時事解説「ディストピア」

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アラブの春の真相を隠す中東研究者

2015-02-11 23:29:57 | リビア・ウクライナ・南米・中東
「The Jihadist Plot-The Untold Story of Al-Qaeda and the Libyan Rebellion」
(聖戦主義者の筋書き―アルカイダとリビア反乱の知られざる物語)という本がある。

著者のジョン・ローゼンタールはEU政治・安全保障問題を専門とした政治アナリストだ。


本書の内容をザックリ説明すると、リビアの「民主主義革命」は、
実のところ、アルカイダとの関わりのある聖戦主義者の手によるもので、
同国の内戦をNATOが支援し、かつ空爆が行われたことが指摘されている。


今でもリビアの大都市ベンハジにはアルカイダの旗がはためく。
(カダフィ抹殺戦争の拠点となった都市)


アラブの春というものが、
究極的には西洋にとっての春であることが明確にわかるエピソードだ。



この「アラブの冬(リビアの冬)」とでも言うべき事件を
どう語るかによって、その人間の見識が容易に知れよう。



ところが、実際に各人の見解を見ていくと、
ジャーナリストや新聞記者のそれは当然として、
なんと中東研究者も同事件を好意的に受け止めているのだ。



もちろん、エジプトやリビアなどで平和とは程遠い混戦状態になった今、
さすがに手放しの絶賛ができなくなったからか、少しずつ意見をスライドさせてはいる。

だが、リビアに関しては、依然、NATOの空爆を肯定的に評価しており、
更には子供向けの本で、あの戦争は正しかったと宣伝している




イラク研究者の酒井啓子氏
『中東から世界が見える――イラク戦争から「アラブの春」へ 』
 (岩波ジュニア新書 〈知の航海〉シリーズ)である。



世界は全く見えていないし、
知を航海してもいないじゃないか。



先のサウジアラビアのテロ支援を隠匿する件といい、
なぜに中東研究者はそろいもそろってこうも肝心の事実を知らせないのだろうか。


酒井氏の説明は、
あの事件が全く逆の視点(つまり空爆する欧米側の視点)で語られている。




ここで注目してほしいのは、
同書の出版元が日本を代表する左派系出版社、岩波書店であるということ。


左翼だのリベラルだの平和主義だの言ったところで、
この程度のレベルなのだということは、知らなければならないだろう。



現在、ISIS(イスラム国)の解説書が岩波書店から出版されている。
編者は……酒井啓子。



なお、酒井氏と同じく、岩波の論客であり、
恐らく日本で一番まともな意見を述べているだろう専門家に内藤正典氏がいる。


この方は保守派の専門家、池内恵氏と比べれば、はるかにマシだが、
イスラム国が台頭する以前はシリアへの空爆を主張していたりする。



彼の発言のおかしさは、次のサイトで詳解されている。
気が向いたら、読んでもらいたい。

内藤正典のシリア軍事介入論と「両論併記」化


中東といっても、非常に広い地域だ。しかも、複雑な政情を抱えている。
民族の数も100は優に超える。「中東」や「イスラム」といった言葉で
判を押せるほど、単純の構図ではないのだ。その辺を意識して、自主的に
彼らとは違った視点で書かれた情報を読み、対比させながら全体像を捉えようとする。

これが肝要なのだと思う。