時事解説「ディストピア」

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ザ・コーブでは何が訴えられているのか?その3

2015-02-22 00:39:59 | ザ・コーブ
『ザ・コーブ』で最も見逃せない点は、日本政府が弱国を買収し、
 鯨類捕獲の支持票を稼いだり、警察が反対運動家を監視していることである。


まず、和歌山県太地町では、鯨類捕獲に関する
BBCやロンドン・タイムズをはじめとした海外メディアの取材ができないようになっている。



これと併せてテレビや新聞、雑誌、書籍における捕鯨礼賛の風潮を踏まえれば、
民主主義国家で、まさに民主的に、平和的に情報が制限されているのである。


これは捕鯨問題に限らず、時事問題を考える際に必要なことだろう。


次に、一部の漁師や警察による行為について。

日本語が通じないと思っているのか、ザ・コーブでは
「アリガトー」といって漁師らに挨拶するスタッフに対して
「帰れ帰れ」と笑顔で答えている。


他にも大声で「帰れや」とカメラの前で怒鳴りちらす若者や、
覆面パトカーの尾行など、客観的に見てあまり行儀が良いとは言えない。


鎌田遵氏は、これら映像を悪意をもって作られたかのように語っているが、
少なくともこういう行為が現実として起きたことは否めないのではないだろうか?


私も活動家が現地でミネラル・ウォーターを購入しようとしたところ、
拒否された事件があったことを知っていたが、なんというか田舎特有の
閉鎖的な空間があるのではと思わざるを得ない。



この閉鎖的な体質を最も象徴しているのが、追い込み漁の周囲が
立ち入り禁止にされ、撮影できないようになっていることだ。


追い込み漁は入り江で大量のイルカを殺害する漁である。
入り江一面がイルカの血で赤く染まる。


あまりイメージの良い光景ではない。


つまり、追い込み漁の現場が見られないように立ち入り禁止にしたことが、
逆に『ザ・コーブ』の資料的価値を高めてしまったのである。




作品の最後では水産庁の役人が漁に使うナイフは改良され、
一瞬で死ぬようにできている、だから残酷ではありませんと説明している。

スタッフは「これを見ても残酷ではないと言えるか」と赤く染まった入り江の映像を見せる。

入り江と同じほどに真っ赤な嘘をついていることが暴露されたわけだ。


このように『ザ・コーブ』は鯨類捕獲に関する日本政府の嘘デタラメや
地元の自治体・警察の行き過ぎた保守的な体質まで露わにしており、
そこもまた評価のポイントになった。

ザ・コーブでは何が訴えられているのか?その2

2015-02-22 00:10:51 | ザ・コーブ
イルカ保護運動の第2の背景として、IWCの不完全な保護体制がある。


国際捕鯨委員会と呼ばれるIWCは、イルカを保護対象に入れていない。
これは捕鯨国からの圧力があるからだ。

実は、イルカとクジラは同じ生物であり、
簡単に説明すると小さいほうをイルカ、大きいほうをクジラと呼んでいる。

そのため、市場ではクジラ肉と称してイルカの肉が売られている。

1986年以降の商業捕鯨禁止以降、
鯨肉の埋め合わせとしてイルカの捕獲量が激増した。

1957年から1970年末までのハンドウイルカの平均捕獲量は976頭だった。
それが今では2万3千頭である。


数字を見るだけでも、取り過ぎだということに気付くだろう。

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追記

捕獲数にはブレがある。
映画が撮影された2008年には2万3千頭だった。
2007年時は1万3107頭、2011年は3283頭、2013年は1万6496頭が公式捕獲数となっている。

2011年は地震のせいで漁ができない地域があったためだと思われる。

(参考ページ:http://savejapandolphins.org/take-action/frequently-asked-questions)

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実は、イルカ漁の制限は今から20年以上前に日本の科学者によって提唱されている。

対象となったのはイシイルカで、生物学者の試算した持続可能の捕獲数は
5000頭だったのに対して、1万以上、規制直前時では4万300頭が捕獲されていたのである。


これは日本近海を外遊するイシイルカの3分の1が殺害されたことを意味しており
そのため、科学者たちは即急の規制を訴えたのだ。

結果として最大の捕獲地だった岩手地方において規制が設けられた。

同地方ではイルカを食用として捕獲する文化があったわけだが、
他ならぬ日本人たちの乱獲によって文化の維持が危うくなったわけである。


私は「日本の文化を理解しない!」と言って鯨類の捕獲を正当化する意見を
目にするたびに「文化ならどれだけ捕ってもいいのか」と思う。


食うなとは言わない。捕り過ぎが問題なのだ。


『ザ・コーブ』でも乱獲への批判が中心となって話が進んでいる。

もちろん絶対禁止を掲げる人間も運動には参加しているだろうが、
映画自体は毎年2万3千頭が捕獲されることに対して抗議している。


商業捕鯨が禁止された当時と比べて鯨肉の需要は減った。
一石二鳥とばかりにショー用イルカの捕獲と並行して
追い込み漁がされているが、その必要はあるのだろうか?