミュージカルどころではありませんでした。その後、徐々に回復したのですが、なんともこんな天候は恐ろしいですねえ。

さてさて、今回は前回に引き続いて、ウィルヘルム・バックハウスのピアノであります。バックハウスの演奏、もう過去の人ってことでもないでしょうが、今となってはなかなか入手しにくくなっているみたいです。もともとそれほどレパートリーの広い人でもありませんし、録音の量自体も、ルービンシュタインやホロヴィッツなどと比べると少ないのでしょう。H○Vのネットで見ても、ベートーヴェン・ブラームス・ショパン・モーツァルトくらいしか載っておりませんからね。もう、没後40年以上たってますので、これも仕方ないかな、と思います。

そんな中で、今回はH○Vでも入手できない、バックハウスのバッハであります。「バックハウス・バッハ・リサイタル」というCD。イギリス組曲第6番ニ短調BWV.811、フランス組曲第5番ト長調、平均律グラーヴィア曲集から前奏曲とフーガ(第1巻ト長調、第2巻)であります。1956年の録音です。バックハウスのバッハ、私はこのCDでしか聴いたことがないので、その点も非常に残念であります。

私は、このハックハウスのバッハ、かなり気に入っています。これらの曲はグールドの演奏から入ったのですが、ある種のグールドの冷たさと無感覚的な演奏は、それほど好きではありません。それに比べて、このバックハウス、非常に暖かみがあり、一音一音を大事に噛み締めるように弾き、それで全体の造型も非常に強固である。よく言われる枯淡な風格、こんな印象ではなく、それどころか、表情が豊かで、折り目正しく几帳面でエネルギッシュな一面も感じる、非常に懐の深い演奏と思います。これこそが、ドイツのバッハ演奏の伝統を具現化したものと私的には確信しております。まあ、そこまで言うのは言いすぎかもしれませんが…。

まずイギリス組曲第6番。まず最も長い前奏曲、ここにこの曲全体の演奏のと特質が集約されているようです。短調の曲であり、その風情が豊かであり、またピアノの音色は非常に暖かい。インテンポで進むがそれがこの演奏の心地よさとは無縁ではあるまい。アルマンド、クーラントは、急でダイナミックな演奏が味わえる。左手の力強さが躍動感を強調させる。そして、一番好きなのが次のサラバンド。ゆったりとしたテンポで一音ごとに大切に弾くピアノにはたいそう惹かれ、音の中に陶酔していきます。次のドゥプルでも曲の流れが個々とよく、流れに身を委ねていく快感がある。そして躍動的なガボットも力強いタッチがいい。そして、厳しいジークで終わる。

続いて、フランス組曲第5番。全体的にト長調躍動感と明るさに満ちた演奏。まずアルマンドで、非常に優しいピアノに一転する。私はゆったりめが好きなんでしょうか、ここでもサラバントの美しさに心が惹かれます。バックハウスの演奏は情感に溢れるというより、淡々と進みますが、その中に曲の本質が見えるようです。ガボット、ブレーには躍動感がいいですし ルールでは歯切れのよいピアノが聴けますし、ジークでも両手の鮮やかなタッチに聴き惚れてしまいます。

そして最後に平均律グラヴィーア曲集第1巻と第2巻からふたつのト長調の前奏曲とフーガが収められていますが、これがふたつとも絶品です。気持ちの籠もったピアノです。そして左右のバランスが非常にいい。フーガも、あっこれはフーガなんだ、と思ってしまうような、まったく理想的な平均律ですね。バックハウスには、平均律の全曲を残してもらいたかったと、この演奏を聴くと切に思います。

今日も、大雨洪水警報が出ました。神戸はまったく晴天でしたが…。
(LONDON POCL-9923 Immoratal Backhaus 1000 1997年)

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