時事解説「ディストピア」

ロシア、イラン、中国等の海外ニュースサイトの記事を紹介します。国内政治、メディア批判の記事もあります。

イラン最高指導者からの欧米のイスラム差別に対する抗議メッセージその2

2015-02-06 23:22:40 | リビア・ウクライナ・南米・中東
その1からの続き。


(2)

あなた方は、"他者"に対する根拠のない恐怖や嫌悪の拡大、侮辱は、
圧制的な人々の利益のためのものであることをよく知っている。


私はあなた方に、自分自身にこう尋ねてほしい。


なぜ、恐怖や嫌悪を広めるという古い政策が、
前例のない激しさで、イスラムとイスラム教徒を標的にしているのか?


なぜ、世界の権力の構造は、
イスラムの思想を脇に追いやり、覆い隠されたままとなるのを望んでいるのか? 


イスラムのどのような価値観や内容が、大国の発展を妨げ、
イスラムのイメージを壊すことで、誰の利益がまもられるのだろうか?



(3)

私の第一の要求とは、
イスラムのイメージを壊すための動きの陰にある動機を調べてみて欲しいということだ。


第二の要求は、先入観を植え付け、
人々を迷わせるための大量のプロパガンダや世論操作に対し、
この宗教を直接的な情報によって知るよう努めてほしい。


正しい理論から言えば、あなた方は、
恐怖を植え付けられ、引き離されたものの本質について理解する必要がある。


あなた方に、私や他の人のイスラムに対する理解を受け入れて欲しいとは言わない。


私があなた方に望むのは、今日の世界において、
効果的な真理や活力であるイスラムが、先入観を伴って
感情的にあなた方に提示されるのを許してはならないということだ。


そして、彼らが偽善によって、雇い入れたテロリストを
イスラムの代表者として紹介するのを許すべきではない。


(4)
イスラムに関する情報を、元来の資料から手に入れてほしい。
イスラムに関する情報を、コーランや偉大なる預言者の人生から入手してほしい。

あなた方には、直接、イスラム教徒のコーランを読み上げてほしい。


あなた方はこれまで、イスラムの預言者の教えや
その人道的な原則について調べたことがあるだろうか?

イスラムの預言者を、メディア以外の資料から理解したことがあるだろうか?


これまで、イスラムの価値観が、世界に最大の思想的、科学的な文明を作り出し、
幾世紀もの間、最大の学者や思想家を育むことができたのはなぜかと、
自身に問うたことはあるだろうか?



私はあなた方に求める。根拠のない悪いイメージ作りが、
あなた方と真実の間に感情的な溝を作り、
あなた方から中立的な判断を下す可能性を奪ってしまうのを許さないでほしい。


今日、メディアの社会は地理的な国境を知らない。

それでもなお、彼らがあなた方を、
偽りのイメージの線引きによって囲むことを許してはならない。


(5)

誰も一人では、この空洞を埋めることはできないが、
あなた方のそれぞれが、自分と自分の周囲の人に明らかにするために
思想と公正の架け橋となることはできる。

このあなた方若者とイスラムの間の問題は望んだものではない。

しかし、あなた方の好奇心に溢れた頭に、新たな疑問を作り出すことができる。
それらの疑問への答えを見つけるための努力は、
あなた方にとって、新たな真理を突き止めるための適切な機会を作るだろう。


そのため、イスラムについての
純粋で正しい理解に至るための機会を失わないようにしてほしい。

そうすれば、あなた方の真理へと向かう責任感により、
未来の人々が、イスラムと西側の間の交流の歴史を、
より明らかな良心と、より小さな苦しみによって見つめることができるようになるだろう。

セイエド・アリー・ハーメネイー
2015年1月21日

(その3へ続く)

イラン最高指導者からの欧米のイスラム差別に対する抗議メッセージその1

2015-02-06 22:54:22 | リビア・ウクライナ・南米・中東
イランのトップは誰かと聞かれて、あなたは答えられるだろうか?


アリー・ハーメネイー師である。
ホメイニー師は知っていても、彼は知らない人は多いと思う。


さて、このハーメネイー師が欧米の若者にむけて送ったメッセージが
実は、向こう側ではそれなりに話題になっている。


このメッセージは3日間で5000万以上の人間に閲覧され、
各ムスリム団体に好評価を受けたものだったのだが、なぜか日本では紹介されない

ベタ記事にすらなっていない。


このメッセージはシャルリーエブド襲撃事件やISISなどのテロリズムを背景に
欧米列強で燃焼しつつあるイスラモフォビア(イスラム差別)を意識して、
そのようなイスラムを危険視する言説を非難するものである。



テロ事件の際、「すべてのイスラム教がこーいう連中ではない」とか言いながら、
欧米のヘイトスピーチを非難する声明を伝えないのが、実に日本のメディアらしい。


というわけで、本サイトで本文をいくつかに分けて紹介したいと思う。

http://japanese.irib.ir/news/leader/item/51540-
%E6%AC%A7%E7%B1%B3%E3%81%AE%E8%8B%A5%E8%80%85%E3
%81%AB%E5%90%91%E3%81%91%E3%81%9F%E6%9C%80%E9%A
B%98%E6%8C%87%E5%B0%8E%E8%80%85%E3%81%AE%E3%83%
A1%E3%83%83%E3%82%BB%E3%83%BC%E3%82%B8-%E3%83%BC
-%E5%85%A8%E5%86%85%E5%AE%B9


本文は上のサイトにある。
なお、読みやすくするため、適宜、番号をふった。

--------------------------------------------------------------
慈悲深く、慈愛あまねき、アッラーの御名において


(序文)欧米諸国の若者たちへ


フランスでの最近の事件、そして西側の他の国々での同様の出来事を受け、
私は直接、これらの出来事に関して諸君に語りかけることにした。


私が語りかける相手は、あなた方若者たちである。
それは私が、あなた方の両親を気にかけていないためではない。

そうではなく、私はあなた方の国家や国民の未来があなた方の手の中にあり、
あなた方若者の心の中には、
真理を探りたいという感情が高まっているのを知っているためである。


私が語りかける相手は、政治家たちでもない。
なぜなら、彼らは意図的に、政治と真理の道を分断したと信じているからだ。


あなた方とイスラムについて話したいと思う。
特に、あなた方提示されているイスラムの姿について。



(1)

この20年、特にソ連が崩壊した後、
この偉大なる宗教を恐ろしい敵に見せようとするために
多大な努力が行われた。

恐怖や嫌悪を植えつけ、それを悪用する動きは、
残念ながら、西側の政治史において長い歴史を有している。



ここで、私は西側諸国がこれまで植えつけてきた
様々な恐怖症を取り上げるつもりはない。


現代史の重要な出来事を一通り見れば、
西側政府が、他の文化や国民に対して、
不誠実で偽善的な態度を取ってきたという事実が分かるだろう。

それらは新たな歴史の記述では削除されている。

アメリカとヨーロッパの歴史は、
奴隷制を恥じ、植民地主義時代を不名誉とし、
非キリスト教徒や有色人種への弾圧に苦しんでいる。

あなた方の歴史学者は、
カトリックとプロテスタントの名のもとに行われた流血、
あるいは第一次、第二次世界大戦で
国家や民族の名のもとに行われた殺し合いを深く恥じている。

このような態度は賞賛に値する。

これらのリストを挙げることで、歴史を振り返るつもりはない。
ただ私はあなた方に、有識者にこう尋ねてほしいと思う。

なぜ、西側の一般の人々の良心は、
何十年も経った後に目覚めたのだろうか?

なぜ、遠い過去の良心に対する見直しは行われるのに、
現在の問題については行われないのか?

なぜ、イスラムの文化や考え方への対応といった
重要な問題について、一般の人々が知識を習得するのを
妨げようとする努力が行われるのか?


(その2へ続く)

ジハードとは何か

2015-02-06 22:26:34 | リビア・ウクライナ・南米・中東
テレビや新聞、その他諸々のメディアの解説を読むたびに、
ジハードについての解説が足りない印象を受ける。


ジハードは、日本では「聖戦」と訳されるが、これは少し意味が違う。
(私はこの手の直訳主義の翻訳は非常に問題があると考えている)


実のところ、ムスリムにとってジハードは良い意味を持つ言葉だ。



ジハードは、その第一義として、自分との戦い、奮闘努力を意味する。

次に、「改革」を意味するジハードがあり、
例えば、識字教育のジハード、衛生のジハード、汚職追放のジハードという風に用いる。


西洋にも、クルセイド(十字軍)という言葉を、改革運動を意味するために使うが、
それと同じもので、特に宗教的な意味はない

仮に宗教的な意味を含めるさいには、
「イスラームの」や「聖なる」という形容詞がつく。


では、なぜこの言葉が何やら物騒な言葉として使われるようになったかというと、
イスラム「原理主義者」とイスラム差別主義者(イスラモフォビア)が
お互いに、この言葉をもって自身の主張を正当化させてきたからである。


(原理主義者というのも問題のある訳語で、
 実際にはイスラム直訳主義あるいは単純解釈主義とでも訳すべきものだ。)



どちらも、コーランに戦争を賛美する部分があることをもって、
テロリズムを美化あるいは批判している。



では、コーランにはどのように書かれているのか?


例えば、次のような一文がある。


「汝らに戦いを挑む者があれば、アッラーの道において堂々とこれを迎え撃つがよい。

だが、こちらから不義をしかけてはならぬぞ。

アッラーは不義なす者どもをお好きにならぬ。

そのような者と出くわしたらどこでも戦え。

そして彼らが汝らを追い出した場所から、こちらで向こうを追い出してしまえ。」


読みようによっては、アメリカやイギリス、フランスのような
侵略国と戦えとも解釈できるが、重要なのは赤文字の部分で、
この文言で言いたいことは、自衛の正義であり、
自分たちから攻撃をしかけることではない。


人質などは、もってのほかなのである。



ムスリムの戦争観を表すのにもっとおあつらえ向きの言葉もある。

「あなたに歯向かって攻撃してくる者とは、神の道において戦うがよい。
だが、公正さと権利というラインを踏み越えてはならない。
誠に、神は侵略者をお好みにならない」



他にも、初代シーア派の指導者イマーム・アリーは、自らの軍勢に対しこう述べた。


「神の助けにより、
 敵が敗北して戦場から敗走したならば、
 逃げる者や逃げ遅れた者を殺したりしてはならない。
 命乞いする女性たちが、
 たとえあなた方の指揮官たちにまで
 罵詈雑言を浴びせても、彼女達を苦しめてはならない」



2代目のオマルは、聖地ベイトルモガッダスを征服した際、
イマーム・アリーに相談した上で用意してあった次の書簡を読み上げた。


「この書簡は、ベイトルモガッダスの人々に対し、
 イスラム政権の支配者オマルが出したものである。

全てのキリスト教会や、全ての人々の生命と財産にかけて次のことを約束する。
キリスト教会を占領、破壊したり、そこから何かを持ち去ることは許されない。

キリスト教徒は、宗教の問題において完全に自由である」



要するに、住宅への放火や民間人の殺害は、
イスラム教の教えに反しており、世界各地のイスラム教の権威者は、
原理主義者の言い分は、まったく的外れだと考えているし表明もしている。



自爆テロにしても、イスラム教では自殺を禁じているので、これもまた教えに反する。
一部知ったかぶりのジャーナリストや学者は「場合によっては許される」と説明するが、
その言い分は原理主義者のそれであり、イスラム教のものではない。




最後に、なぜ原理主義者や過激テロが生まれたかというのを考えると、
これは何といっても、歴史的に欧米列強が中東やアジア、アフリカを
侵略し、その際に近代式の戦争を教えたからに他ならない。


住宅への放火、民間人の殺害は英米仏侵略トリオの得意技だ。

特にアメリカは現地のゲリラに拷問などの非人道的な手段を伝授し、
自分たちの代わりに転覆させたい政府と戦わせてきた歴史がある。

アルカイダやイスラム国はその典型とみなされている。


加えて、中東やアフリカというとイスラム一色というイメージがあるが、
実のところ、かの地では部族主義というものが未だに色濃く存在する。

暴力を受け入れる素地はある程度あったということだ。


まぁ、どちらにせよ、自爆テロなどはアメリカがムスリムの兵士を
養成しだした1983年以降から見られる現象であり、
列強の影響が全くないというのは、完全に誤りと言えるだろう。

口だけデカいMr.トリモロス

2015-02-06 00:04:06 | リビア・ウクライナ・南米・中東
安倍首相は1日に、
「テロリストたちを絶対に許さない。その罪を償わせる」と表明した。


この発言が国際社会で大きな波紋を呼んでいる。


例えば、ニューヨーク・タイムズは
「安倍首相は日本の平和主義から逸脱し、復讐を誓う」という見出しの記事を掲載し、
「首相の復讐の誓いは、軍関係者さえも驚かせた」と指摘した。

「安倍首相は、戦後の平和主義を捨てて、
 世界でより積極的な役割を日本に担わせようとしている」と述べている。



冷静に考えれば、「罪を償わせる」=「反撃してやる」である。

これに限らず、安倍首相は人質が捕らわれているにも関わらず、
「テロには屈しない」「速やかに解放せよ」と強気な発言をしていた。


もちろん、勝算があるなら結構だ。

だが、なかった。



第一、「この道しかない」とか「日本をトリモロス」とか言っているわりに、
就任以降、貿易赤字は過去最大、実質賃金は下降中、
外交もこれといって成果はあげず、むしろその逆。落第生なのだ。



石原慎太郎氏や橋下徹氏のように、
威勢がいいだけの人間は極右には、いくらでもいる。


こういう人たちは強硬姿勢を売りにして票を稼いでいるわけだが、
テロ対策を考えると、徒に相手を挑発するだけで、かえって危険を煽っている。



繰り返すが、強硬姿勢というのは、勝算があってこそ生きてくるものであり、
勝ち目がないのに強がると、逆に醜態をさらしてしまう。


彼を知り己を知れば、百戦危うからず。
軍事力よりもまず、日本には情報力が必要だろう。

今回の事件では、日本は終始情報不足に悩まされた。
結果的に、虚勢を張るばかりで、最終的にはヨルダン政府に頼りきりだった。


別にスパイを養成しろとか言っているのではなく、
もう少しマシなインテリジェンスを雇えと言いたいのである。


データが揃っているのに、それを整理し、正しく分析できていない。
そのような印象を受ける。