時事解説「ディストピア」

ロシア、イラン、中国等の海外ニュースサイトの記事を紹介します。国内政治、メディア批判の記事もあります。

テロ事件を軍拡に利用しようとする日本

2015-02-03 21:58:32 | 軍拡
後藤健二氏が殺害されて数日も経たない内から、
安倍政権は今回の事件をネタに軍拡を行おうと画策している。


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過激組織「イスラム国」による日本人人質・殺害事件にかかわって、
安倍内閣は「邦人救出」のための自衛隊派兵法の整備を急ぐ姿勢を示しています


海外で危険にさらされる邦人の保護は政府の責務ですが、
それに乗じた海外での軍事作戦の法整備など許されません。


安倍晋三首相は、邦人が人質になっている場合、
自衛隊の持てる能力を生かし、その救出に対応できるようにすることは国の責任だ
(1月29日の衆院予算委員会)と答弁。


現在の自衛隊法では海外で邦人の輸送はできるが「武器の使用はできない」と強調し、
たとえ日本人だけが人質になっていて、(現地の警察や軍にくらべて)
こちらの装備が上回っていてもそれ(救出)はできないのはおかしい
」と述べました。


官房長官「検討」


集団的自衛権行使容認の「閣議決定」(昨年7月1日)では、
「領域国の同意に基づく邦人救出などの『武力の行使』を伴わない警察的な活動」
に向け、法整備を進めるとしており、今回の事件をきっかけに一気に具体化する構えです。


しかし、「イスラム国」は領域国の支配が及ばない地域を形成しており、
そこで「邦人救出」となれば「閣議決定」の枠組みを超える軍事行動を行うことになります。


菅義偉官房長官も、後藤健二さんの殺害情報を受けての1日の記者会見で、
自衛隊による邦人救出の法整備について「検討していく」と述べました


そもそも「邦人救出」とは、
人質をとる勢力を制圧する軍事作戦です。
人質の生命・安全も保証されません。

自衛隊がその制圧のために武器を使うことは、
政府の憲法9条解釈のもとでも禁止された
「武力の行使」にあたります。


「居留民の保護」が侵略の口実とされた戦前の教訓からも、
「邦人救出」を口実にした海外派兵は許されません。


さらに安倍首相は「後方支援は武力行使ではないから、
国連の決議がない場合、有志連合、多国籍軍にあっても憲法上は可能だ

(1月25日のNHK党首インタビュー)と発言しました。

「イスラム国」に対し空爆を続けている
米英などの「有志連合」のように、
国連決議に基づかない軍事行動への
後方支援も日本は可能だという立場です。



~検証はこれから~


安倍首相は、「イスラム国」対策としては後方支援は行わないとも述べましたが、
それは「政策的にやらない」というだけで“憲法上は可能”だというのです。




集団的自衛権行使容認の「閣議決定」の具体化に向けた安保法制整備は、
後方支援に参加し、世界的な対テロ戦争に参加できる枠組みをつくろうとするものです。


安倍首相の発言は
まさに「海外で戦争する国」づくりの危険性を露骨に示しています。

http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2015-02-02/2015020202_02_1.html
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同様の見解は、中国やイランからも寄せられている。


イランラジオの記事を次に紹介する。



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世界の首脳や指導者がテロ組織ISISによる日本人殺害を非難する中で、
中国はこの事件に対して、異なった立場をとっています。


中国共産党の英字機関紙チャイナデイリーは、
人質殺害は、日本政府がアメリカ政府の支持を受けた代償だ
と記しました。



また、「日本の安倍総理大臣は、平和憲法を変えるため、
この機会を利用する
だろう」としています。



グローバルタイムズも、「この危機は自衛隊の軍事駐留に関する
制限を緩和するだろう」と予測し、
人質の解放よりも安倍政権の右派的な政策の拡大を懸念しています。



日中の敵対関係、あるいは日本の再度の軍事主義政策の拡大に対する
中国の抗議は、新たな問題ではありません。



日本政府はアメリカ主導の
対ISIS有志連合を支持しています。



安倍首相は最近、エジプト・カイロで
これに関する非軍事的な支援を行うと表明しました。



ISISは日本人の人質2名の身代金として、2億ドルを要求しました。


安倍首相の有志連合の支持は、中東における
アメリカの別の連合に対する日本の支持をうけて行われました。



加えて、安倍首相はこの行為によって、
自国の国際的な立場を高めようとしています。



日本は、1991年の湾岸戦争で、憲法違反だとされた中で、
アメリカ主導の連合に数十億ドル規模の支援を行ないました。



また、2003年にもイラクに自衛隊を派遣しました。
さらに、アフガニスタンの戦争では、
海上自衛隊の補給艦が給油活動を行っていました。


これらの行為すべては、特別措置法の可決を必要としていました。


安倍政権も、アメリカと、場合によってはそのほかの同盟国と、
より緊密な軍事協力を行う道を整えるため、
現在、自衛隊に関する新たな改革を検討しています。

軍拡に向けた日本のここ近年の努力により、防衛費も拡大しています。



安倍政権は昨年7月、集団的自衛権の行使容認を閣議決定し、
アメリカやそのほかの国とより大きな協力を行うのを容易にしました。



日本の中谷防衛大臣と岸田外務大臣は、
兵器開発に向けたより緊密な協力について話し合いを行うため
ロンドンで行われたイギリスとの外務・防衛閣僚会議に参加しました。



日本は昨年、武器輸出三原則を緩和しました。


集団的自衛権の行使が容認される前に、
日本の国会は自衛権に関する新たな法案や改革案を可決する必要があります。



世論調査では、国内世論が2つに分かれていると示されており、
現状、ISISによる人質殺害が
この問題に影響を及ぼすかについて語るのは、まだ早いといえます。


一方、日本の軍事的な役割が日本国外で増えることにより、
日本が中東の紛争に巻き込まれる懸念が高まることになるでしょう。



一方で、日本の防衛政策の優先事項は、中国と北朝鮮の脅威となっています。
なぜなら、中国は、地域における影響力を拡張しようとしているからです。

http://japanese.irib.ir/news/%E6%9C%AC%
E6%97%A5%E3%81%AE%E3%83%88%E3%83%94%E3%83
%83%E3%82%AF/item/51799-%E4%BA%BA%E8%B3%AA
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兵器開発と軍事産業の規制緩和。


これが何を意味するか、おわかりだろう。



私は将来的に、安倍を筆頭にした極右陣営は、
兵器だけでなく兵士の輸出(=つまり傭兵ビジネスの開拓)も
もくろんでいるのではないかと睨んでいる。



イランラジオの分析は見事で、
歴史的に日本が憲法に反する軍事・経済協力を
中東において展開してきたことを物語っている。

これら軍拡の動きを他ならぬアメリカの敵国として、
将来的に日本からの直接・間接の攻撃を受けるかもしれない国が
危機感を抱いている。これを忘れてはいけないだろう。

人質事件と共産党3

2015-02-03 21:30:09 | 反共左翼
事件に対する日本政府の軽率な行為や、
同事件を口実にした軍拡の動きに対して、いよいよ本格的な抗議が国会で始まった。


日本政府が人質事件で取った行動を赤旗が
時系列順に整理していたので、以下に紹介したい。


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昨年8、10月に把握


湯川さんと後藤さんの殺害警告がインターネット上で確認されたのは、今年1月20日午後です。
しかし、政府はすでに昨年、2人が拘束されていたことを把握していました。



「イスラム国」関係者は昨年8月中旬、湯川さんを
シリア北部アレッポで拘束したことを示す動画を流し、政府もこれを確認しています。


安倍晋三首相は1月27日の衆院本会議の答弁で、
昨年8月17日、官邸に情報連絡室を設置し、
同年11月1日に後藤さんの件を連絡室に追加したと明らかにしました。


また、菅義偉官房長官の説明によると、
昨年10月末、後藤さんがシリア北部で行方不明になったとしています。


(1月21日の記者会見)



加えて、後藤さんの妻によれば、昨年11月から
「イスラム国」によるとみられる脅迫メールが繰り返し送られていました。



つまり、「イスラム国」による日本人人質事件は、
昨年から数カ月にわたって続いていたのです。



このことから、殺害警告が出された1月20日以降だけでなく、
昨年8月中旬以降の全過程について、政府がどう対応したのか検証の対象にする必要があります。


「人命第一」だったか


安倍晋三首相は殺害警告が出された1月20日、
「人命第一」で対応するよう指示しました。


しかし、昨年8月以降の対応を見ると、
本当に「人命第一」だったのか、
疑問が浮かび上がってきます。




まず、政府は湯川さんが「イスラム国」に拘束された疑いを持っていながら、
9月以降、米軍など「有志連合」による
「イスラム国」への空爆への理解を繰り返し表明してきた
ことです。




米軍が空爆を開始した昨年8月から9月にかけて、
「イスラム国」は対抗措置として、
米国人、英国人の人質を相次いで殺害しています。

その最中に日本政府が空爆を後押しすれば、
湯川さんらにも危害が及ぶ可能性は当然想定されたはず
です。



「人道支援」といえるか


さらに重大なのは、2人の拘束情報を把握していながら、
安倍首相が今年1月16日から21日まで中東訪問に踏み切り、
「イスラム国」への対抗姿勢を強調したこと
です。




首相は1月17日、カイロで行った中東政策演説で
「地道な人材開発、インフラ整備を含め、ISIL(イスラム国)
とたたかう周辺各国に総額で2億ドル程度、支援を約束します」と表明しました。



「イスラム国」による後藤さん、湯川さん殺害警告の映像が確認されたのは、
その3日後となる1月20日です。


犯行声明では、首相の“2億ドル支援”を「イスラム国」攻撃のための戦費ととらえ、
同額の2億ドルを2人の人質の身代金として要求しています。



犯行声明が出された日、安倍首相は、パレスチナへの残虐行為を繰り返し、
イスラム教徒を敵に回しているイスラエルに滞在していました。




「イスラム国」は、このタイミングをとらえて
首相演説を殺害警告の口実に用いたことは明らかです。




首相は殺害警告後の記者会見で、2億ドルは「人道支援」だと説明しました。
しかし、カイロ演説の該当部分に「人道支援」の文言は見当たりません。



それどころか、「ISILの脅威を食い止めるため」だと述べています。(別項)



これは、「人道支援」に関する国際原則に反します。


外務省も

「国際的に、人道支援の基本原則は、

(1)人道原則
(2)公平原則
(3)中立原則
(4)独立原則の4つが主であり、

我が国もこれらの基本原則を尊重しつつ人道支援を実施しています」

(同省ウェブサイト)と説明しており、
「イスラム国」とたたかう国々への支援を
「人道支援」だというのなら、政府方針にも反します。



イスラム法学者の中田考・同志社大学元教授は、
「イスラム国と周辺国との戦闘で発生した避難民への支援を本気で行うのなら、
赤新月社(イスラム教国の赤十字社)を通じて行うべきだ」と指摘しています
(1月22日、外国特派員協会での記者会見)。



不用意な対応


これ以外にも、後藤さん、湯川さんが拘束されている最中に、
「イスラム国」が米国などと同様に敵視しているイスラエルとの
軍事協力強化(1月19日の共同報道発表)を打ち出す
など、
不用意といわざるを得ない対応が見られます。


これら全体をしっかり、
検証すべきです。




首相は2日の参院予算委員会で、一連の中東訪問について、
「テロリストの意思をいちいち忖度(そんたく)しない」と釈明しました。


これはあまりにも乱暴な発言といわざるをえません。



1月17日の安倍首相演説(抜粋)


イラク、シリアの難民・避難民支援、トルコ、レバノンへの支援をするのは、
ISILがもたらす脅威を少しでも食い止めるためです。


地道な人材開発、インフラ整備を含め、ISILとたたかう周辺各国に、
総額で2億ドル程度、支援をお約束します。


http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2015-02-03/2015020303_02_1.html
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政府の問題点、一言でいえば、
安倍首相の積極的平和主義という名の軍拡の誤り
(テロリストを過度に挑発する)を暴露・指摘した良い記事だと思う。



付け加えれば、安倍は偉そうに語っているが、中東・アフリカ訪問で彼が
実際に積極的に行っているのは、軍事ビジネスの営業と原発輸出である。

(加えてヨルダン渓谷開発事業などのハコモノの参画。
 一言でいえば、イスラエルの軍事・経済支援




これが果たして現地の日本人を
テロリストから守るために役に立つかどうか、御一考いただきたい。












ここからは、本当にどうでもいいことなのだが、

この記事が書かれるまでに一部の平和主義者は、
事件が解決される前の時点で共産党が批判を一時控えたことをもって、
「弱腰」「国民を見捨てるのか」と随分と強気な発言をしていた。



特に、
「共産党も大本営の軍門に下った」
「共産党は昔から”隠れ大本営”だったのではないだろうか?」

という発言には、「おいおい」と思わざるを得なかった。


同党が政府に対して、抵抗姿勢を維持しているのは、
上の紹介記事からも歴然だが、


その後も「早合点でした」という訂正記事は書かれていない。


こういう徒に敵意を煽るような真似は結果的に自身の記事の信ぴょう性も
損ねることになりはしないかと心配している。まぁ、本当におせっかいでどうでもいい話だが。

人質事件と共産党2

2015-02-03 00:04:46 | 反共左翼
前の記事で今回の事件をネタに、「国民を売った」「弱腰」と
あたかも軍拡を左派政党が容認したかのような言説に対して批判を行った。


実際、その後の党の見解を読むと、やはり彼らの意見は違うのではないかと思う。

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日本共産党の志位和夫委員長は1日、
過激組織「イスラム国」による日本人人質事件で、
フリージャーナリストの後藤健二さん(47)が殺害されたと
みられる動画がインターネット上に公開されたことについて、声明を発表しました。



一、湯川遥菜(はるな)さんに続き、ジャーナリストの後藤健二さんが、
過激武装組織「イスラム国」によって殺害されたとする映像が明らかになった。

いかなる口実をもってしても許されない残虐非道な蛮行であり、深い憤りを感じる。
無法なテロ行為を、怒りを込めて断固として糾弾する。
ご家族・関係者のみなさんに心からのお見舞いを申し上げる。


一、いま求められているのは、国際社会が結束して、
過激武装組織「イスラム国」に対処し、国連安保理決議2170
(2014年8月)が求めているように、外国人戦闘員の参加を阻止し、
資金源を断つなど、孤立させ、追いつめ、武装解除と解体に追い込んでいくことである。
日本政府の外交も、こうした方向に資するものとなるべきである。


一、こうした悲劇を繰り返さないためにも、
この間の日本政府の対応について、冷静な検証が必要である。


政府は、2人の日本人が拘束されてから今日にいたるまで、
政府がとってきた対応について、検証にとって必要不可欠な情報を、公表すべきである。



一、安倍首相は、今回の事件にかかわって、
米軍などによる「イスラム国」への空爆などへの自衛隊の支援が「憲法上は可能」とのべ、
「邦人救出」を名目にした自衛隊の海外派兵のいっそうの拡大の検討を表明している。


テロ集団による蛮行を機に、
「海外で戦争する国」づくりを
推進するという動きは、断じて認められない。


http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2015-02-02/2015020201_01_1.html
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このように、共産党は日本政府の対応について検証を行うこと、
加えて、邦人救出を口実にした軍拡に断固反対の姿勢をとっている。


これは昨日の日曜討論での山下芳生氏の言葉からも明らかである。


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海外での人道支援・日本人救出
事件口実の「海外で戦争する国」づくり推進は許されない



安倍晋三首相が「イスラム国」対策で日本政府の対応を
「人道支援」と強調していることについて
自民党の谷垣禎一幹事長は「それは当然のことだ」などと述べました。



山下氏は次のように発言しました。

山下 

人道支援、非軍事分野といいながら、
安倍首相は今回の事件を契機に
「海外で戦争する国」づくりを
いっそう推進、拡大しようとしています。
これはきわめて重大だと思っています。



例えば先週のNHKのインタビューで首相は、
「有志連合」による「イスラム国」に対する軍事行動への支援について
「憲法上は可能だというのが、われわれの考えだ」とはっきり答えました。


そうなりますと、
米軍の空爆を自衛隊が支援することも憲法上は可能だということになります。
憲法9条の下でそんなことは絶対に許されない。


私たちは、集団的自衛権の行使というのは、
アフガン戦争やイラク戦争のような戦争で
自衛隊がこれまでの「戦闘地域」まで行って、
米軍と肩を並べて軍事行動すると、
ここに一番の危険があると指摘してきましたけれども、
今回の事件を機にいよいよその危険性が浮き彫りになってきたということです。

憲法破壊の暴挙を止めるために、国民とスクラム組んで、
この点ではがっちりストップをかけていきたいと思っています。

http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2015-02-02/2015020204_02_0.html
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一部の平和主義者は、人質事件の最中に与党批判しなかったことをもって、
左派政党を、ある意味与党以上に手厳しく叱ったわけだが、
今後、自分たちの誤解を訂正するだろうか?しないと思う。